ロマンチック街道自転車の旅(2013ドイツ自転車旅行−2)

 

閑話休題

この「ロマンチック街道自転車の旅」のページは,このwebページ(BikingBlog)の別の固定ページに記載したヴェーザー川自転車道の旅に続く,ドイツ自転車旅行の後半部分だ。ロマンチック街道は150以上もあるドイツの観光道路(古城街道,メルヘン街道,ドイツ・ワイン街道,ゲーテ街道など)の一つで,日本でも知名度が高い街道の一つだ。そのルートはヴュルツブルク Würzburgから南下してオーストリア国境に近いフュッセン Füssenに至る。移動には自転車の他に自動車,徒歩の手段があり,特に自転車・徒歩ルートには詳細な標識が準備されている。ルート上には中世都市,古城,教会などが点在している。ロマンチック街道 Romantische Straßeはローマへの巡礼路を意味しており,恋愛とは関係ない。日本ロマンチック街道はこの街道と姉妹街道の締結をしているがローマを目指している街道とはとても思えない。

読んでみた本やウェブページでのライダー(Fahrer)はフュッセンからヴュルツブルクまで,と地図とは逆のコースを辿っている。そして途中では一般道路をショートカットして走ったりしている。確かにフュッセンからスタートすれば標高差600mほどの下り基調となる。ロマンチック街道自転車道の全長は462kmだから平均勾配はわずか1.4%である。我々はこの勾配を登ることに何ら躊躇しないだけの脚を持っているし,ゴールが近くなるに連れてアルプス山地が段々と見えて来る方が感激は深いだろうと思った。何よりもゴール地点の「Ende der romatische Straße」の門にゴールしたいと考えた。で,地図通りにショートカットせずにヴュルツブルクからフュッセンへと順コースを走ることにした。

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資料など

ロマンチック街道自転車道の資料として須山夫妻の「時速15キロの旅」をカミさんが見つけてきた。次に読んだのは,絶版になっているが,神谷夫妻の「自転車ふたり旅」だ。どちらも我々と同じ年代の夫婦の自転車での紀行文だ。いずれもフュッセンからヴュルツブルクへと逆コースを辿っているので,順コースを計画した我々には全体としてはちょっと読みにくかった。しかし,大いに勇気づけられた本だった。田中さんの「ロマンティック街道 旅」も買ってはみたが,カミさんも自分も何度も手にしてはみるものの読む気は起こらず,イライラして結局は放り投げた。田中さんの本は,多分,重要な情報が一杯詰まっているのだろうが,とにかくレイアウトの酷さに辟易した。写真をぎっしりと詰め込み過ぎて余白がない,文字の書体もゴシックで大きすぎて行間が少ないなどなど,非常に見にくい本だった。田中さんの日程は何度かに分けての走破であり,独自のコースをたどったりで参考にならなかった。

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Webで最も参考にしたのはざらご寺さんの「ロマンチック街道自転車旅」だった。何と言っても,ヴュルツブルクからフュッセンへの順コースを辿っているのが参考になった。しかし,走行ペースが我々と比べて速すぎるので計画を立てるときは須山夫妻,神谷夫妻の本を参考にした。どの本やWebページにもあるEsterbauer Verlagのbikelineシリーズの「Romantische Straße」を日本のAmazonから注文して購入した。1/75,000の縮尺の詳細な地図で,ヴュルツブルクからフュッセンまで462kmということだ。

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通過する街のインフォメーションにある無料のマップは概要を掴むには良いだろうが,これだけで自転車の旅を続けるには役不足だ。Esterbauer社の地図の宿泊リストの他にインフォメーションに置いてあるUNTERKÜNFTE Romantische Straße (ACCOMMONDATIONS Romantic Road) という無料の小冊子にはホテル,ゲストハウス,B&B,個人宿,貸し別荘,キャンプサイト,ホステルなどの情報が載っている。bikelineの地図の宿泊リストよりも新しい情報だ。

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「地球の歩き方 A14 ドイツ」も,ちょっと重たかったが重宝した。地球の歩き方にはほかに「地球の歩き方 A15 南ドイツ」があり,こちらはロマンチック街道がやや詳しく解説されている。今回の旅行には必要部分をスキャナーで取り込んでiPhoneに入れた。街道のインフォメーションで日本語の観光ガイドブック「ロマンチック街道」を買うことができる(€7.50)。カラー写真が豊富で,ロマンチック街道の建物のいくつかは内部の写真撮影禁止なので,旅の思い出に良いかもしれない。

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1日目(通算14日目 2013年6月24日):カッセル Kassel 〜ヴュルツブルク Würzburg(14.55km)

ホテルDays Innのフロントでフランクフルト中央駅までの時刻表を印刷してもらうがヴィルヘルムスヘーヘ駅からのICEやICの特急ばかりが打ち出された。我々は自転車を運ばなければならないのでカッセル中央駅からの各駅停車(RE, RB)が良いのだが,とお願いしてみても「ヴィルヘルムスヘーヘ駅からのほうが便利だ」と言うばかり。それで無料Wi-Fiのパスワードを教えてもらって部屋にもどりiPhoneでドイツ鉄道のウェブページを開いてみた。カッセル中央駅からヴュルツブルクに各駅停車で行くには,フランクフルト中央駅経由ではなく,8時10分の列車でフルダ Fuldaとシュリュヒターン Schlüchternを経由すれば行けることがわかった。さっそく荷物を纏めて7時20分にホテルを出発して,10分後にはカッセル中央駅に着いた。

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まずは切符の購入だ。切符の自販機を英語表示に切り替えて8時発でカッセル中央駅からヴュルツブルク中央駅に行く列車を検索してみた。このときに詳細設定(Further search option)の接続(Connection)にローカル列車のみ(only local transport)を指定し,さらに大人2名と自転車を車内持ち込みにチェックを入れて検索した。すると8時10分カッセル中央駅発で11時58分ヴュルツブルク中央駅着の列車と運賃€75.00表示された。さらに乗り換え時刻・ホームなどの詳細を表示させてみたところ上手く行きそうなのでこの乗車券を買った。

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ついでバイク車内持ち込み切符だ。旅の2日目のフランクフルト中央駅で係員が代行してくれたときのシーンを思い出して,まず自販機の画面のトップメニューに戻った。こちらは英語表記は効かずドイツ語表記でやるしかない。家族と自転車のアイコンのあるGesamtes Angebotボタンを選んだ。もう一度,家族と自転車のアイコンのFreizeit und Aktionennボタンを押す。Fahrräderタブで2台のバイクを選択したら€10のバイク持ち込み切符が買えた。やれやれこれで大丈夫そうだ。

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切符が買えたので安心して駅構内のパン屋でサンドイッチとコーヒーを注文して朝食をとった。列車の時刻が近づいて,自分はサンドイッチの一部をテイクアウトする。

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フルダ行きの列車が入線してきて,ドア脇のボタンを押して手動でドアを開けてバイクを積み込んだ。シートに座って自分は朝食の続きだ。座席の脇にはこんなに大きなゴミ箱があり,かなりの量のゴミを捨てられる。

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フルダ Fulda駅での乗り換えはスロープがあったので楽勝だった。乗り換えホームに着いて列車案内を見ると手元の時刻表の列車番号と違うし,行き先はフランクフルト中央駅になっていた。路線図もないので次の乗換駅のシュリュヒターン Schlüchternがフランクフルトの手前にあるのかどうかも分からない。バイクを携えて同じホームにいた中年の夫妻に聞いてみてこの列車でシュリュヒターンに行けると分かった。到着した列車にバイクを乗せて次の乗換駅に向かった。

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シュリュヒターンでの乗り換えも無事に済ませてヴュルツブルク中央駅行きの列車に乗った。この列車のゴミ箱はこんなにも立派だ。

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列車がヴュルツブルクに近づいてくると車窓にはマイン川 Mainが見えてきた。列車は定刻にヴュルツブルク中央駅 Würzburg Hbfに到着した。4時間弱の鉄道旅行だったが,乗り換えが2回あったためか,退屈はしなかった。列車はCAN(cantusという私鉄),ドイツ鉄道のRE(快速),RB(各駅停車)と乗り継いだが,途中での車内検札があったのはREだけだった。ヴェーザー川自転車の旅での帰りのクックスハーフェンからカッセルまでの鉄道旅行でもREの列車だけで車内検札があった。

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まずは今晩の宿探しだ。地球の歩き方の欄外に記載されていたプライベート・ホステルのBabelfish-Hostelをヴュルツブルク中央駅の広場を渡ったところに見つけた。交渉してみたら朝食無しでシャワートイレ付きのダブルルームが€62だというのでオーケーした。電子キーの預かり料€5をプラスされたが,これはチェックアウト時に返すという。チェックインは14時というので荷物を預かってもらって市内見物に出かけることにした。この街は多くの学者を輩出している。自分の知っているだけでも,15世紀の彫刻家のリーメンシュナイダー,日本でもお馴染みの医師・博物学者のシーボルト,X線の発見でノーベル賞を受賞したレントゲン,ABO血液型を発見してノーベル賞を受賞したラントシュタイナー,イモリの胚のオルガナイザーの発見でノーベル賞を受賞したシュペーマンなどだ。

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自転車で旧市街のマルクト広場まで行ったがトラム(市電)の線路と石畳に妨げられてハンドルを取られてまっすぐに走れないこともしばしばだ。後ろに付いてくるカミさんは,危なく転倒しそうになったといっていた。広場近くのインフォメーションで日本語の市街図をもらうが,これが漫画チックで見にくい。この広場にバイクを置いて市街を見物することにした。その前に昼飯だ。地球の歩き方では行列の出来る人気の店と紹介していたマルクト広場にあるBeratwurst Knüpfingというスタンドで焼きソーセージパンとコーヒーを食べた。これが今日のお昼ご飯だ。2人分で€7.80と安く上がったが,味の方は特にどうと言うことはなかった。それでも食べ終わる頃にはやはり行列が出来ていた。

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マルクト広場に建つ聖マリア礼拝堂 Marienkapelleを見学した。その入り口をリーメンシュナイダー作のアダムとイブ(のレプリカ)が飾っている。

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次いで聖キリアン大聖堂 Dom St. Kilianを見学した。ドイツで4番目に大きい大聖堂で内装の大部分は第二次世界大戦の戦禍を免れている。大聖堂の歴史を展示した部屋の他にリーメンシュナイダー作の司教の墓碑像が有名とか。ヴュルツブルクは,軍需産業は抱えていなかったにも関わらず,第二次世界大戦の戦略爆撃による大火災で街の90%が破壊され10万7千人の住民のうち約5千人が亡くなった。

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大聖堂のお隣はノイミュンスター Neumünster 教会だ。

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ちょっと歩いてユネスコの世界文化遺産に登録されている宮殿 Residenzに向かう。入場料は二人で€15だった。残念ながら内部は撮影禁止なのでここに掲載する写真はない。こちらの公式ページで,有名な階段の間 Treppenhaus,白の間 Weisser Saal,皇帝の間 Kaisersaalなどの内部の様子を覗うことが出来る。それにしても領主司教はこんな宮殿で何をしていたのだろうか?

