モーゼル川自転車道の旅(2014ドイツ自転車旅行−3)

 

はじめに

2014年6月25日から一ヶ月かけてマイン川〜ライン川〜モーゼル川〜ザール川自転車道をカミさんと旅した。このモーゼル川自転車道の旅はこのウェッブページ(BikingBlog)の別の固定ページに記載したマイン川自転車道の旅ライン川自転車道の旅に続く第3部だ。

モーゼル川自転車道 Mosel-Radwegはフランスのメス Metzからコブレンツまで310km続いている。我々はコースをモーゼル川とライン川の合流地点のコブレンツをスタートしてモーゼル川を遡り,モーゼル川とザール川の合流地点のトリーア Trierまでの175kmに取ることにした。このコースには,ライン川自転車道と同様に,(モーゼル)ワインの産地を通り抜ける愉しみがある。モーゼル川自転車道のbikelineの地図は左岸コース,右岸コースのどちらもメインルートとして記載している。我々は対岸に美しい街があればフェリーまたは橋で渡ってコースを変更して観光するという気の向くまま,足の向くままの自転車旅にして走ってみよう。ただ,地図とは逆コースを取るので地図を最後のページから逆にめくって行かなければならない。そしてコースは南下する方向に走るので地図を逆さまにして見なければならない。かなり面倒だが慌てずに行こう。

Moselradweg Mosel Fahrplan Mosel Radweg

ライン川自転車道の旅を記述するときにも参考した「ドイツものしり紀行」を今回も参考にした。これも旅行前に読んでいたら良かったかも知れない。

今年のドイツ自転車旅行でも幾つかの世界遺産を訪ねた。マイン川自転車道ではバイロイト辺境伯オペラハウス,バンベルクの町,ヴュルツブルク司教館・その庭園群と広場が世界遺産であった。ライン川自転車道にはライン渓谷中流上部が世界遺産に登録されていた。このモーゼル川自転車道ではトリーアのローマ遺跡群・聖ペテロ大聖堂および聖母マリア教会を訪れることができる。そして,ザール川自転車道ではフェルクリンゲン製鉄所に立ち寄ることができる。今回のドイツ自転車旅行ではこの6ヶ所の世界遺産を回った(ヴュルツブルク司教館は昨年のドイツ自転車旅行で回っているので今回はパス)。日本に戻ってきてから見つけた「ペーターのドイツ世界遺産全踏破」はこれらの世界遺産の紹介にとどまらず,建築様式やドイツの歴史についても面白く解説してあった。

Beniyama Book Peter Book2

第1日目(通算21日目 2014年7月15日)コブレンツ Koblenz〜コッヘム Cochem(54.42km)

7時15分に朝食を摂りサンドイッチとコーヒーをゲットする。8時20分にはホテルをスタートした。ドイチェス・エックには向かわずにコブレンツ中央駅の脇からドイツ鉄道をくぐり駅の裏側(西側)に出た。

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まずはモーゼル川自転車道の右岸を走ることにした。しかし,ここには自転車道は無くて路側帯を走らされた。

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モーゼル川は静かに流れライン川よりもかなり川幅が狭い。コブレンツを出たばかりだが辺りの景色はいかにものんびりとしていて,悪く言えば田舎の風情だ。コースの前方にライ Layの街が見えてきた。対岸(左岸)のヴィニンゲン Winningenの街をドイツ鉄道の赤い列車が走っている。この鉄道との並走を避けるために右岸コースを選んだのだが,通勤時間帯ということだろうか,クルマの往来が多い。カミさんは怖そうに走るがドイツのドライバーを信頼するしかないか。

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やがて行く手にアウトバーンが見えてきた。ここをくぐったディープリヒ Dieblichでカミさんは急に道路を横切った。すっかりお馴染みになった,スーパーマーケット Nettoを見つけたのでおやつを買うためだった。甘い菓子パンとワインの小瓶とカミさん好物の干しアンズを買う。

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9時40分にニーダーフェル Niederfellで対岸に渡れる橋を見つけた。クルマの交通量が多く騒々しいので左岸コースを走ることにした。自転車道の標識もモーゼルの頭文字のMのマークが付されるようになっている。

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ゴンドルフ Kobern-Gondorfの入り口で教会ともお城ともつかぬ建物に立ち寄った。Schloss Liebieg(Schloss Liebig,Gondorf Niederburgとも)だ。1255〜72年に建てられ,現在では個人の所有で家具,アンティークの展示場になっている。城の横にはガラス張りのモダンな事務所らしき建物があった。

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レーメン Lehmenの村外れでお10時の一休み。さっきのスーパーで買ってきた菓子パンを食べる。ワインの村らしくブトウ搾り機が飾ってある。

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ブドウ畑の脇を走る。ブドウの手入れをする小父さん。あぁ,モーゼルワインが呼んでいる。

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鉄道とブドウ畑に挟まれた自転車道は線路をくぐってモーゼル川岸の広い路側帯を走るようになる。向かい風だが天気が良いので気にしないことにしよう。のんびり,のんびり。

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10時40分,対岸(右岸)のAlkenの高台にツーラント城 Burg Thurantを望む。1197年に建てられたこの城はモーゼル川域では最古の一つという。

