水輪会の有志3人と蔵王ツーリングに行ってきた。Nさんが期間限定でJR東日本の特急,新幹線が一日乗り放題のJR東日本パスを利用して宮城から山形へ蔵王山を横断する山岳コースのツーリングを企画してくれた。このパスは予約すれば2回までは座席指定ができるというサイクリングには打って付けである。JRの意気に呼応して,我々も東北・東日本の大震災復興を応援しようという気も,少しばかりだが,含んでいる。
上野を6時26分のやまびこ301号で発って白石蔵王についたのは8時40分だった。この新幹線に乗るために,牛久からの一番電車では間に合わないので,カミさんにお願いして取手までクルマを出してもらった。途中までは雨模様だったが,トンネルを抜けて白石蔵王に近づくと青空が出迎えてくれた。4人の心がけの良さが分かろうというものだ。駅を降りて早速,自転車を組み立てて記念写真を撮ってもらう。自分はこれで登りも行けるだろうと20インチのHammerheadを持って来たのだが大丈夫だろうか。
まずは蔵王エコーラインの起点近くの遠刈田温泉を目指して国道4号線,東北自動車道を越えて国道457号線を走った。R457は新緑が眩しいくらいのコースだが,なにせ登りだ。元気者のFさんがリードするが,Nさんはちょっと遅れ気味。それでも,笑顔で登ってくるのは根っからのサイクリストだからか。
やがてコースは平坦になり,県道51号線を左に分ける蔵王エコーラインの道標に従って進んだ。この辺りは牧場がいくつかあり,酪農が盛んのようだ。そこでFさんの後輪がパンクした。ちょうど良い加減の休息タイムである。
パンク修理も済んで走ると遠刈田温泉に到着した。ここで,水を補給したりトイレに寄ったりと小休止した。共同浴場脇には足湯があり,疲れた脚を癒すにもってこいだ。ところがここでまたまたFさんの後輪がパンクだ。タイヤの裏の異物を探してみても見あたらない。しかしリムテープがずれていてリム穴が2つほどはみ出ている。ここにチューブが食い込んでのパンクのようだ。テープの位置を補正して新たなチューブを入れて,パンク修理を終えた。あらら,足湯に浸かるのを忘れてたねェ。
宮城蔵王ロイヤルホテル前で国道457号線から左の県道12号線に入る大鳥居をくぐった。ここが蔵王エコーラインの起点だ。ここまで来て「そうだここは数年前に息子2号ファミリーと来た路だ」と思い出した。2007年の夏に蔵王・松島・仙台を旅行した記憶が蘇ってきた。そうか,あの時のエコーラインを今日は自転車で登るのか,とちょっと感慨深いものがある。このコースは昨年からヒルクライムレースが開催されているが,今年は大震災のために中止になっている。乗鞍よりも距離は短いので行けるだろうと,4人は意気揚々と再スターを切った。
しかし,道は往年のスパイクタイヤの跡で細かい凸凹だらけで荒れている。それに加えて,レース気分ではなくツーリング気分でスタートしたモチベーションの低さも相まってか,けっこう辛い登りとなった。ここに来て小径車で来たことを後悔し始めたが後の祭りであることは言うまでもない。
なんとか滝見台に到着して,三階の滝を眺め頂上付近の雪渓をバックに記念撮影をして休息をとる。エコーラインのこのあたりは,大震災で滝見台への側道が崩落したために,一車線になっていた。
さらにペダルを回して蔵王不動尊を過ぎて蔵王寺について休息を取る。住職に聞いてみると,頂上まではまだ8㎞ほどあるという。これまで時速8kmくらいで登ってきているので,あと一時間ほどかかりそうだ。
蔵王不動尊で追い越された元気な青年が合流して,Nさんの大福餅でエネルギーを補給して記念撮影をする。4人の顔と青年の顔を比べてみれば…。ふと青年のマシンをみれば,なんとピストではないか。そのうえペダルも靴も普通のものだぞ。いやはや,元気な青年ですなぁ。
蔵王寺の先にある駒草平を目指して,アンディアーモ。ここからFさんが先頭を切って九十九折りの急坂を登っていく。そのうちにへばるだろうと高を括ってペダルを漕ぐものの,Fさんの脚は一向に衰えない。Sさんも今日の登りは辛そうで付いて来られなくなった。さすがのピスト青年も押しが入ったようでNさんと共に遅れる。ようやく駒草平に到着した。今日のFさんの脚はまだまだ残っていそうだ。
ピスト青年とNさんはここで休まずに先に行ってしまったので,Fさん,Sさんとコマクサを見に自転車を降りた。展望台からの不帰の滝は絶景だがコマクサはまだシーズン前でほんのわずかしか咲いていなかった。2007年にここを訪れたときは7月の下旬だったので沢山のコマクサを見ることが出来たが。
高度も1500mを越してきて気温も下がってきた。アームカバーとベストを着けて,もう少し先の頂上を目指す。駒草平の手前から向かい風が強くなり,登りでへたって落ちに落ちているスピードでは煽られてふらついてしまうほどだ。道路の両側にはあちこちに大きな雪渓が残っていて,水が滴る音を聞きながら必死の思いでペダルを漕ぎ続けると,ようやくお釜へ続く蔵王ハイラインの分岐点がある刈田峠に到着した。この先にお釜が待っているのだが,帰りの時間の関係でお釜見学は省略することにした。件のピスト青年はハイラインを元気に登っていった。この先はかみのやま温泉までのダウンヒルが待っているはずだ。4人は下りに備えてウィンドブレーカー,レッグカバーなどの傍観装備を整えた。ピスト青年は半袖だったが下りはさぞ寒いだろうな。
刈田峠から下ったすぐのところが宮城県と山形県の県境だった。ここからかみのやま温泉までほとんどペダリングせずにブレーキングを時々取り入れた全く快適なダウンヒルだった。平日と言うこともありクルマはほとんど通行していないので,ライン取りもほぼ自由自在だ。気分はツール・ド・フランスのツールマレー峠のダウンヒルのようだ。Fさんの後塵を拝して下っていくが,NさんとSさんはどうやらダウンヒルがあまりお好きでないようだ。
何回か小休止して後続を待って下っていった。かなり下まで降りたところで小休止し,Nさんが用意してくれた太巻き寿司を頂いた。大福餅とこの太巻きを身につけていたので登りが辛かったようですね。ありがとうございます。ではいただきま〜す。
再び下っていくと,学校帰りの小学生に出会うようになった。傾斜はだいぶ緩やかになり,かみのやま温泉が近くになったことが分かる。JRの線路を越えて街中を走り,かみのやま温泉駅に到着したのは4時半を回った頃だった。この時刻ならば予約しておいた新幹線の一本前でも間に合いそうだ。近くの共同浴場の場所を訪ねて,まずは自転車を分解してホームに置いた。そうして共同浴場に使ってツーリングの汗を流し落とした。新幹線ではお約束のビールで乾杯し,米沢牛の弁当に舌鼓を打った。21時06分に無事に上野に到着した。
今回の蔵王ツーリングの走行距離は69㎞,総合時間は7時間15分であった。