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レジデンツの後ろの庭園に回ってみた。回遊中に雨がサ〜と降ってきて宮殿の軒下でしばしの雨宿りだ。

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雨も止んで再び日射しが帰ってきた。広場に戻りバイクに乗ってマイン川に架かるアルテ・マイン橋 Alte Mainbrückeの向こうの丘に見えるマリエンベルク要塞 Festung Marienbergに行ってみることにする。要塞は13〜18世紀までは領主司教の居城であった。その後は戦乱が収まり,先ほど尋ねたレジデンツが出来たために要塞・居館の役割を終えたという。

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岡の上の要塞を目指しバイクで登っていくがどうやら道を間違えたらしい。だいぶ遠回りをしてようやく要塞に入れた。中庭にはマリエン教会 Marienkircheやベルクフリート塔 Bergfried があった。17時をまわろうとしていたので内部の見学は諦めて外を歩いてみた。

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城壁からマイン川方面を見るとヴュルツブルクの街並みが手に取るように見える。いまさっき渡ってきたAlte Mainbrückeも指呼の間だ。

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一通りの見学を終えて再びアルテ・マイン橋を渡って旧市街にもどった。行きは気が付かなかった市庁舎 Rathausが橋のそばに建っていた。街中の魚屋で魚のバーガーと小エビのフライを買い,スーパーマーケットに寄ってビールとチーズ,水,パンを買った。これが今日の夕食だ。こちらのビールは瓶ビールがほとんどなので,スーパーマーケットの中をあちこち探して栓抜きを買った。駅の近くのシュティフト・ハウク Stift Haug教会の前を通って帰着したホステルでチェックインをした。

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部屋に入り日課のシャワーと洗濯を済ませて夕食を食べた。ところがスーパーで買ったチーズは,ヴェーザー川自転車道の旅で当たった,例の臭いチーズであった。カミさんは即座にパスしたが,自分は棄てるのももったいないので我慢して食べた。今後は気をつけなくてはと思うが,このチーズの銘柄や名前が分からないのではどうしようもない。

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ホステルはユースホステルと貸し別荘 Ferienwohnungを兼ねたようなシステムで,共同の調理器具や冷蔵庫が備えられていた。大部屋に泊まると€17だという。ここではWi-Fiが無料で使えた。バイク旅行者は我々の他に一人いたようだが,大部分の宿泊者はバックパッカーだった。

2日目(通算15日目 2013年6月25日):ヴュルツブルク Würzburg 〜タウバービショフスハイム Tauberbischofsheim(45.23km)

朝寝坊して7時35分に部屋で朝食をとった。昨晩スーパーマーケットで買っておいたミルクもチーズ同様に失敗であった。ヴェーザー川自転車道の旅でミルクハウスにButter Milch(バターミルク)とVoll Milch(全乳)の2種類のミルクが置いてあった。そのときはVoll Milchを飲んだので,スーパーではバターミルクを試しに買ってみたのだ。飲んでみたら酸っぱくて臭いも強いミルクだった。ちょっと腐っているのじゃないかと思うくらいだ。今後ミルクはVoll Milchを買うことにしよう。カミさんはもちろんのことパスだ。

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9時25分にホステルを出てちょっと遠回りをしてマイン川岸の古いクレーン Alter Kranenを見ていく。ここからマイン川の遊覧船が出ていた。上流に見える旧マイン橋を渡ってロマンチック街道自転車道が続いているはずだ。

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旧マイン橋を渡りユースホステルの角を曲がり,マリエン要塞を脇に見てダラダラと登るロマンチック街道自転車道が続いていく。脇を走るアウトバーンB8にはRomantische Straßeの標識があった。今日はその標識にあるタウバービショフスハイムに向かって走るのだ。

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アウトバーンを渡ったヘヒベルク Höchbergの街中もダラダラ登りの道だ。それほど疲れてもいないが,パン屋で早くも一休みとする。歩道のテーブルでのんびりとおやつの時間をとった。ロマンチック街道自転車道の旅はヴェーザー川自転車道の旅よりももっとのんびりと旅する予定だ。

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ヘヒベルクを過ぎると開けた田園の光景に出会う。彼方に教会の尖塔が見えるところまで走っていくのかな。北ドイツとは違った光景にカミさんも自分もハッピーな気持ちで,アップダウンをもろともせずにペダルを回していく。白人男性と中国系女性のライダーが追いついてきて「How are you」と声をかけていく。カミさんが「Fine, thank you」と答える。気分も体調もほんとうにfineの様子だ。

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畑の中に見えた村に入るとロマンチック街道自転車道の標識が樹にかけられており,こんな詳しい案内板が立っている。この緑のバイクの標識を見失いさえしなければフュッセンまで行けるはずだ。

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ホステルを出発して2時間20分でヴァルトブルン Waldbrunn村の外れを走るアウトバーンA3を越した。地図によればこの前後が急坂になっているはずだ。果たしてアウトバーンを越えたら,何と,16%の激坂が待っていた。自分は何とかクリヤーしたがカミさんは押し歩きになってしまった。ロマンチック街道自転車道の最大難所ではなかろうか。

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12時も過ぎたのでオーベルアルタートハイム Oberaltertheimの村で昼食にしようとしたが,地図にはレストランの記号があるが,小さなパン屋しか見つからなかった。まぁ,さっきおやつを食べたからこの程度で良いか。カミさんはシナモンロールを自分はハムを指して切り分けてもらってパンに挟んで立ち食いをする。このくらい田舎に来るとドイツ語しか通じないが,自分のドイツ語でもなんとか食事にはありつける。

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脇に自転車道があったのに気が付かず一般道路をルンルン気分で走って行く。いくつかの村を通り過ぎていくが,どの村にも立派な教会がある。

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14時前にヴェルバッハ Werbachの村が終わるサインに出会って今日の宿泊予定地を通り過ぎつつあることに気がついた。振り返れば向こうにヴェルバッハの街が見える。道路脇のベンチで一休みして相談し,4.5㎞先のタウバービショフスハイムまで行くことにした。

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自転車道の分岐点には路面にペイントで行き先が印されている。ホッホハウゼン Hochhausenの外れで日本庭園を設えた普通のお宅を発見! 何なんだろう。

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タウバービショフスハイム Tauberbischofsheimの旧市街のマルクト広場に入ったのは14時40分と早い時刻だった。広場の市庁舎のインフォメーションを訪ねた。英語は通じたが,係の女性の対応には驚いた。「宿泊施設の紹介はしていない。自分で電話するか直接に交渉しろ。」と言う。市街図と宿泊リストの冊子はあるかと尋ねると,€0.30(30セント)で売っている,という。こんな体験はこのドイツ自転車旅行で初めてのことである。この街はツーリストには優しくない。ともかく冊子を買って旧市街の外れの個人宿探しに出かけた。ロマンチック街道自転車道の旅の初日にあまり良くない印象を刻まれたような気がする。

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ハウプト通りHauptstraßeを走り,線路をくぐったHöhbergstraßeの角にZimmer(部屋)のサインを見つけた。角を曲がって通りに入りると個人宿Berberichが見つかった。さっそく交渉してみると€50ということなのでオーケーした。日課のシャワーと洗濯を済ませて街の散策に出かけた。

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13, 14世紀のマインツ大司教城館(マインツ選帝侯の城館) Kurmainzisches Schlossとテュルマース塔 Türmersturmを外から見学した。内部は郷土博物館になっている。

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マルクト広場に入り繁華街を散策していると雨が降り出した。折りたたみ笠をさして散策を続けるとスポーツ店の軒下にぶら下がるディスカウントのサイクルジャージを見つけた。サイズをみるとSサイズで定価€49.95が€19.95で売っている。ブランドを見るとNakamuraとある。ン,日本製か? 試着してみるとぴったりだったことと長袖と半袖がファスナーで着脱できる優れものだったので買った。良い買い物ができた。

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カトリックの市区教会聖マルティン Kath. Stadtkirche St. Martinを見学した。その祭壇の素晴らしいこと。

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街を歩いてみると噴水があちこちにあった。それもカエルのモチーフ付きだ。何でカエルなんだ?!

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マインツ大司教城館わきのレストランで夕食をとることにした。ビール,白・フランクソーセージ,サラダのメニューだ。軽食なのだがこれくらいで十分だ。

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宿に帰る途中の小学校の前で「日本の方ですか」とドイツ人に日本語で尋ねられてビックリ。聞けば空手を習いに東京に住んだことがあるという。この近所の空手の先生だった。タウバービショフスハイムでのスポーツと言えばフェンシングが有名らしい。世界トップクラスのクラブ,連邦のフェンシング・センターがこの街にあることがインフォメーションセンターのポスターにもあった。

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ロマンチック街道自転車道の旅の自転車走行の初日も無事に終わった。この旅の前半のヴェーザー川自転車道の旅は北上する旅だったが,ロマンチック街道自転車道の旅は南下する旅だ。そのためにbikelineの地図を見るときには上下を逆さまにしないと進行方向と一致しない。逆さまにすると,それでなくとも読みにくい,ドイツ語が読めなくなる。困ったものだ。

3日目(通算16日目 2013年6月26日):タウバービショフスハイム Tauberbischofsheim〜ヴァイカースハイム Weikersheim(39.53km)

8時に朝食をとる。例によってランチ用のパン,チーズ,ハムとコーヒーをゲット。身支度を整えて9時20分に個人宿 Berberichをスタートする。ここ数日は肌寒い気候で,今日はウィンドブレーカーの下に薄手のカーディガンを着込んだ。我々の他にもモーターバイクで旅行する2人組が泊まっていたようだ。ドイツでは,日本と違って,バイクといえば自転車(Fahrrad)のこと。

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10時にラウダ・ケーニヒスホーフェン Lauda-Königshofen に到着した。ここはラウダとケーニヒスホーフェンという2つの街から成っているが,旧市街はラウダにある。旧市街への入り口のオーバー門 Obere Torは1496年のものとある。旧市街は静かに佇んでいた。

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タウバー川を渡ってウンターバルバッハ Unterbalbachの村のベンチでランチとした。これからしばらくこのタウバー川を遡る道を走ることになる。