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11時にハツェンポート Hatzenportを通過する。モーゼル川交通のランドマークのフェリー塔 Fährturum(1863年)が街のシンボルだ。5km先の頭上には白い輪が目印の塔を持つビショフシュタイン城 Burg Bischofsteinが聳えている。1270年に建てられたこの城は現在は学校の研修・保養施設になっている。

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11時20分にモーゼルケルン Moselkernに到着した。ここから5kmのところにエルツ城 Burg Eltzという12世紀半ばの,それはとても美しい城がある。ライン川自転車の旅で立ち寄れなかったマルクスブルク城と同様に一度も陥落してないので中世の古城の姿を見ることが出来るという。しかしバイクで4kmを登り,更に1.5kmを徒歩で登らなければたどり着けない。あっけなくカミさんに却下された。残念ながら絵はがきで我慢するしかなさそうだ。

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11時50分,自分もカミさんもトイレ休憩で意見が一致したのでカーデン Treis-Kardenに立ち寄った。この街は左岸のカーデンと右岸のより大きいトライス Treisから成っている。カーデンのカフェーでビールを飲んだ。噴水のある小さな広場に静かに時が流れていくようだった。カミさんが今日の支出をメモしたりスケッチをしている間に聖カストール司教座教会 Stiftskirche St. Castorを覗いて見た。

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カミさんは教会の白壁に犬を繋ぐリングを見つけている。さすがに教会内には連れて行けないようだ。教会の内部はシンプルで,一隅に火鉢のような何か分からない聖具を置いた部屋があった。

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自分一人で教会の回りを探索してみた。修道院博物館は閉まっていて入れない。一通り広場の回りを探索し終えてカーデンの街を後にした。

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2kmほど行ったポッマーン Pommernの河畔公園でランチを摂った。

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クロッテン Klottenのブドウ畑の高台には960年(地元の言い伝えでは960だが記録に残るのは1294年から)に建設されたコライデルシュタイン城城趾 Burgruine Coraidelsteinが建つ。その下には聖マキシミン教区教会 Pfarrkirche St.Maximinがある。これらを見ながら走り進む。

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やがて人や自転車が多くなり自転車道脇には観光バスが何台も駐車している所に来た。コッヘム駅 Cochem Bahnhof前を通過すると目の前にモーゼル橋 Moselbrückeが現れその高みにはコッヘム[帝国]城 Reichsburg Cochemが見えた。1時50分,コッヘムに到着だ。

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橋の下のツーリンストインフォメーションで地図をゲットする。案内板のバス情報を見ると,ちょうどコッヘム[帝国]城に行くバスが出る時間だ。バスならば城を見学しても良い,とカミさんが言うのでバスに乗り込む。運転手に一人往復€4を払うとチケットを交付してくれる。ドイツでバスに乗るのは初めての体験だ。バスは,えぇ〜こんなとこ走るの,というような狭い路地やマルクト広場を抜けて城に登って行く。7分ほどで城に到着。あ〜,ラクチンだったねぇ,とカミさん。

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坂を登って城門をくぐって城壁越しにコッヘムの街並みを見下ろす。カエルの王様のような石像は何だろう。眼を北西の彼方に転ずれば13世紀後半に建てられてたヴィンネブルク城址 Burgruine Winneburgが微かに見える。

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コッヘム[帝国]城 Reichsburg Cochemに入ってみる。何人かが集まってのツァー見学だ。説明はドイツ語だが日本語の説明プリントが貰えた。

Reichsburg Cochem P1020598 P1020599

贅沢な木彫で飾った食堂,ゴシック様の天井のゴシック部屋,ロマネスク様の天井のロマネスク部屋,人魚のシャンデリアのある城門下の廊下(この人魚に触るとハッピーになるというのでカミさんがチャレンジ),猟でしとめた獣を飾った狩猟の間,日本の骨董品の花瓶がある騎士の間,甲冑のある武具の間などを見学した。

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外に出てこれまでの内部見学コースを外から眺める。カミさんがスケッチにメモしたほどだから満足したのだろう。

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バイクを停めたインフォメーションにもどり,地図を頼りにホテルHoll Garniに行く。カイザー・ヴィルヘルム トンネルKaiser-Wilhelm-Tunnelをくぐった先にあった。旧トンネルは1879年に開通したが2011年に開通した4,242mの新トンネルに取って代わられる。新トンネルは2015の開業予定というが,試運転中だろうか,すでにドイツ鉄道の赤い列車が通過するのを見た。ホテルの玄関の屋根にはモーターバイクが飾ってある。ライダー御用足しのホテルだろうか。それにしては宿泊代(一人一泊朝食付きで€68)のほかにバイク2台の保管料を€5取るとはねぇ。

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日課のシャワーと洗濯を済ませて街に出る。レストランやカフェーが立ち並んで賑わう通りから細い石畳の道へ入る。と,聖マルチン教会 Pfarrkirche St. Martin,ピンクの市庁舎や木組みの家が建ち並ぶマルクト広場に出た。広場の中心にあるのはマルチン噴水 Marintsbrunnnenだ。

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聖マルチン教会の塔を見上げたり,1332年に建てられたというエンダート門 Endertorなどを見て回る。