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ちょうど正午にバート・メルゲンハイム Bad Mergenheimに到着した。インフォーメーションに行って日本語の案内図をもらい,係のアジア人女性から名所のドイツ騎士団の城館の他にバラ園や日本庭園が素敵だと教えてもらう。まずはカフェーでケーキとコーヒーだ。

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ドイツ騎士団の城館 Deutschordensschloss は1527〜1809年までドイツ騎士団の本拠であった。ドイツ騎士団は12世紀後半の第3回十字軍のドイツ戦士を守るために設立された騎士修道会だ。

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ドイツ騎士団の城館の内部はドイツ騎士団博物館となっている。切符を買って入ろうとすると係の女性が「そこに立って上を見て。ここまでは写真撮影はオーケーだが,館内は撮影禁止だよ」と教えてくれる。そこから上を見上げると螺旋階段が見事に見える。館内にはドイツ騎士団の衣装,バート・メルゲントハイムの街や温泉の歴史のほかに,19世紀末のミニチュア人形のパーマネントコレクションやドイツのコミック・アーチストのウォルター・メールス特別展があった。館内の様子はこのWebページに載っている。

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博物館を1時間ほど見学して,クアパーク Kurparkのバラ園,日本庭園を見に行く。バート・メルゲントハイムのバートは温泉を意味する。だからここは温泉保養地なのだ。公園内には温泉を飲む処もあった。自分はクアパークはパスしてヴァイカースハイムでユックリしたくて先に進みたかったが,カミさんの希望を入れた。しかし,公園はけっこう遠くて,内部も広い。カミさんは「戻ろうか」というがちょっと意地になってバラ園を探し回った。行き当たったバラ園は思ったよりも貧弱だった。道を隔てた日本庭園も寂しくてがっかり。クアパークで小一時間を過ごしバート・メルゲントハイムを出たのは15時だった。

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1時間走ったところで今日の宿泊予定地のヴァイカースハイム Weikersheimに着いた。ここもバート・メルゲントハイム同様に第二次世界大戦の被害は受けてない。マルクト広場のインフォメーションで近くの個人宿を当たってくれたが,いずれも満室か不在であった。係の女性は非常に親切で,Hotel GarniのFrankenstübeに予約を入れてくれた。やれやれ,今日も宿を確保できた。安心して,その足でヴァイカースハイム城 Schloss Weikersheimを見学に行った。城はマルクト広場から続く小道の先だ。

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ヴァイカースハイム城は18世紀のホーエンローエ Hohenlohe家の居城だった。城の見学は団体見学のみで最後の17時からのツァーに間に合った。ドイツ語での案内であったが,日本語の案内パンフを貸してもらえた。残念ながらここも内部は撮影禁止であった。絢爛豪華さに目を見張る騎士の間 RittersaalなどがWebページで見ることが出来る。天井は升形を並べた作りで,本物の角をあしらった動物の彫刻や市井の人々の絵が描かれている。中でも丸出しにしたお尻にウンコまでを描いた升形のピースを見つけたのには笑ってしまった。

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城の後ろの庭園 Schlossgartenはヴェルサイユ宮殿のそれをモデルにしたものだという。幾何学模様に刈り込まれた植物やこびとの彫刻,おしゃれな噴水と池などが素晴らしかった。

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庭園からはバイカースハイム城の全貌が望める。 まるでディズニーランドか何かのようだ。

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18時に教区教会の隣のホテルガルニ Frankenstüble にチェックインした。部屋代は€70だ。日課のシャワーと洗濯をして夕食の買い出しに出かけた時は19時30分を回っていた。

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カミさんの鼻によれば「このような街は旧市街の外に出ないとスーパーマーケットは見当たらない」そうだ。旧市街からゲンス塔 Gänsturmをくぐって旧市街に出ると,果たして,スーパーマーケットのREWEが見つかった。カミさんの鼻はさすがだ。今日のカミさんは積極的で,スーパーのハム・チーズ売り場で身振り・手振りを交えて量り売りにトライした。係の女性も英語を交えながら,サンプルを切ってくれたりとても親切にしてくれた。結局,チーズを4枚,サラダを100g買った。スーパーのレジには自動秤もあって,リンゴ一個でも載せれば即座に値段が出る仕組みだ。また,レジの注意書きに,€200と€500札は受け取れない,とあった。偽札対策だろうかお釣り不足だからだろうか。パン,ビールを追加して買い,ホテルの部屋で夕食とした。今日の夕食代は€20.30だった。

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4日目(通算17日目 2013年6月27日):ヴァイカースハイム Weikersheim 〜ローテンブルク オプ デア タウバー Rothenburg ob der Tauber(46.0km)

6時半に目覚めて改めてヴァイカースハイムの旧市街を散策する。マルクト広場もひっそりとした朝を迎えている。

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旧市街から市立公園 Stadtparkへ回ると,昨晩もスーパーマーケットへの買い出しで見かけた,等身大の人形があちこちに見られた。カミさんは面白がってiPhone5でパチパチと撮影する。我々は,もはや,こんな夫婦人形のように穏やかになっているだろうか。

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1時間ほど散歩して朝食をとる。今朝の寒さは肌寒いなんてもんじゃない。しっかりと防寒対策をして9時10分に宿をスタートした。女将はこの寒さにもかかわらず半袖姿だ。

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タウバー川沿いの自転車道を走り,緑のトウモロコシと黄色のムギが拡がる田園地帯を走る。彼方に見える村はタウバーレッタースハイム Tauberrettersheimか。タウバーレッタースハイムの村に架かるタウバー橋 Tauberbrückeの袂でクグロフやら色々な骨董品で飾られた家に出会った。ドアを開けて出てきたおじさんに挨拶してカメラを向けると,これまた骨董品で埋め尽くされたドアも見せてくれた。

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9時50分にレッティンゲン Röttingenに到着した。マルクト広場は舗装工事中だ。市庁舎のインフォメーションで英語のパンフレットをもらって散策だ。この街は30年戦争で壊滅的になったがそれ以後の18世紀の面影を留めている。

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街の目玉のブラッテンシュタイン城 Burg Brattensteinは午後からのオープンのようで外から見ただけだ。ホーエル・バウ Hoher Bauも文字通りに高く聳えている。

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11時半にクレークリンゲン Creglingenに到着。自動車道沿いにあったインフォメーションは通り過ぎてタウバー川を渡って市街の市庁舎のインフォメーションを訪ねた。が,市庁舎は改修中で街の人にインフォメーションを聞いてみると,通り過ぎた件の場所がそうだと言う。通り過ぎたインフォメーションに戻って案内図をもらい,再びタウバー川を渡って市街に入る。自動車道の標識には日本語も?! 舗装を改修中の街の混雑を避けて橋の袂のベンチに座ってランチをとった。タウバー川から鴨たちが寄ってきて餌をおねだりする。

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クレークリンゲンの街外れにはリーメンシュナイダー Riemenschneider の最高傑作と言われる聖母マリアの祭壇 Marienalter (1505-1510年)をもつヘルゴット教会 Herrgottskirche がある。これを見逃す手(足?)はない。入場料を払って中に入ってみる。祭壇に彫られたマリアの神々しく,これほど美しい顔ならば信仰も篤くなろうというものだ。隅にはリーメンシュナイダー自信を彫り込んであると地球の歩き方にはあったが,見落としてしまった。この教会の,道路を隔てた向かいに指貫博物館の看板があったがパスした。

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ローテンブルクにむかってタウバー川を眺めながら丘陵地帯,林間,畑,村,教会を通過していく。けっこうなアップダウンが繰り返される自転車道だ。この頃にはカミさんとの登坂の要領を会得した。自分の方が脚があるので上りになってもギアを落とさずにペダルを踏み込んでなるべくスピードを落とさないように走っていた。当然のことカミさんは置いてけぼりを喰らうことになり離れてしまう。ここで,ペダルを踏み込まずに上りに入り,スピードが落ちたところでギアを落として走るように心掛けるとそれほどカミさんとの距離が開かないようになった。バックミラーで測って,おしどり夫婦を演じられるように走ることにした。

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雨がしとしとと降る中をヘルゴット教会から1時間半ほど走ったところで,彼方の小高い丘の上に尖塔をもつ街が見えてきた。あれがローテンブルクだろう。屋根付きの橋でタウバー川を渡ると街はますます近づいてきた。確かにローテンブルクだ。あそこに見えるのは昨年のツァーで散策したブルク公園だよ,とカミさんに話しかける。が,駆け足で回ったツァーに記憶は定かではないようだ。

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大きな石造りの二重橋 Doppelbrückeを渡って指導票にしたがって進むと砂利道の激坂が待っていた。押し歩きするドイツ人ライダーと一緒に我々も押し歩きしなくてはならないほどの坂だ。ようやく旧市街へと導く門が見えてきた。時刻は14時になっていた。

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門をくぐったところはローテンブルクの名所のプレーンラインPlönleinだった。ということはくぐってきた門はコボルツェラー門 Koborzellar Torだったのか。ロマンチック街道自転車道はどこから市街に入るのか期待していたのだが,まさかこんな処に出るとは。さっそく出会った日本からのツァー客から「自転車で来たの,どこから来たの,自転車は日本から持ってきたの,どこまで行くの,宿はどうしているの,危なくないの」などなどの質問が飛び出す。記念撮影をしてもらったり,ツァー客に記念写真を撮られたりと,ブレーメン以来の久しぶりのカミさん以外との日本語会話を楽しんだ。

帰国してこのブログを書くに当たり,ローテンブルクに入るロマンチック街道自転車道を地図で確認してみた。するとロマンチック街道はクリンゲン門からローテンブルクの旧市街に入るようになっていた。さらに古城街道 Burgenstraße 自転車道の地図を見ると,我々が走ったコースはこの古城街道のコースであることがわかった。古城街道のコースは西からやって来てローテンブルクでタウバー川に出会いこれに沿って走り,細い激坂を登ってコボルツェラー門から旧市街に入るようになっていた。つまり,われわれはローテンブルクの直前でロマンチック街道自転車道から古城街道自転車道に迷い込んでしまったことになる。お陰で,本来のロマンチック街道自転車道なら走らないはずのローテンブルグの下を流れる「愛しきタウバー渓谷」を走れたわけだ。ケガの功名ということだ。

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マルクト広場の隅にバイクを駐輪して,昨年もお世話になった,広場裏のトイレを探しに行った。マルクト広場は改修中で市庁舎も市参議会員酒場 Ratstrinkstubeも建物を描いた幕で被われている。ということは毎正時のマイスタートルンクの仕掛け時計も拝めないと言うことだ。市庁舎に入ってみると鐘楼への入り口があった。連続したアップダウンでだいぶ脚を使っていたが,ここはローテンブルクの街を60mの高見から見てみようではないか。

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苦労してようやく狭い頂上にたどり着いたところで一人€2を払う。さらに狭く,ほぼ垂直なハシゴをあがると外に出られた。赤い瓦屋根の家が連なるローテンブルグの街が眼下に見下ろせる。

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彼方に眼をやると,ついさきほどヒィヒィ言いながらバイクを押し上げてきたタウバー渓谷と二重橋が霧雨に煙って見えた。直下のマルクト広場はちょっと人が少ない。頭上を見上げれば大きな鐘だ。見学中に鳴ったらどうしよう。下りの階段の方が登りよりも辛い。スッ転ばないように気をつけながら広場に降り立った。

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15時と遅くなったが,マルクト広場の隅にあったガストホフ Marktplatzで昼食を取る。ビールはデュンケル,メインはラザニアとミートソーススパゲッティだ。ものは試しと,ウェイターに今晩泊まれるか,と聞いてみた。しばらくして帰ってきた返事は朝食付きで€58という。ローテンブルクのど真ん中でこの値段である,即座にオーケーした。

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旅装も解かず,バイクは広場に置いたままで念願の(自分だけだが)中世犯罪博物館を見に行った。相変わらず雨はしとしと降りで寒いくらいだ。出会った日本のツァー客はコートをまとっていたし,他の観光客のダウンジャケット姿はもの珍しくはないほどだ。そうそう,その前にローテンブルクの名物のシュネーバル Schneeballだ。昨年はお土産に持って帰ったのだが,今回は町歩きをしながら食べよう。ただ,粉砂糖が口の周りに着いちゃうので,良く拭かないと。

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博物館に向かう途中で城壁から下を見ると,タウバー渓谷だ。旅行計画を立てているときは,ローテンブルクはタウバー渓谷を走るんだね,と話し合ったあの愛しきタウバー渓谷 Liebliches Taubertal だ。翌日にのんびりと走るのだろうと思っていたが,渓谷を走ってローテンブルク入りとは思いもしなかった。それにしても今日は辛い道のりだった。

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中世犯罪博物館 Mittelalterliches Kriminalmuserum は昨年のツァーでは外側からちらりと覗いただけだった。博物館の入り口には鉄格子の馬車や首かせがあったので,記念撮影だ。

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館内は法律と刑罰の歴史博物館とあって,たくさんの文書史料,晒し刑や公民権剥奪刑のための動物のマスク,日本語の説明書き付きの首かせ,断頭刀,鉄の処女,拘束かごなどなどが所狭しと陳列されている。

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おぞましい博物館だが,それにもかかわらず1時間半もじっくりと見学した。ここを見終わって城壁に設けられたいくつかの塔,門を巡った。ジーバース塔 Siebersturm,シュピタール門 Spitaltor,レーダー門 Rödertor,櫓門 Galgentor,マルクス塔 Markusturm(とレーダーアーチ Röderbogen)などなどだ。

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18時にホテルにチェックインした。廊下を隔てた部屋の外のバスルームにはバスタブがあった。寒かった一日を振り返って,手足を伸ばしてユックリと暖まった。

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20時に下のマルクス広場で何やら大きな人の声が聞こえるので窓を開けてみたら,夜警同行の市街巡回が始まるようだ。説明は英語だが,なにやら面白い雰囲気だ。城塞公園 Burgparkまで着いて行ったが,お腹も空いてきたので夜警団とは別れてレストラン探しに出かけた。

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白い塔 Weißerturmに夕陽が当たってオレンジ色に輝いている。でも,時刻はまだ8時半だ。聖ヤコブ教会 St. Jacobskirche はすでに閉まっている。昨年のツァーでは内部のリーメンシュナイダー作の聖血祭壇を鑑賞したことを,珍しくも,カミさんが覚えていて教えてくれた。

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マルクト広場わきの「日本語メニューあります」の看板を掲げたレストランに入った。まずはビールを注文し,それからミートローフとシュニッツェルをメインに注文した。となりの席では日本のツァーの一党が「プリーズ,プリーズ」とウェイトレスを呼んでいる。「ハロー」と言った方が通ずると思うんだが。こんなふうに感ずるほどだいぶ旅慣れてきた。

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5日目(通算18日目 2013年6月28日):ローテンブルク オプ デア タウバー Rothenburg ob der Tauber 〜 ディンケルスビュール Dinkelsbühl(71.19km)

8時に朝食をとった。「ハッピー バースデー ツー ユー」とカミさんに声をかける。今日は,この旅のきっかけとなった,カミさんの還暦の誕生日だ。プレゼントは用意してないが「この旅がプレゼントだから,何も要らない」と言う。帰ったら考えますヨ。今日も寒い一日になりそうなので,それなりの身支度をして9時25分にホテルを出発した。

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昨晩,見てなかったクリンゲン門 Klingentor,聖ヴォルフガンク教会 Wolfgangskircheを回る。夕陽に照らされてオレンジ色に見えた白い塔 Weißerturm (ガンガー門)は朝に見るとやはり白かった。

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標識に従って旧市街をでて自転車道に入ろうとしたが,五叉路にある標識の角度がビミョウでどの方向に行って良いのか分からない。2回も行きつ戻りつして9時50分にようやく正しい方向を見つけた。郊外の自転車道を走り,公園を見つけたので昨日の雨天走行で泥で汚れたバイクの清掃と注油をした。そこに通りかかったサイクリストが「何か手伝おうか」と英語で声を掛けてくれる。天候のことをちょっと話してみると「今年の6月は普通じゃない,いつもは30℃はある」とのことだ。今日もウィンドブレーカーとニッカーパンツで寒さ対策を取ったのは正解だ。

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自転車道はタイルブロック,砂利道,アスファルトの一般道と変わりながらアップダウンを繰り返して続く。強い日射しからお顔を守ろうと,カミさんは覆面スタイルだ。11時40分にシリングフュルストへの最後の激坂を登った。登り詰めたところに見つけたインフォメーションはオープンしてなかった。とにかく掲示板の市街図でレストランを探す。

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シリングフュルスト Schillingsfürstは小さな街(村?)で,尋ねたレストランはおばあさんが対応してくれた。ドイツ語しか話せなかったが,お孫さんの女性シェフが注文を取りに来た。スイスのレストランで働いていたとかで,そこではフランス語を使っていて英語はあまり上手ではないと言う。小ビールを注文し,メインはニシンのマリネとマッシュルームだ。やはり火を通した魚の方が旨いと思った。カミさんのマッシュルームは正解だった,ということだ。

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このシリングフュルストだけではないが,村々を通過すると広場や教会の前に花やリボンを飾った高い柱が立っている。マイバウム Maibaumというもので,春から初夏に掛けてのお祭りで使われるものだそうだ。この柱の回りを皆して,春の訪れを祝福して,踊るそうだ。カミさんの誕生日を祝って踊ろうか。

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この街の名所は丘の上に建つシリングスフュルスト城 Schloss Schillingsfürstとそこで行われる鷹狩りの実演だ。ここまで苦労して坂を登ってきたカミさんはもはや更に上を目指す気力は無く「待っているから行って見てきたら」という。で,単独でさらに坂を登って城を見に行った。丘の上には学校や街並みがあり,水道塔 Wasserturmもある。

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街並みを進むと城の領域に入り,眼下にシリングスフュルストの市街が見渡せた。その先には城の入り口があって€8の入場料が要るとあった。鷹狩りのデモは実演時間が合わず,それは昨年のツァーでローテンブルグの街で見ているので城の見学ともにパスした。

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一気のダウンヒルでカミさんの待つ市庁舎に降りて,シリングスフュルストの街を後にしてフォイヒトヴァンゲンに向かった。シリングスフュルストの街外れの自転車道から振り返ってみると丘の上のシリングスフュルスト城の全体が見えた。こりゃまた,ずいぶんと登ったものだ。

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14時20分,フォイヒトヴァンゲン Feuchtwangenに着いた。ここはそれなりに大きな街だ。マルクト広場にはローマの泉がある。市庁舎のインフォメーションで案内図をもらってカフェーでお菓子とお茶を食べながら散策コースを練る。

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小休止したところで街の探検だ。マルクト広場から修道院教会 Stiftskircheを見学した。内部には日本語での注意書きがあるのは何故? 修道院教会と並んでヨハネ教会 Johaniskircheが建っている。その後ろは木組みの家のカステン Kastenだ。カステンは礼拝堂→納屋→市立ホールと役割を変えて現在に至っている。ヨハネ教会の前で遊んでいた生徒に修道院の回廊のクロイツガンク Kreuzgangを地図を示して尋ねたが,どうも要領を得ない。近くを探し歩いたが分からずに諦めた

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マルクト広場の広場に戻って一角にある自転車屋を覗いた。対応してくれたお兄さんが流暢な英語であれこれと品物を勧めてくれる。シューズカバ−,レインパンツは袋を破ってまで品物を見せてくれる。自分のバイクのペダルが不調なので買い換えた。始めに取り付けてくれたのはペダルレンチじゃないと付け外しが出来ないタイプなので,ペダル軸に六角レンチ穴のあるタイプに取り替えてもらった。これが€8.50と安かった。お兄さんは直ぐ近くの別のスポーツ店の店長で,この自転車店は母親が経営していると言う。そんなことをあれこれ話しているところに件のお母さんが戻ってきた。とても親切なお兄さんだった。

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店を出ると店の前には電動自転車のバッテリー充電器があった。お金を投入するところが無かったところをみると無料らしい。

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バイクを駐輪した処にもどると, ちょっと脚の不自由な男の人が近づいてきた。何か物乞いをされるかと引いてしまったが,かばんから折り紙を出して,「フォイヒトヴァンゲンからのプレゼン トだ」と言う。「週一回この市庁舎で折り紙を教えている」と言う。何てことだ,誤解して済みませんと胸の内でお詫びを述べた。ドイツは旅行者にとても優し いことをここフォイヒトヴァンゲンで2度も体験した。

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1時間20分ほど滞在したフォイヒトヴァンゲンを出発する。始めはブロック舗装のアップダウン,そして森の中の砂利道のアップダウンを過ぎると畑の舗装路のアップダウン,そして再び森の中の砂利道のアップダウンが続く。ロマンチック街道のパンフレットには「プロの自転車競技者の鍛えられたふくらはぎは必要ない」,「山越えも無ければ,長く険しい上り坂を恐れる必要も無い」,「この全行程の難易度は『やさしい』とされている」なんて美辞麗句が書かれているがとんでもない!! 全体的にロマンチック街道は南(フュッセン)から北(ビュルツブルク)に下り基調なので,中高年の日本人ライダーは逆コースを走るケースが多いことがWebページや本で紹介されている。しかし,局所的にはロマンチック街道自転車道のアップダウンと砂利道は半端じゃない。たとえ逆コースでも押し歩きを余儀なくされる急坂はあちこちにあったし,この先のコースにもあると予想される。ここをロードレーサーで走って痛い目に遭った話(佐藤 博:地図は言葉を越える,文芸社,2011)もあるほどだ。