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夕食は混み合う旧市街を避けて,出がけに目を付けておいたホテル近くのワイン酒場 Weingut Huxlerに入る。中辛のBalanceというリースリンク種の遅摘み(Riesling Spätlese)ワインを飲みカスラー Kassler(塩漬け薫製の豚肉)とソーセージを食べる。ワインは言うに及ばず,カスラーの豚肉も付け合わせのマッシュポテトも美味かった。

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第2日目(通算22日目 2014年7月16日)コッヘム Cochem〜ツェル Zell(42.29km)

6時半に目が覚めてモーゼル橋まで散歩して水面に映るコッヘム[帝国]城に見蕩れる。朝食を摂った時にテーブルに「食い物は天国まで持っていくな」というジョークが書いてあるのを見つけた。自分は”生きているうちにもっと食べるろ”という意味に解釈したがカミさんは”テイクアウトはダメ”と解釈した。で,サンドイッチとコーヒーを持ち出すのは止めにした。

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のんびりと10時にホテルをスタートした。とりあえずは昨日の続きで左岸コースを走ることにした。モーゼルの川面に映るコッヘム[帝国]城も見納めだ。

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6kmほど走るとモーゼル川はカーブを描く。カーブの内側はエルンスト Ernstの村で,そこには聖サルヴァトール教区教会 Pfarrkirche St. Salvatorが1845年のネオローマ様式の姿で建っている。並木の木陰と草原とモーゼル川の景色が目に染みるようだ。

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モーゼル川にも大きな,浮かぶホテルのような客船が走る。その船が通りすぎると向こう岸(右岸)に美しい街並みと高台に城が見えてきた。バイルシュタイン Beilsteinとメッテルニヒ城 Burg Metternichだ。

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こちら側のエレンツ・ポルタースドルフ Ellenz-Poltersdorfからフェリーが出ているので対岸のバイルシュタイン Beilsteinに渡ってみることにした。行き当たりばったりの旅の醍醐味だ。

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時刻は11時半だがまだお腹は空いていないのでバイルシュタインの街を散策する。小さな街(村?)だが観光客で賑わっている。駐輪場も盛況満員の状態だ。ここで絵はがきを何枚か買った。お金を払うときに聞いてみると切手もあるというのでついでに買った。絵はがき売り場で絵はがきを買えば切手も買えるということもこの旅行でおぼえたチップスだ。

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案内板に城まで10分とあるのでカミさんを鼓舞して行ってみることにする。登って行く途中に見る,青空に突き抜ける城が何とも言えない風情だ。メッテルニヒ城 Burg Metternichは1268年に築城され,その後1637年にメッテルニヒ家のものになった。1689年にフランス軍に破壊されて今日までそのまま,ということだ。廃城だがレストラン・カフェーがある。

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城からの眺めにしばしの時を忘れる。辺りは一面のブドウ畑だ。マイン川でもライン川でも滅多にお目にかかれなかった一面のブドウ畑だ。

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城から降りて街の路地を散策するとワインの試飲の看板が。でもここで飲んじゃうと先が続きそうもない,とバイルシュタインを後にする。そのまま右岸の自転車道を走ることにした。

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メゼニヒ Mesenichの村を通りかかったときに自転車道の脇にエデンの園という怪しげなマネキンが立つワインハウスを見つけた。13時20分にもなっていたのでランチを摂ることにする。メニューのPestoが分からずに聞いてみるが若いお父さんにはドイツ語しか通じない。パスタのことかと聞くと,まったく違うと言うがとにかく2種類を注文した。出てきたのはネギとオリーブオイルのペーストの塗ったカナッペだった。カナッペ2種をつまみにモーゼルワインを飲んだ。ワインもカナッペも実に美味かった。お嬢ちゃんがいたので即席で折り鶴を作ってプレゼントした。お父さんは「いまここでつくったのか」と驚いていた。ここでも小さな国際交流。

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ゼンハイム Senheimで左岸に渡る。川岸のキャンプ場はトレーラーで埋まっている。モーゼル川は蛇行を繰り返し流れている。3時40分にアルフ Alfのフェリー乗り場を通過する。対岸(右岸)のブライ Bullayの街並みも魅力的だ。今日は昨日と違って風もなく走りやすいコンディションであっちこっちの景色を眺める余裕がある。

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アルフの先の鉄橋を過ぎるとダラダラ登りが始まった。ここをワンピース姿のお姉さんがスイスイと走っていく。眼下にモーゼル川と街並みが眺められる高さまで登ってきた。

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16時過ぎに橋を渡って右岸のツェル Zellの入り口に到着した。ワイングラスを掲げたネコの像が歓迎してくれた。しかし,この手前にツェルの街中に入る小さな橋を渡るはずだったが見過ごしてしまったのだ。さっきのワンピースのお姉さんに付いていけば良かったかも。右岸を戻り返してツェルの市庁舎内のインフォメーションで地図を貰い,宿のAm Römerbadを教えてもらう。ツェルは黒猫(Schwarze Katz)印のワインで有名だ。1863年に3人の商人がアーヘンからワインを買い付けに来た。いろいろ試して最後に3つの樽のうちのどれかに決めようとしたときに黒猫が突然現れて一つのたるの上で3人の商人を威嚇し始めた。彼らはこれをなにかの前兆だと考えてこの樽を買い付けることに決めた。という逸話がパンフレットに書いてあった。

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宿に着くとちょうど係りの人に路上で出会った。握手で我々を歓迎してくれた。部屋は4階(ドイツ流では3階)の最上階で屋根裏部屋で狭い。しかし広いバルコニー付きだ。そして階段が上がってくる廊下の向こうにバス・トイレがある。共同トイレで嫌だなぁ,と思っていたら係りの人が「このフロアーは全部あなた方のものです,部屋が暑ければこのエアコンを使ってください」というではないか。そして水までも提供してくれた。これで朝食付きで€60は安すぎだね,とカミさんと大喜びした。

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シャワーを使い洗濯物をバルコニーに干して街に明日の水を買いに出かけた。聖ペテロ・パウロカトリック教会 Katholische Kirche St. Peter und Paulと現在はホテルになっているツェル城 Schloss Zellを眺めながらスーパーマーケットを探す。地図をみると向こう岸の高台の住宅地にあるようだ。今日はともかく,明日でもそこまで行くのは大変そうなので街中のキオスクで買い求めた。

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夕食は泊まっている宿の管理をしているホテルRatskeller で摂ることにした。対応してくれたウェイターはさっきの宿の係りの人だった。ツーショットを撮ってくれるというサービスだ。壺に入れて来てくれたワインは言わずもがなの美味さだ。料理のペンネもまずまずだ。

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食事の後は,慣れ親しんだ,ナッツ味のアイスクリームだ。街の路地を散歩して宿に戻った。ワインの街らしくあちこちの小路はブドウで飾られている。

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バルコニーで友人達に絵はがきを書きしたためた。バルコニーから見えるブドウ畑に立つ塔は陽が落ちるとライトアップされてた。実は自分はこの時刻は爆睡状態であったそうだ。ライトアップの写真はカミさんが撮ったものだ。

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第3日目(通算23日目 2014年7月17日)ツェル Zell〜ベルンカステル・クース Bernkastel-Kues(22.80km)

ヘリコプターの爆音で目が覚めた。バルコニーに出てみると裏のブドウ畑に農薬を散布している。頭上で旋回して散布しまくっている。こんなの見ちゃうとワインが飲みにくくなりそうだ。

昨日言われたようにラーツケラーホテルで7時半に朝食を摂った。我々のほかに何人かの自転車旅姿のドイツ人も居た。ランチ用のサンドイッチとコーヒーをゲットして9時に宿を出発した。別れ際にチェックイン,夕食時にお世話になった係りの小父さんから盛大に挨拶・握手をもらった。市庁舎前のポストに昨晩書いた絵はがきを投函して,今日はそのまま右岸コースを走ることにした。空気は澄んでとても気持ちが良い。思わずペダルを止めてモーゼル川の空気を胸いっぱいに吸い込む。

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ピュンデリヒ Pünderichの街でブドウ畑の上の方に教会とも修道院とも見える建物を発見。1515年には女子修道院としてあったマリエンブルク Marienburgは現在は青少年研修所とカフェ・レストランだ。そこまで上って行くとモーゼル川の大ループが見えるそうだ。街中には古い木組みの家が残っている。木組みの赤い色は昔は牛の血で塗ったそうだ。この村もモーゼルワインの産地だ。

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ブドウ畑を縫ってモーゼル川自転車道は続く。対岸(左岸)のライル Reilの街も静かに佇んでいる。今日も風がなく,絶好のサイクリング日和だ。

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10時半にトラーベン・トラールバッハ Traben-Trarbachに到着した。この街は左岸のトラーベンと右岸のトラールバッハから成っているから,トラールバッハ側に到着したことになる。トラールバッハの高台にはゲーヴェンブルク城址 Ruine Gevenburgを垣間見る。この城は1350-57年に建てられ1735年にフランス軍によって崩壊された,とある。モーゼル橋 Moselbrückeの下にバイクを駐輪して橋に上り,重装な橋の門 Brückentorを見ながら左岸に渡ってトラーベンの街並みを散策する。

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橋から続く郵便局通り Poststraßeには帝国郵便局 Postamtと鮮やかなロレッタハウス Lorettahausが建ち並ぶ。右折してインフォメーションを訪ねる。 ここは1904年の古い駅 Alter Bahnhofがある。

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インフォメーションの後ろでは朝市が立っていた。カミさんが目ざとく丸ドーナツを売るバンを見つけた。おばさんが食べてみろと差し出すのをいただく。これが美味かったので買うことにした。フワフワとしてとても美味しかった。おばさん,ありがとう。

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風格を備えた旧市庁舎 Altes Rathausや,白壁に黒い屋根の重厚な高級ホテル Belevueが立ち並ぶ小路を歩く。

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11時半に左岸のトラールバッハに戻ってみると今日の宿泊予定地のベルンカステル・クースまでの船が10時45分に出ることが分かった。実は今朝起きるときに右腰に違和感を覚えていた。昨日のどこかで,20数キロの重い自転車を持ち上げる時に,軽いギックリ腰に見舞われていたようだ。バンテリンを塗ったりバッファリンを飲んだりして騙しながらここまで走ってきたが,文字通り渡りの舟があったので乗ることにした。自転車に乗れないほどの痛みではないけれどこの機会にモーゼル川のリバークルーズも悪くはないだろう。乗船券と共に自転車持ち込み券を買って乗り込んだ。船は,一旦,対岸のトラーベンに立ち寄ってからモーゼル川を遡上した。