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17時50分,ようやくのことでディンケルスビュール Dinkelsbühlに到着した。しかし歴史博物館(旧市庁舎)のインフォメーションはちょうど閉まってしまった。

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マルクト広場辺りをウロウロしているとJTBのコンダクターのお姉さんに出会い,あれこれと立ち話をする。ツァー客のおじさんが「自転車で巡っているの。頑張ってね」と持っていた袋からサクランボを食べさせてくれた。カミさんはこれで元気が出たと言う。元気を取り戻したところで宿探しだ。2軒のガストホフを当たったが€82と高かったり,満室だったりで断ったり,断られたりだ。

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1508年に建てられた木組みの穀物倉庫に行ってみた。ここは現在はユースホステルになっているはずだ。しかし,ユースホステルは2014年末まで改修中で営業停止になっているとの張り紙にがっかりだ。どうなることかと思ったが19時にようやくホテルガルニ Fränkischer Hofに€70で部屋を取ることが出来た。ホテルはとても歴史と由緒があって部屋は歪みがでていて床は斜めになっている。始めは気分が悪くなるほどだった。洗濯が終わる頃にはすっかりと慣れたが。

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シャワーと洗濯の後にホテルのレストランで夕食をとった。ビールでカミさんの還暦の誕生日を祝って乾杯した。メインはシュニツァーと牛肉の煮込みだ。今晩の料理は久しぶりに旨いと感じた。カミさんも喜んで食べた。

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食事の後で暮れなずむ街を散歩した。久しぶりに腕を組んでの散歩はラブラブムード満載だ。聖ゲオルク教会 Münster St.Georg,ドイチェス・ハウス Deutches Haus,ローテンブルガー門 Rothenburger Torから通りを抜けるとガウル池 Gaul Weiher(ローテンブルク池 Rothenburger Weiher)にファウル塔 Faultrumが映えるとてもロマンチックは夜景に出会った。カミさんは誕生日にこのうえない素晴らしい思い出を残せただろうか。

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マルクト広場にもどり,まだ開いていたアイスカフェーでアイスクリームを買い,食べ歩きながらホテルに戻った。それにしても今日はアップダウンが連続するルートを70㎞以上もよく走ったものだ。カミさんヨ,還暦おめでとう。

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6日目(通算19日目 2013年6月29日):ディンケルスビュール Dinkelsbühl 〜 ネルトリンゲン Nördlingen(37.10km)

8時に朝食をとった時には外は雨だった。この旅では朝食がとても楽しみだ。パンを始めとしてハム,チーズ,ソーセージがとてもヴァラエティーに富んでいて,そして旨い。さらにコーヒーが濃厚で旨いことはちょっと驚きだった。メニューの中にシリアルが加わっているのも普通だ。牛乳やヨーグルトも旨いので,パンを食べた上に,コーンフレーク,フルーツグラノーラなどのシリアルも食べてしまう。パンはたっぷりのバターを塗ってハム,チーズを載せるのはもちろんだが,他にジャムや蜂蜜を塗っても食べる。個人宿に泊まるとこのジャムは自家製のものを出してくれる。旅の始めの頃はこんなたっぷりな朝食をとっていたが,疲れも出てきたのかこの頃はこんな全部は食べきれなくなっている。で,ランチ用に朝食で食べなかった品目でつくったサンドイッチを頂戴するというわけだ。

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止みそうもないので雨支度をして9時半に宿を出た。マルクト広場の端に出ていた果物の出店でサクランボを買った。カミさんは昨晩の元気の源になったサクランボパワーに今日のツーリングを託す心づもりだ。

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ゲオルク教会のタワー見学は金・土・日の14〜17時と言うことで断念して教会 Münster St. Georgの内部を見学する。身廊の柱の高さ,側廊に飾られた祭壇を眺める。キリストの磔が描かれた祭壇の下には誰ぞの聖体が祀られていた。

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30分ほど教会を見学してマルクト広場のラートハウス(現在は歴史博物館)のインフォメーションに行く。日本語の案内図をもらい街のミニアチュアを見ながら,18もある街の塔巡りを話し合う。

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ローテンブルガー門から出発して反時計回りに城壁を散歩した。ローテンブルガー門 Rothenburger Torの表と裏,ファウル塔と公園管理人の小屋 Faulturm und Parkwächterhäuschen,グリューナー塔 Grüner Turm,ゼーグリンガー門 Segringer Torと雨の中を歩く。

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ヴェヒタース塔(監視塔) Wächternsturm,ハイマース塔とドイツ騎士団の城 Haymarsturm und Deutschordnesschlossを眺めて,ネルトリンガー門 Nördlinger Torでは城壁に上がってちょっと歩いてみた。ヴェルニッツ塔 Wörnitz Torを見終わってマルクト広場に戻った。

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教会の下に停めたバイクに戻り雨支度を再チェックして素敵だったディンケルスビュールを出たのはお昼近くの11時20分だった。一つの街に午後に入って散策し,足りなければ翌日の午前中に再び散策するというパターンの自転車旅にはすっかりと慣れた。しかし,今日の雨中走行は途中に未舗装のアップダウンが待っている。ネルトリンゲンに着くのは何時になることやら。

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雨のロマンチック街道自転車道は田園や森の中の砂利道をアップダウンを繰り返しながら続いている。バイクはもちろんパニアーバックの裏側も泥だらけだ。12時10分にヴィッテンバッハ Wittenbachの村の児童公園の大きな東屋で雨宿りしながらランチとする。

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いい加減で終わって欲しいと念じながら砂利道のアップダウンを黙々と進んでいく。雨具の撥水性が落ちているのか裏側が冷たくなって寒い。防水手袋も縫い目から水が染みこんでグジャグジャでどうしようもない。今日はこれまでの旅で最悪のコンディションだ。しかし,カミさんは文句も言わず(文句を言う余裕が無いのか)着いてくる。14時15分にマイヒンゲン Maihingenに入り,トイレに立寄った。ここでで一休みしようとレストランに入った。中はサイクリング中の子どもと引率の大人たちで満員だった。雨具を脱いでコーヒーとケーキで一服した。そうこうしている内に表にバスがやって来た。予定通りか緊急避難で呼び寄せたのか知らないが,バスの後ろには沢山のバイクが詰めるカートが着いていた。サイクリスト一行はバスに乗り込み,バイクはカートに積み込んだ。このシステムは実に羨ましい限りだ。引率の大人が「明日からは晴れて20℃を越す天気になるヨ」と励ましてくれた。

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16時ちょっと前にネルトリンゲン Nördlingenの街に到着した。インフォメーションで市街図をもらい,宿を探した。この頃には雨は上がっていたが疲れ切って,泥だらけの格好で走り回るのも億劫なのでマルクト広場にあったホテルガルニ Altreuterを当たってみた。朝食付きで€62と言うので決めた。泥だらけのバイクは宿の入り口に,嫌な顔もされずに,置かせてもらった。宿はグランドフロアーがお菓子やさんになっている。部屋は,ベッドの足元に洗面台があって狭かったが,他の宿を当たる気力がなかったので我慢することにした。交渉すれば別の部屋があったのかも知れないが。

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荷物を部屋に入れて市街散策に出かけたのは17時20分だった。まずは目の前の聖ゲオルク教会 St. Georgskircheのダニエル Danielの塔が18時までオープンしているので登ってみることにした。あれほどの雨の中の砂利道のアップダウンで疲れ果てているにも拘わらず,ウントコドッコイショと70.3mの展望所を目指して登った。66mの8階で料金を払ってもうちょっと登ると展望所に出た。ローテンブルクもそうだったが,塔への登り口でなく登り切ったところで料金を払うシステムは日本と逆だね。

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回りを見渡すと,このゲオルク教会を中心にネルトリンゲンの旧市街が円形に拡がっているのが分かる。ネルトリンゲンは1500万年前に落下した隕石でできたリース Ries盆地にある。直径1㎞ほどの旧市街は城壁で取り囲まれ,その城壁はほぼ完全に歩いて回ることが出来る。第2次世界大戦で駅や回りの街は被害を受けたが,旧市街はほぼ無傷であったという。

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遠くに見える街は明日に訪ねるハールブルクの街並みだろうか? その向こうの丘に見えるのがハールブルク城だろうか?

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雨上がりのリース盆地と旧市街の美しい光景を見終わって,こわごわと階段を降りた。降り立ったマルクト広場では民族衣装を着たブラスバンドの演奏が行われていた。

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何か分からない曲だが聞き終わって城壁の外にあるスーパーマーケットに夕食の買い出しに行った。明日の水と今晩のビールとバイクを掃除するブラシを買った。

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再びマルクト広場に戻ってテイクアウトの店でソーセージ,ポテト,チキンを買った。こちらではTake OutではなくGo Outと言うようだ。教会の入り口にはコンサートがあるという掲示があった。ちょっと覗いてみると,内部も外部同様に改修中であった。コンサートは19時30分からで€12と言うことだったが,空腹を満たす方が先なのでパスした。

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ホテルでの部屋での夕食にもすっかりと慣れて,特段に質素の食事とは感じなくなっている。食事の後はおきまりのシャワーと洗濯だ。泥だらけの靴下を丁寧に洗った。

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ところで,ネルトリンゲンの5km手前にヴァラーシュタイン Wallersteinという街を通るはずだったがまったく覚えがない。地図と標識に従って走ったはずだが線路を渡った記憶もなく,街並みを見た記憶もない。街中を国道が走りペスト柱 Pöstsäule(1722-25年)という三位一体柱があるはずだがこれにも思い当たらない。観光ガイドブックに載っている街をすべて制覇しようとしていたのが… Wikipediaによるとここは人口3,310人(2000年)の小さな街のようだ。ざらご寺さんのホームページにも「ヴァラーシュタインはうっかりしていると,通り過ぎるような街であった」とある。Wikipediaのペスト柱の写真を借りて載せておく。

Wallerstein

7日目(通算20日目 2013年6月30日):ネルトリンゲン Nördlingen 〜 ドナウヴェルト Donauwörth(42.45km)

今日の朝食は8時30分と遅いのは日曜日だからか。朝食までに時間があるので朝のネルトリンゲンの街を散策した。ガチョウとブタを手にして商談中か世間話中のモニュメントだ。