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気持ちの良い川風を受けながら船はモーゼル川を遡り,直ぐに建設中の大きな橋をかすめる。左岸のクレフ Krövの街に1725年に建てられた聖レミギウス教区教会 Pfarrkirche St. Remigiusが迫ってくる。隣のキンハイム Kinheim村ではKinheimer Rosenbergと言うワインが産出される。こんなところにもという急峻で狭い所にもブドウが植えられている。岩に蓄えられる太陽の暖かさが良いブドウを育てるのだろう。イルツィヒ Ürzigの街並の高台にはモダンなレストランやペンションが建っている。

爽やかな空気の中でクルージングを楽しみながらランチを摂った。一昨日スーパーで買ったワインの小瓶を開けるが,これがアルコール臭くて舌にピリピリと滲みる味がした。もはやスーパーでの安ワインは舌が肥えてきて飲めなくなってしまっている。恐ろしいことだ。

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またも建設中のアウトバーンに出会う。コブレンツとコッヘムの間でもアウトバーンをくぐったし,景観を壊す橋の架かってないライン渓谷のように,モーゼル渓谷は世界遺産には登録されそうもないな。などと思いながらクルーズを楽しんでいると右岸のツェルティンゲン Zeltingen-Rachtigの街外れに聖シュテファン教区教会 Pfarrkirche St. Stephanus(1471年)が見えてきた。と,直ぐに閘門に出会って待ちぼうけを食わされる。ここを通過したら左岸の街ヴェーレン Wehlenだ。

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やがて左岸の高台にランツフート城址 Burgruine Landshut(12〜13世紀)が見えてきた。ベルンカステル・クース Bernkastel-kuesに時間通り1時40分に到着だ。カミさんは船の中でもドイツ人の肥満を観察していたようだ。よほど気にかかるのか?

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ベルンカステル・クースは右岸のベルンカステルと左岸のクースが橋で結ばれた街だ。船はベルンカステルに到着したのでまずはインフォメーションでで地図を貰う。聖ミヒャエル教区教会 Pfarrkirche St. Michaelの真裏のカールスバダー広場 Karlsbader Platzのアイスカフェに入って冷たいコーヒーフロートを注文する。ドイツでの冷たいコーヒーは初めての体験だ。

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一息つけたのでマルクト広場 Marktplatzに行きゆっくりと広場を散歩してみる。と言っても小さな広場だ。朱色が青空に映えるルネサンス風の市庁舎は1608年に建てられた。その前にある聖ミヒャエルの噴水 St. Michaelbrunnenは1606年から水を供給している。

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広場を木組みの家がぐるっと取り巻いている。ちょっと小路を入ったところにはロケットのような細長い建物がある。これはSpitzhäuschen(とんがり小屋)と言うワイン酒場だ。1416年に建てられたという。広場では何人かの車椅子の身体障害者にであった。そういえばインフォメーションから出てきた時にカールスバダー広場に大勢の身体障害者が集まっていた。彼らの観光旅行だったのかも知れない。車椅子に乗った夫婦が健常者の女児をひざに乗せている姿にはちょっと感動を覚えた。

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広場から横丁へ足を伸ばしてみる。そこはワイン酒場の横丁だった。ここで飲まなくとも今晩の宿はワイン農家がやっている貸しアパートだから,そこでじっくりとモーゼルワインを味わうことにしよう。

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バイクはベルンカステルのマルクト広場の近くに置いたまま橋を渡ってクースの街を散策に行くことにする。橋から振り返るベルンカステルは聖ミヒャエル教区教会の黒い塔(13世紀後半)が目立つ。船着き場には広い駐車場があり多くの観光客で埋まっている。

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まずは1465年に建てられた聖ニコラウス病院(クース養老院) St. Nikolaus Hospital (Cusanus Stift) に行ってみた。1401年にここクースに生まれたニコラウスは自然科学,医学,哲学,法律を学んだ聖職者で,初めは貧困な33人の男達のための施設を造ったそうだ。現在の養老院は女性も収容されており今日も建物の外にはお年寄りが何人か集まって談笑する姿を見た。養老院に付属するチャペルを覗いてみた。この中にある図書館はニコラウスの手書き文書や彼の蔵書が収蔵されている世界屈指の個人図書館だそうだ。

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聖ニコラウス病院の隣はワイン博物館 Mosel Weinmuseumが建っている。こちらはマルチメディアを多用した展示場のようだが入場はパスした。

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4時になったのでベルンカステルに戻りバイクで橋を渡りクースに予約した宿泊先を探した。宿のPeter-Jos. Hauthブドウ園貸しアパートは自炊設備がある貸し別荘だった。日課のシャワーと洗濯を済ませて近くのスーパーマーケットに夕食の買い出しに出かけた。洗濯物は庭に伸び伸びと干すことが出来た。

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スーパーマーケットのEDEKAは,REWEやNETTOと同様に,これまででお馴染みになっているスーパーだ。そこに行く途中の河畔でお祭りをやっていた。屋台ではビールやワインのほかに焼き肉や焼きソーセージも売っていた。カミさんがこれを帰りに買って行こうと提案する。どんなもので,どんな味か楽しみだ。

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対岸のベルンカステルの街並みを眺めながらブラブラと歩いてスーパーに向かった。丘の上にはランツフート城址が青空を背景に屹立しているのが望める。

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スーパーマーケットでソーセージ,3種のサラダ,野菜,パン,ブレッツェルなどと水を買った。帰りに河畔のお祭りの屋台で焼き豚とマッシュルームの炒めを買った。カミさんがこれを宿で調理して豪華な夕食に仕立ててくれた。冷蔵庫にあったワインから一本を取り出して食卓に添えた。ワイン農家の作ったワインはとても口当たりが良くて軽々と一本空けてしまった。文句なく至福の夕食の時間を過ごした。もう一本ワインをと思ったが無理だろうと止めたが,惜しかったなぁ。

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一本空けたにもかかわらず酔いはひどくはないので酔いざましの散歩に出かけた。10時を過ぎると陽も落ちていてランツフート城址がライトアップされていた。今日はリバークルージングを楽しんだので自転車の走行距離は20キロ余りだった。まぁ,こんな旅もいいさ。

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第4日目(通算24日目 2014年7月18日ベルンカステル・クース Bernkastel-Kues〜トリーア Trier(76.35km)

8時半に朝食を摂る。我々のほかにもう一組の夫婦が居た。ランチ用にサンドイッチとコーヒーをゲットした。チェックアウトの時に昨晩のワインの代金を払ったら,何と何と驚きの€5.5だ。「日本円にしたら770円だよ,日本だったら3千円は取られるよ」とカミさんとビックリする。

9時40分には宿をスタートできたがこの時刻ですでに陽射しは強い。今日は左岸コースを走ることにした。ブドウ畑の脇の路側帯を走るのだが日陰がなくてとても暑い。この調子じゃお昼休みにはビールだなぁ。ブドウ畑には,自然のものかどうか分からないが,瓦礫が敷き詰められている。今日の目的地のトリーアは白ワインの産地として有名だ。古代ローマ人はこの辺り自分たちの持ち込んだブドウで赤ワインを作ろうと思った。しかし土地が痩せていて収穫できなかったので別のブドウを栽培することになったそうだ。そのブドウがモーゼルワインを造り出したというわけだ。

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15キロほど走るとモーゼル川自転車道はミンハイム Minheimの村を通過して橋を渡り右岸を走るようになる。が,すぐにピースポート Piesportで橋を渡り,ふたたび,左岸を走ることになるが我々はそのまま右岸のコースを走った。橋の袂の対岸(左岸)の教会は聖ミヒャエル教区教会 Pfarrkirche St. Michaelだ。教会の向こうの丘には著名なピースポートの金の滴 Piesporter Goldtröpfenブドウ園が広がる。モーゼル川自転車はどこまで行ってもワイン,ワイン,ワインだ。

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11時25分に対岸(左岸)にトリッテンハイム Trittenheimの街並みを眺めながら進む。地図をみるとここでもモーゼル川は大きく湾曲し,トリッテンハイムの街はその中に取り込まれるように位置している。しかし,川の直ぐ脇を走る我々にはそれが実感できない。

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11時50分にケーヴェリヒ Köwerichの集落を通過したらカフェーに何台ものバイクが停まっていたので釣られて一休みすることにする。皆さん,召し上がっているのはビールだ。で,我々も躊躇なくビールを頼んだ。暑いときにはこれに限る。もちろん200mlの小さいビールだ。

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ちょっと走ってデッツェム Detzemの村の河畔のベンチで一休みした。時刻は12時半なのでランチを摂った。スーパーマーケットで買ったワインの小瓶がまだ残っていたので飲んでみたが,もはやこのクラスのワインは飲めません。カミさんも飲まない,というので自分が少し飲んだだけで棄てていった。

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デッツェムを経ってモーゼル川の湾曲を過ぎると対岸(左岸)にメーリンク Mehringの街が見えてきた。対岸に渡ろうかと思ったがそのまま右岸コースを進む。

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2時前に対岸(左岸)のシュヴァイヒ Schweichの街に渡るが観光スポットはシナゴーグと地図にあるくらいだ。で,トリーアにはまだ1時間半ほどかかりそうなので直ぐに出発した。コースはそのまま左岸を走った。

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40分ほど走ったが,さすがの暑さに耐えかねて橋の下の木陰で一休みした。ここまでの今日のコースにはほとんど日陰がなかった。

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気を取り直して走り出すと直ぐにプファルツェル Pfalzelの工場地帯を走ることになった。トリーアの街が近いことを予想させるがこれまで緑に囲まれて走ってきたので,無機的な工場の壁などが余計に暑さを感じさせる。工場が途切れれると防塁壁 Wallmauerに出会った。これは14世紀後半から1953年に建造されたもので,例によって1673〜74年にフランス軍によって破壊されたものだ。