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ネルトリンゲンの旧市街は半径500mほどだから城壁を歩いて回っても3kmちょっとで小一時間だろう。城壁の完全踏破をやってみようと言うことになった。ダイニンガー門Deininger Torから城壁に上がった。時計回りに歩いて行くとライス塔Reisturm,ライミンガー門 Reimlinger Tor,旧堡塁 Alte Bastei, ベルガー門 Berger Tor,ライオン塔 Löwenturmを通り過ぎてテクテク歩く。

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城壁の外側を見下ろすとビール工場があったり,一般家庭の庭がみえる。この庭の広さは児童公園かと見間違うほど広くて羨ましい限りだ。屋根の上にはコウノトリの巣があり夫婦が巣を守っている。城壁散歩もちょっと飽きたので最後のレプジンガー門 Löpsinger Torで城壁を降りてマルクト広場に戻った。

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宿に帰り8時半にカフェテリヤスタイルの朝食をとった。お昼用にサンドイッチとコーヒーをそっとゲットした。

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今朝のスタートは10時40分とのんびりしたものになってしまった。バイクの掃除はどこかでやることにして出発する。今日のコースは林間コース,市街地コース,田園コースともに平坦で舗装路だ。天気も昨日とは打って変わって爽やかな晴天で,おまけに追い風と来ている。鼻歌が出そうなルンルン気分だ。後にカミさんが語っているが「前日どんなに大変なコースであっても,また朝になったら雨が降っていても,走りたくないと思ったことは無かった」というほどこの自転車の旅を満喫していたという。予定を立てる段階では「雨が降った走らずにホテルで連泊」なんて言っていたのだが…

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時にはウマと併走することもあった。南ドイツの素敵な田舎をのんびり,のんびりと自転車の旅だ。

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村や町の入り口にはキリスト像,大概は磔姿の,がある。日本でいえばお地蔵さんや青面金剛に相当するのだろう。ある家の前にコウノトリの飾りを置いて道路にはペイントがされている場面にも出会った。飾りに添えられた文や道路に書かれた文を読めば「HnasとMariaにXX年XX月XX日に女の子Evaが生まれた」なんてある。この家の前を通る皆にお知らせしているのだ。われわれもそのコウノトリの飾りに「Alles Gute !」なんて言いながら通り過ぎた。五月の日本じゃ鯉のぼりだね。

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ネルトリンゲンから2時間ほど走ったクラインゾーハイム Klensorheimの噴水わきのベンチでバイクの清掃をした。ついでにこのベンチでランチを食べた。チェーンにも注油してきれいになって快調なバイクで田園のアップダウンも快調に飛ばして走る。

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ハールブルク Harburgに13時半に到着した。市庁舎のインフォメーションは閉まっている。そうか,今日は日曜日だった。観光ガイドブックを見ればこの町の見所は丘の上のハールブルク城とある。せっかく来たんだから登って見ようと市庁舎にバイクを駐輪して徒歩で階段を上がっていく。

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城への階段からハールブルクの街並みが見渡せる。街を流れている川はヴェルニッツ川 Wörnitzだ。ウ〜ン,言葉に表せないほどの景色だね。空の青さに赤い瓦が映えている。

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城門から中庭に入るときに落とし格子の下を通る。見学ツァーは14時で,入城料は一人€5,英語のパンフレットは€0.50だった。ハールブルク城は11, 12世紀のものでヴァラーシュタイン家の城だったという。長い歴史を通じて一度たりとも占領されなかったので保存状態は良く,ドイツの名城の一つだという。

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城の内部は撮影禁止で城壁の部分だけが撮影を許可された。城壁に空いている銃眼には回転する木枠が填められている。この公式ホームページで中の模様を覗くことが出来るだろう。教会から始まって,広間,書記の部屋,囚人の牢屋や刑罰のサウナ部屋やトイレなどを1時間ほどガイドされた。

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見学を終えて下の街にもどり,広場の一角のカフェーでお菓子とコーヒーで一休みした。お菓子は果物がたっぷりと入ったシュークリームだ。カミさんはここでのシュークリームがよほど気に入ったとみえて,後々までそのおいしさを語っていた。

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ヴェルニッツ川に沿って自転車道を走っていくと街並みが見えてきた。ドナウヴェルトだ。

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標識に従っていくと,一見,行き止まりのようだが歩行者とバイクが通れるドアが開いている。地下道を抜けて公園をぐるっと回るとドナウヴェルト Donauwörthに着いた。時刻は16時40分だった。インフォメーションで案内図をもらって宿探しだ。旧市街には安い宿はなく,郊外のペンションと個人宿を訪ねた。郊外と言ってもバイクで10分も走ればそこは郊外だ。満室で断られたのでドナウ川を渡ったホテルを当たってみた。€90と高いホテルだがこちらも満室で断られた。

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心を落ち着かせようとまずはドナウ川を眺める。左からのドナウ川に右からヴェルニッツ川が合流して大きなドナウ川になって流れていく。昨日の雨のためか水はあまりきれいではなかった。日曜日なら宿は空いていると思ったがさにあらず。そうか,ここはドナウ川自転車道との交差点になっているのでサイクリストが多いのか。とにかくもう一度旧市街にもどってみよう。

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旧市街に戻ると目抜き通りのライヒス通り Reichsstraßeで5,6人のライダーがホテルに入っていった。それを見てここならいけるか,と自分も入っていって聞いてみると€80だという。カミさんからオーケーがでて,ガストホフGoldener Hirschに部屋を取った。バイクを離れの倉庫に預けて日課のシャワーと洗濯を済ませた。

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階下のレストランで夕食をとった。お気に入りのデュンケルビールで乾杯して,フランクフルトソーセージとジャガイモのフレンチフライに小さな肉のグリル盛り合わせをたらふく食べた。ここでうっかり大きな皿を注文すると二人でも食べきれないほどでとんでもないことになるのだ。

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夕食をのんびりと1時間かけて食べた後は街の散歩に出かけた。今日も気温があまり上がらずこの時間はカーディガンを羽織ってちょうど良い具合だ。ドナウヴェルトは第二次世界大戦でほぼ完全に破壊された。再建された南ドイツで最も美しい通りの一つと言われるライヒス通りも自分と同じ年齢だ。道理で新しい街の印象だったんだ。20時40分というのにまだまだ陽は落ちそうもない。聖十字架教会は閉まっていたので明朝に尋ねることにしよう。

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リーダー門 Riedertorをくぐってヴェルニッツ川の中州を歩いてみる。ここで夕食をしてもよかったかな。ようやく暮れていくヴェルニッツ川を見ながらライヒス通りの脇のクロネン小路 Kronengasseからミュンスター Münster(我らが聖母教会/教区教会)をグルッと回って宿に戻った。

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8日目(通算21日目 2013年7月1日):ドナウヴェルト Donauwörth 〜 マイティンゲン Meitingen(68.46km)

ミュンスターの鐘の音で目覚めさせられた。カフェテリヤスタイルの朝食には卵焼きを付けてくれた。 ランチ用にとサンドイッチとコーヒーをこっそりといただいた。9時20分に宿を出て2つの教会に立ち寄った。

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昨晩訪れた聖十字架教会 Wallfahrtskirche Heilig Kreuzの内部を拝観した。聖十字架はちょっと変わったかたちをしている。天井にはフレスコ画が描かれ,祭壇も立派だ。地下には礼拝堂があったが,こちらはパスした。

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ミュンスターの方は以外に質素なつくりだった。

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ドナウヴェルトを出るときにちょっと標識がゴチャゴチャして迷いそうになる。標識の微妙な取り付け角度よりも地図の方向を頼りにロマンチック街道自転車道を進む。ドナウ川の水流はけっこうな速さだ。来年はこの黄色の標識のドナウ川自転車道を走ってみようか,とカミさんに声を掛けるが即答は無し。とにかくまだ10日が残っているのだ。ドナウヴェルトから6.5kmのシェフスタル Schäfstallでちょっと別ルートのドナウ川沿いを走ってみる。再び本ルートに戻り田園地帯を走ているときに樹の下でブヨの大群に突っ込んでしまった。長袖,ニッカースタイルだったが,手首の手袋の隙間を刺されてしまった。痒いこと痒いこと,我慢できずにボリボリ掻きむしった。痒み止めの薬を持ってこなかったのが残念だ。そうこうしているうちにレヒ川 Lechを渡ってラインの看板に出会う。

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ライン Rainの街に入り鉄道を渡ったところで標識を見落としてあちこちウロウロと走り回る。街の西側を迂回してようやくのことにシュヴァプ門 Schwabtorをくぐって市街に入れたのは正午すこし前だった。ラインは750年ほどの歴史を持ち人口9,000人に満たない小さな街だ。レヒ川の花の街を標榜している。カミさんが広場で仲間の写真を撮っているサイクリストのおじさんに声を掛けてiPhoneで自分たちのツーショットを撮ってくれるよう頼んだ。iPhoneの使い方も分かったらしく,上手に取ってくれた。カミさんもだいぶ旅慣れてきている。市庁舎のインフォメーションで地図をもらうが特に見るものもないようだ。市庁舎の裏にバイクを停めて教会の下の公園でランチをとった。バイクスタンドは螺旋スタイルの面白いものだがラセン故にバイクが直立しずらい。

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13時20分にラインをスタートした。デーナー花公園 Dehner Blumenparkを横目に眺め雑木林を進んでいくと地図通りレヒ川に突き当たった。しかしそこは水門で渡れるような橋はない。水門で働いている係に聞いてもロマンチック街道自転車道は知らない,という。レヒ川を上へ下へと走りながら橋を探したが見当たらない。水門に戻ってくると若者3人組が水門のドアを開けて入っていく光景を見た。そうか,ここは通れるのかとドアを開けてみると急な階段だ。まずカミさんのバイクを上まで持ち上げたが,自分のバイクは重くて持ち上がらない。荷物を下ろして軽くしなきゃ,と思っていたら件の若者が持ち上げてくれた。上にいってみると細い通路があってバイクでも渡河できるようになっていた。若者はドイツ語で一所懸命にロマンチック街道自転車道の続きを説明してくれた。何ともラッキーでかつありがたいことだった。未来のドイツを背負う若者たちにお礼を述べて川を渡ったところで分かれた。確かにロマンチック街道自転車道は続いていた。やれやれ,危ないところだった。 ところでこの水門を渡る話は本やホームページにも紹介されてない。皆さんどうやってレヒ川を渡ったのでしょう?