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5kmほど走ったところで行く手にカイザー・ヴィルヘルム橋 Kaiser-Wilhelm Brückeが見えてきた。自転車道からクルマが行き交う一般道に上がり,カイザー・ヴィルヘルム橋を渡った。北大通り Nordalleeとフランツ・ルートヴィヒ通り Franz-Rudwig Straßeに挟まれた緑地帯の砂利道を進むと市立博物館 Stadtmuseum Simeonstiftの広場に着いた。トリーア Trierに到着したのは3時半になっていた。まずはトイレに寄る。あまりの暑さに当たったためか,危うくカミさんに付いて女子トイレに入りそうになり係りに注意される始末だ。ついで市立博物館の中庭を抜ける。 不気味な黒いポルタ・ニグラ Porta Nigraが目の前に現れた。出会ったポルタ・ニグラを拝んで,地図をもらいにインフォーメーションに立ち寄る。エアコンが入っていてホッとする。係りにホテルの場所を訪ねるが無料の市街図には出ていない。€1.8で有料の広域地図を買ってホテルを教えてもらった。ローマ橋を渡った郊外にあることが分かった。やれやれとばかりに市立博物館の中庭を抜けて始めの広場に戻る。オープンカフェーはこの暑さで誰もいないので屋内カフェーに入り咽を潤すことにした。自分はカプチーノを,カミさんはガスなしの水を頼んだ。氷が浮かんだ水(€3.3)はコーヒー(€2.3)よりも高かった。日本じゃタダなのに。

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地図を頼りにジメオン通り Simeonstraße,中央市場 Hauptmarktなどの繁華街を抜けてローマ橋 Römerbrückeに向かう。人の波の中でバイクを押しながら歩かざるをえない。トリーアでは2連泊の予定なので市街観光は明日に予定している。とにかくホテルでシャワーを浴びたい。ローマ橋は2世紀からの歴史を持ち,ドイツ最古の橋だ。橋を渡りドイツ鉄道を越してようやくのことにカイザーホテル Keiser Hotel Garni(ホテルはKaiserの綴りではなくKeiserだ)到着した。チェックインを済ませるとフロント係りは飲み物を無料提供するので好きなものを選べ,という。ビールがあったので「これも無料か」と聞くと「もちろん」と言うので文句なしに選んだ。水(炭酸水)とビールが同じ位の値段であることを実感する。

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ビールを飲んだら二人ともドッと疲れが出た。気を取り直して,シャワーを浴びて洗濯をして,来るときに見つけておいたスーパーマーケットに水を買いに出かけた。夕食はホテルの隣のイタリアンレストランで摂った。まずはこのクソ暑い中を76キロも走った今日一日を乗り切ったことに乾杯した。カミさんはサラダを,自分はスパゲティナポリタンを注文した。相変わらず美味くないスパゲティだ。夕食後はアイスカフェでナッツのアイスクリームを買って,舐めながら宿に戻った。

本当に今日は辛い一日だった。ひたすら暑い中を走って熱中症の数歩手前の状態であった。幸いなことにギックリ腰はバンテリンとバッファリンのお陰でだいぶ緩和した。さぁ,明日のトリーア観光でモーゼル川自転車の旅は終わりを迎える。

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第5日目(通算25日目 2014年7月19日トリーア Trier(9.12km)

8時過ぎに朝食を摂る。今日は観光日なのでランチはレストランで摂ることにする。9時半にホテルをバイクでスタートした。荷物はホテルに置いてきたので,バイクは軽快に走る。ローマ橋を渡るとカール・マルクス通り Karl-Marx-Straßeに入る。その先(市街地方面)にはカール・マルクスの生家 Karm-Marx-Hausがあるが見学はパスだ。40数年前,大学紛争で騒然とした時代のどこかでマルクス,レーニンなどの言葉をを聞いた記憶が掘り起こされる。カール・マルクス通りを脇に入ると市庁舎に出た。

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街中を抜けて昨日のポルタ・ニグラに行く。じっくりと外から見学するが内部の見学はパスだ。門は二重の造りになっている。近づいてみると愛称のように門(porta)は確かに黒い(nigra)石で出来ている。クルマの排気ガスで黒くなっているのではないだろうが薄汚れているように見える。外側(市外)から見るとまた違った光景だ。門は市街を取り囲む城壁の北門として2世紀後半に作られたそうだ。あまりにも壮大で,門というより城塞だ。東西で高さが違うのは高い東塔に聖ジメオン教会の一部が残っているからということだ。ポルタ・ニグラはこれから観光する皇帝浴場,円形劇場(闘技場),ローマ橋などのローマ遺跡群と聖ペテロ大聖堂・聖母教会とともに世界遺産に登録されている。トリーアは,古代ローマ人が伝えたいう,ドイツでのワインの発祥の地としても名高い。

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ジメオン通りの入り口にバイクを駐輪して中央市場 Hauptmarktに行ってみた。中央市場はお祭り騒ぎで移動遊園地も出ていた。回りの建物は第2次世界大戦後に復旧されて,かたちは古いのだろうが真新しく見える。ペトロの噴水 Petrusbrunnenは1594〜95年のものというがこちらもピカピカだ。この中央市場はほかの都市でのマルクト広場Marktplatzに相当するものだ。

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市場の真ん中には石柱が立っていてそのてっぺんに十字架 Marktkreuzが載っている。598年に建てられたと銘がある。石柱の花崗岩は古代ローマのものだそうだ。

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市場から大聖堂 Domに行ってみる。最初の建設は4世紀で西側(正面)は11世紀のロマネスク様式で造られている。聖堂というよりも城塞のように堂々と聳えている。内部にはいると巨大な石柱がアーチにつながり天井を支えているのが窺える。古めかしいパイプオルガンがアーチの間に備わっている。キリスト像の円蓋の彫刻にも目を見張る。最後の晩餐のレリーフが嵌まった祭壇もある。

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正面の大きな祭壇の方を見ると見学者がゾロゾロと歩いているので連られて行ってみた。祭壇にまで入ることが出来たのは初めてのことだ。祭壇の奥には更に空間(部屋)があるがこちらには入れなかった。エンゼルの大理石の彫刻が愛くるしく礼拝者を見守っている。

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大聖堂を出て,その右側にある聖母教会 Liebfrauenkirche に行く。こちらは1235〜60年に世紀に建てられた。ドイツ最初のゴシック様式の教会ということだ。内部の天井画やステンドグラスが見事だった。

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お昼斎になったので中央市場に戻って赤い家 Rotes Haus前のオープンカフェでランチを摂った。赤い家の隣はシュタイペ Steipeとも呼ばれる白い建物の市参事会宴会場 Festhaus des Stadtrates だ。いずれも再建されてレストランとなっていてピカピカだ。今日も暑いのでビールが旨い。注文した料理はサラダとイェーガ・シュニッツェルだ。サラダといっても鶏肉などが載っていてボリュームタップリなのでお腹いっぱいになる。こってり味のイェーガー・シュニッツェルはビールにぴったりだ。

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中央市場で良く目立つ聖ガンゴルフ教会 Stadtpfarrkirche St.Gangolfに寄った。958年創建で1284〜1344年に改築された市中最古の教会だ。中央広場からのは入口が分かりにくい。誰もいない静かな堂内をしばし見学した。

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聖母教会前の聖母教会通り Liebfrauenstraßeを歩きコンスタンチン広場 Konstantinplatzに出るとレンガつくりの巨大な建物が目に入ってきた。バジリカ Konstantin-Basilikaだ。300年ころのもので,かつてはコンスタンチン大帝の玉座の間だったが現在はプロテスタントの教会になっている。中を見たかったのだが入り口が分からない。このバジリカも聖母教会も第二次世界大戦の20回の戦略爆撃によって破壊され尽くされた。

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バジリカに接してロココ様式の選帝侯宮殿 Kurfürstliches Palaisがある。しかし改修中で入れないようだ。この宮殿からバジリカに入れるのかも知れない。

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時刻は2時だ。相変わらず暑いので宮殿庭園 Palastgartenのベンチで一休み。しばしの微睡みを楽しむ。

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庭園を皇帝浴場へと道を歩いていくと古代ローマ人に出会う。皇帝浴場のツァーガイドだった。

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皇帝浴場 Kaiserthermenは4世紀につくられた。漫画/映画のテルマエ・ロマエならぬテルマエ・トリーアエだ。浴場は(細部の仕上げを怠ったために)始めの計画通りに機能することはなかったと案内図に記されている。温水浴の他に冷水浴も出来るようになっており浴場入り口の前庭でスポーツやゲームを楽しんだようだ。現在では要塞化された居住塔 Alderburg,温水浴プール/浴槽 Piscina/caldarium,ボイラー室 Kasselhausなどが良い状態で保存されている。ローマのカラカラ帝・ディオクレチアヌス帝大浴場とともに古代ローマの三大浴場として数えられているそうだ。

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地下の施設も見学できた。床暖房施設,給湯施設,排水施設などのトンネル,地下通路を歩くことが出来る。まるで迷路を歩き回るようであったが涼しい束の間を過ごせて助かった。

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浴場の隅に見学用のタワーが設えてある。そこに登ると皇帝浴場が見渡せる。第二次世界大戦の空爆によるこの浴場の被害は軽かったそうだ。

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3時を回ってひとしお増した暑さの中を円形劇場(闘技場)Amphitheaterへと歩を進めた。およそ160〜200年ころに造られたこの闘技場は現存する古代ローマの闘技場として10指に数えられる規模だという。当初は市壁・市門として使われたこの円形劇場は剣闘士同士,剣闘士と猛獣との戦いの他に音楽会や宗教儀式の場であった。ここの劇場には2万人が入れたという。

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地下に入ってみたが支柱や梁ばかりだった。

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外に出るとグラディエイターの格好をした男女がランニングをしていた。劇場の観覧席に上がってみたら彼らが剣闘技の稽古をしている様子が見学できた。近々催されるフェスティバルのためのトレーニングのようだ。観覧席の木陰は涼しく爽やかで2千年も前にここで血腥い戦いに市民が熱狂していたとは想像できない。古代ローマ帝国はこの地にもパンとサーカスを持ってきて市民を統治していたことが身近に感じられた。

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4時過ぎにトリーア市街からホテルに戻った。帰りがけにスーパーマーケットで水を買ってきてホテル提供のジュースをもがぶ飲みして熱中症になりそうな身体に水分を補給した。その後でシャワーを浴びてほっと一息ついた。

8時なったので昨日のイタ飯屋で夕食を摂った。料理はワインとサラダとピッツァだ。

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今日でモーゼル川自転車の旅を終えた。走行距離は205kmだった。トータルの走行距離は1,022kmになった。明日からはこの旅の最後になるザール川自転車道の旅だ。

 

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 Posted by at 10:13 AM

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