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林間の砂利道を抜けて畑の自転車道を走る。ようやく夏らしく暑くなってきた。

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13時40分に宿泊を予定していたホルツェン Holzenに到着した。この村にはホルツェン修道院だけの村のような感じだ。まずはガストホフの庭でビールを飲む。今晩の部屋は空いているかと聞くと,ホテルの方で聞いてくれと言う。修道院のホテルはサイクリングスタイルではちょっと入りにくい高級感が漂っている。リストを調べてみると€94〜と高いのでここはパスすることにした。ついでだからとばかりに修道院を見て回る。

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ホルツェンにはこのホテルしかないので次のノルデンドルフ Nordendolfとエルガウ Ellgauでガストホフ,ペンション,個人宿に当たってみる。しかしお休みや不在で宿が取れない。ガストホフの親父さんが「6㎞先のマイティンゲンに行けば宿がある」というのでロマンチック街道自転車道から外れてマイティンゲンを目指す。

18時過ぎにマイティンゲン Meitingenに到着した。街でガストホフ Neue Postが見つかったので交渉してみた。喫煙ルームは€52,禁煙ルームは€80というので躊躇なく喫煙ルームをお願いする。喫煙ルームとはいうがタバコの臭いはほとんど感じなかった。ラッキーだ。それにしてもこの値段の差は何なんだ。

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シャワーを浴びてさっぱりしたところで近くのスーパーマーケットに水を買いに行った。宿にもどったその足でホテルの庭で夕食をとった。まずはピルスで乾杯だ。メイン料理はシュニッツェルとソーセージサラダだ。今日は大きな2つの難関をクリヤーした。レヒ川の渡しと宿探しだ。カミさん曰く「本当にどうなることかと思った」。そうですヨ,私だって焦りまくりましたヨ。ということで今度はヴァイツェンを注文して,向こうのテーブルのおじさんと眼を合わせて「プロスト Prost !」。

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宿探しや迷子になるとリードする自分としては焦ってしまいイライラして,ついつい悪態をついてしまう。するとカミさんは「大丈夫だヨ,大丈夫だヨ」を励ましの言葉を掛けてくる。と,「何が大丈夫だヨ,そんなら役割交代しようか」と思わず口に出してしまいそうになる。でも,これをやってしまうとケンカになるのは重々分かっているのでグッと堪える。仮にリーダーの役割を交代してこんな状況になったら,自分も「大丈夫だヨ」と励ますの声かけをするしかないだろうなぁ。そこで,この頃は宿探しや迷子になったときはカフェーでお茶して落ち着いたり,立ち止まって二人でじっくりと地図を見るように心掛けることにしている。生来の短気の性格に加えて,歳を取って老眼で地図の細かい字が見えなくなり,ドイツ語が理解できなかったりとイライラが募る自分を何とかカバーしようとしてくれるカミさんの気持ちがこの旅で次第に胸を痛くするのが分かってきた。さぁ,明日も頑張らずに,楽しく,のんびりと気楽に行こう。

9日目(通算22日目 2013年7月2日):マイティンゲン Meitingen 〜 アウクスブルク Augusburg(34.57km)

8時に朝食をとる。ゆで豚というかチャーシューのようなものも出た。例によってランチ分をゲットする。チェーンに注油して9時半にスタート。今日も暑くなりそうだ。

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ロマンチック街道自転車道から外れているがbikelineの地図を頼りに15分ほど走ってマルクト Marktで本道に合流できた。丘の上に見える城塞教会 Schlosskircheがチェスのキャッスル駒のようだ。

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その後アヒシュハイム Achsheimから東方のランクヴァイト Langweidに行く途中で標識をロストしたようで畑のあぜ道に迷い込んでしまう。ウォーキング中の二人の夫人から片言のドイツ語で道を聞いて南下すると駅に出た。ランクヴァイト駅かと思って工事の人に聞いたらガプリンゲンージートルンク Gablingen-Siedlungだという。そこから再び道を聞いてシュッテテンホーフェン Stettenhofenへの道を走るが,またもや迷子になった。シュッテテンホーフェンの村に入り家庭菜園を耕していたおじさんにロマンチック街道自転車道への道を尋ねた。身振り,手振りを交えながら「左に行って右に曲がり,アウトバーンを乗り越えて,運河を渡れ」と言ったようだ。自分の怪しげなドイツ語の理解度だが,走ってみると確かに運河沿いのロマンチック街道自転車道に出た。11時を少し過ぎた頃だった。

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右手に運河,左手にレヒ川を見て森の中の砂利道をひたすら走ると住宅地に入った。ゲルストホーフェン Gersthofenでレヒ川を渡った橋の袂の小さな公園でランチを取った。

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再び森の中の自転車道を走りアウクスブルク Augsburgの街に入ったのは12時半だった。

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街に入って又しても迷子になりあちこちウロウロしながらマルクト広場のインフォメーションを見つけた。そこで地図をもらい椅子に腰掛けて宿探しの作戦会議だ。アウクスブルクは大きな街なので街中には個人宿はなさそうだ。旅行前に読んだ本では,日本人の奥さんがいるヤコバーホフ Jacober-Hofが人気のようだったので当たってみた。しかし,予約で満室だと言われ,あとで電話してくれたらキャンセルが入っているかも知れないと名刺を渡された。

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そこで目抜き通りを北上して大聖堂を過ぎた街の北の外れのゲオルク教会前のホテルガルニ Georgsrastを当たってみた。アウクスブルクでは2泊の予定なので,「ツヴァイ モナーテ」と交渉したら怪訝な顔をされた。いけねぇ,モナーテは月だった,ツヴァイ ナハトだ。で,2泊で€53というので,一も二も無くオーケーした。お約束のシャワーと洗濯を済ませて街の散策に繰り出した。

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アウクスブルクは近世初頭からルネサンス末期にフッガー家やヴェルザー家といった商家によって当時の世界で最重要な貿易・経済の中心地であった。19世紀には繊維工業,機械生産が盛んになりMAN社(Maschinenfabrik Augsburg-Nürnberg AG)ではディーゼルがディーゼルエンジンを発明した。今日もアウクスブルクに入ってくるときにMAN社の前を通ったら大きなエンジンの展示物が眼を引いたくらいだ。第二次世界大戦ではMAN社(Uボートのディーゼルエンジンを生産していた)や郊外のハウンシュテッテン Haunstettenにあるメッサーシュミット社(Messerschmitt AG)があることもあって何回もの空襲を受けて街は甚大な被害を受け1,499人が亡くなった。だからアウクスブルクの旧市街も戦後に再建された新しい建物で出来ている。

時間はたっぶりあるのでトラムやバスで回ることもないだろうと,バイクは宿において徒歩での散策だ。リヤカーに子ども二人を乗せようとしている光景はここドイツでは珍しくないが日本ではリヤカーの横幅が道路交通法に抵触してダメだ。

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モーツァルトの父レオポルトの生家が博物館になっているが写真を撮るだけでパス。大聖堂も明日に回そう。

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マルクト広場に出てお茶を飲む。たまたま座ったところは地球の歩き方にあったエーバー Cafe Eberだった。この天気ならお茶よりビールに決まっているサ。

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市庁舎に行ってみる。入り口の頭の上には松かさのオブジェが。この松かさがアウクスブルクの紋章だ。グラウンドフローから4階の黄金の広間に上がる。戦災で崩壊した市庁舎の写真が痛ましい。

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黄金の広間 Goldner Saalは体育館のように天井が高く,広い。それも金ピカだ。天井のフレスコ画にも圧倒される。

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広間の隣は長浜市,尼崎市などのアウクスブルクと姉妹都市の紹介の部屋だった。

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街をブラついた。聖アンナ教会 St. Annaを覗いて裏の通りを見て回りながら中央駅を探しに行くが市民劇場に出くわして戻ることにする。

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戻る途中に小路をみつけ入ってみると青物横丁だった。

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夕食は地球の歩き方に出ていたバウエルンタンツ Bauerntanzに行ってみる。まずはビールだ。本を見せたらマウルタッシェン Maultaschenは出来るというので注文した。自分は日替わりメニュー Tageskarte から肉のグリルを注文した。マウルタッシェンは何かと聞いたらラザニアだという。なるほどタッシェンってポケットの意味だったな。

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バウエルンタンツから水路沿いを歩いてみる。水路には色々はオブジェが浮かんでいた。そのうちに,さきほど街に入る道を迷った果てにくぐったフォーゲル塔 Vogeltorにでた。 アウクスブルク・コメディ劇場 Augsburg Komödieもこの地域に建っている。水路に戻って歩いていると赤いヒト型の標識があった。そうそう,BS番組でみたブレヒト博物館 Brecht Hausへの案内板だ。アウクスブルクは演劇も盛んだ。

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宿に戻る途中に,腕の痒みを停める薬を探しに薬局 Apothekeに入ってみた。虫除けのスプレーは置いてあったが,痒み止めらしきものはなかった。処方箋がないと買えないのかも知れない。ヴュルツブルクで泊まったようなホステルを見つけた。一泊€19とあった。

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10日目(通算23日目 2013年7月3日):アウクスブルク Augusburg(0.0km)

7時と珍しく早い朝食をとった。こんな朝早くでは街は目覚めてないだろうと,洗濯をした。今日は「アウクスブルクの休日」なのでのんびりした朝でも大丈夫だ。このホテルは深いシャワーのタブなので,足踏み洗濯スタイルだ。

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昨日は外からだけだった大聖堂 Domの見学だ。ミサが行われているのでそっと見学する。

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側廊の高いところに,大聖堂の見所の,11世紀後半〜12世紀の世界最古というステンドグラスが5枚ある。ちょっと気付きにくいが予言者の姿が完全な形で残っている。

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大聖堂を見終わってペルラッハ塔 Perlachturmに登ってみる。ここは昨日訪れたが入り口が分からずに聖ピータース教会を見学しただけだった。塔への入り口は教会入り口とは反対側の目立たないところにあった。階段を上りながら戦災の写真を見ると,隣の市庁舎に比べて塔の被害は少なかったようだ。

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今回の旅で何度目になるだろうか,バカの高上がりじゃないが,またまたウントコドッコイショと階段を上って展望所からアウクスブルクを眺める。案内板が示すフュッセン方向を見るがアルプスらしき山並みは霞んで見えない。展望所は生徒の団体で混んできた。10時半になって塔の鐘が鳴り始めるのじゃないかとおどけて耳を塞ぐと引率教員の男性が「11時じゃないとならないから大丈夫だ。どこから来た。ここはモーツァルの父親の生家があるんだが,モーツァルトって知ってるか」と英語で話しかけてきた。「もちろん」と口ずさんだのは40番だった。

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街の南の外れの聖ウルリッヒ・アフラ教会 St. Ulrich u. Afra に向かう。マーキュリーの噴水やヘラクレスの噴水などアウクスブルクには噴水が多い。

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北の外れの宿からここまで歩いたが,地球の歩き方がすすめるトラムやバスに乗るほどでもない。これものんびり旅行のなせる業だ。聖ウルリッヒ・アフラ教会は表(手前)のプロテスタント教会と奥のカトリック教会がある。プロテスタント教会の方は質素なつくりだ。

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奥のカトリック教会は内部は荘厳で華やかだ。教会前の庭の石畳を改修している職人の働きにしばし見入ってしまう。そうこうしていたら雨が降ってきた。

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マキシミリアン通り Maximillianstraßeを北上しながらフッガーハウス Fuggerhaus とその中庭をながめる。現在のフッガーハウスはフッガー銀行になっている。

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12時半になってお腹も空いてきたのでマキシミリアン通りの日替わりメニュー Mittagmenuの看板の出ているレストランに入った。英語のメニューも持ってきてくれたが,こちらには日替わりメニューが出ていない。まずはビールを注文しておいて,ドイツ語のメニューでカミさんが「1と3番にしよう」という。さて,何が出てくるやら。これが当たって,魚と軟らかい豚肉,サラダだった。デザートにカミさんはジェラートを自分はエスプレッソをいただいた。この位の夕食があれば良いんだがねぇ〜。

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街の案内板に従ってフッガーライ Fuggereiを見学に。フッガーライは16世紀に豪商フッガーが金をだして作ったアウクスブルク市民のための,世界最古の,社会住宅だ。今でも当時の家賃,なんと€0.88で150人が住んでいる。魔女のような格好をしたおばさんがにっこり笑って出迎えてくれた。

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中庭に建つヤコブ・フッガーの像の近くに防空壕が残っている。内部には第2次大戦中の歴史が展示されている。

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公開されている現在の住居は4部屋で庭付きだ。これで88セントの家賃だ。

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ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルトの曾祖父のフランツ・モーツァルトもここに住んだことがあるという。当時の住居も4部屋だ。

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各戸口の呼び鈴は一戸一戸で違った型でつくられている。これは当時の真っ暗な夜でも触って自分の戸口が判断できるような仕組みということだ。

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教会もある。ここでは一日三回フッガー家のための祈りを捧げることが入居者の家賃の一部となっているそうだ。

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フッガーライを見終わってヤコーバー通り Jakoberstraßeをヤコーバー門 Jakobertorまで歩いてみる。ヤコブ教会 St. Jakobは素通りする。

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通りを戻りかけたところのスポーツ店を覗いてみるとオルトリーブ Ortlieb社のサイクリングバッグのダウンタウンの旧モデルが€119.95で出ていた。買おうかなと思うが取り付けるところもないし,荷物にするにはかさばるので諦めた。大聖堂の近くで日本食のテイクアウト店 SAKURAがあった。寿司もあったがNinja-Boという看板に引かれて買ってみた。どうやら焼きそばのようなものだ。さらに近くのテイクアウト店でサンドイッチとビールを買った。これらで宿に帰って夕食とした。ニンジャ・ボーの麺は焼きそば麺のような或いはスパゲッティのような珍妙なものだった。「アウクスブルクの休日」も終わった。やはり大きな街の散歩は疲れる。

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(追記)

2019年に「アウクスブルクの水管理システム」が世界遺産に登録された。その概要は世界遺産データーベースが次のように述べている:700年以上を費やしてダムや運河・水路・水道・堰・水門・給水塔等を整備し、上水(飲用水)と中水(飲用には適さない生活用水や産業用水)を分離して供給する高度な水管理システムを構築した。世界遺産は運河網と水路網で結ばれた地域一帯で、給水・配水・排水施設や噴水・冷房施設・水力発電所など計22施設で構成されている。

我々の散歩で出会った旧市街のマーキュリー/ヘラクレス/アウグストゥスの噴水,オブジェやブレヒトの看板の水路などがこの世界遺産の一部だった。

11日目(通算24日目 2013年7月4日):アウクスブルク Augusburg 〜 ランツベルク アム レヒ Landsberg am Lech(62.43km)

7時に朝食をとる。今日の朝食は別の部屋でとった。今朝はランチ用のサンドイッチ,ヨーグルト,コーヒーを頂戴する。今日のコースは長丁場なので早々に支払いを済ませて8時10分に宿を出た。

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地図と標識に従って国道B300に入るつもりがコースをロストして迷子になる。行ったり戻ったり,道を尋ねながらようやく自分たちの位置が分かる。幹線道路を走れば目指すフリートベルクにいけそうだが,ロマンチック街道自転車道に固執して走る。どうも大きな街に出入りするときに迷子になることが多い。件のざらご寺さんのブログをみるとアウクスブルクから道を迷ってフリートベルクに3回も来てしまったそうだ。bikelineの地図のテキストを読めば詳しい道順が書いてあるのだが,拙いドイツ語力では読むこともかなわない。ちょっと前に自転車仲間のKさんがフランス・スペインの自転車旅行に出かけたのだが,Kさんの準備万端の姿勢は恐れ入るものだ。スペイン語についでフランス語を数年にわたり学び,事前に地図の翻訳もしたそうだ。しかし,この旅の途中でKさんのメールを読むと,それだけの準備にも拘わらず道をロストすることもしばしばの状態だ。我々の旅はテキトーなもんだから道をロストするのもむべなるかなである。気にしない,気にしない。

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それでもようやく高台にフリートベルク Friedbergの街が見えてきて,激坂を登ってマリエン広場 Marienplatzの市庁舎内のインフォメーションに到着した。10㎞そこそこの距離だが9時半になっていた。街は3年に一度のお祭りの支度と道路工事で雑然としていた。フリートベルクは三十年戦争では壊滅したが第1次・第2次世界大戦では大きな損害を受けなかった。

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ヤコブ教会 St. Jakobを見学してみると葬儀の最中だ。そっと抜け出して旧市街を歩く。

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清潔な街並み,図書館,水道塔を眺めながらフリートベルク城に向かう。

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フリートベルク城 Schloss Friedberg(ヴィッテルスバッハ城 Wittelsbacher Schloss)に行っては見たものの内部の博物館とともに見学はパスした。

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フリートベルクを発って6㎞ほど走ったあたりにクー湖 Kuhseeがあった。そこで一休みして出来合いのソフトクリームを食べる。店主と話している人が連れていたシェパードに手を出してみたら「ウ〜,ワン」と吠えられた。良い子は大人しくしているイヌには手を出さないように。ソフトクリームを眺めながら湖を見ていると,この気温にも拘わらず泳いでいる婦人がいた。我々はよほど寒がりなんだろうか?

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クー湖の端でレヒ川のダムの上を渡る。森の中の砂利道を走り「えっ,こんな自転車道? そこまでしなくても」と驚くような獣道を抜けると滔々と流れるレヒ川に沿う気持ちの良い自転車道を走ることになる。森の中の道も旅のここらの辺りでは飽きてきた。自転車の旅の当初はこのような森のコースは爽快で気持ちよかったが,この頃は回りの視界が効かず退屈になってきた。黙々と森の中の自転車道をさらに進むと,地図には番号でStaustube 21のように示されている,貯水池をいくつか過ぎる。レヒ川には野暮な堤防がないので河川氾濫防止の措置だろうか。

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自転車道はレヒ川を離れ畑の中を走る。途中の納屋のベンチでお昼にしようかと止まったが,ブヨが刺しにくるので撤退して進むことに。畑の中の自転車道も麦畑と菜の花畑ばかりで代わり映えがしなくなってきた。たまにポピーが混じっていたりするとアクセントになる。

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13時にプリットリヒンク Prittrichingに入ったところでお昼を食べた。

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さらにレヒ川に沿って南下していくつかの貯水池を通り過ぎて走る。その間には数人が入ったら満員になるような可愛い教会,村へと一直線に延びる畑の道を爽やかな空気の中を進んでいった。畑の向こうに教会の尖塔が見えてくると,ちょっとウキウキ気分になる。

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カウフェリンク Kauferingで二叉に分かれるロマンチック街道自転車道をレヒ川沿いの西ルートを通り,ザンダウアー門 Sandauer Torをくぐってランツベルク・アム・レヒに着いたのは15時だった。ランツベルク Landsberg am Lechは第2次世界大戦の負のイメージがつきまとう。ヒトラーがランツベルク刑務所で「我が闘争」を執筆し,戦時中はヒトラーユーゲントの中心地であったり,周辺のユダヤ人強制収容所とその司令部があった,などだ。

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中央広場 Hauptplatzは工事中でシンボルのマリア像の噴水 Marienbrunnenも涸れている。はぎ取られた市庁舎の入り口の敷石を跨ぎながらインフォメーションで市街図をゲットする。宿探しで焦ったり,まごつかないようにとカフェーでおやつを食べながら市街図で個人宿の当たりをつける。

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バイクは広場に停めておいて,まず,旧市街の教区教会 Stadtpfarrkircheの近くの個人宿を訪ねるが,満員と断られる。次は中央広場のシュマルツ塔 Schmalzturmから延びる旧ブルク通り Alte Burgstraßeの個人宿を探した。番地を頼りに,街の人に尋ねながら急坂の通りを探していくと街の入り口のバイエル門 Bayertorにまで来てしまった。建物の番地表示をみるとお目当ての個人宿はこの辺りだ。個人宿Zweite Heimatを当たってみるとトイレ・シャワーは共同で朝食無しで€40だというので,ここに決めた。しかし,ここまでバイクで登って来るのはエラく難儀だが,仕方ないか。

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再び中央広場に戻り,バイクは駐輪したままでサイクリングスタイルで街の散歩に出かける。まずは14世紀にレヒ川に設けられたレヒ堰 Lechwehrに行った。ここではレヒ川は轟々と流れている。レヒ川から引いている小川 Mühlbach沿いに歩くと塩蔵 Salystadelが建ち並んでいる。かつてランツベルクは塩の交易所として栄えたようだ。

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Mühlbach沿いのアパートメントのベランダは涼やかだ。家賃も高そう。ベッカー門 Bäckertorから,ランツベルクに乗り込んだ ザンダウアー門 Sandauer Torから中央広場に戻った。

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広場の教区教会(聖母マリア昇天教区教会 Stadtpfarrkirche Mariä Himmelfahrt)に入ってみた。祭壇はハンス・ムルチャー(15世紀前半)作の「ムルチャー・マドンナ」で飾られている。パイプオルガンを飾るピンクの大理石を見たのは初めてかも知れない。16世紀のステンドグラスも神々しい。

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カロリーネン橋 Karolinenbrückeを渡りレヒ川の対岸に行ってみる。レヒ堰の向こうに見えるランツベルクの旧市街は穏やかで第二次世界大戦の負のイメージは払拭されていた。カミさんと「これまで巡ってきたロマンチック街道の景色で一番良いね」と話しながら川岸を歩いていく。と,なにやら武道の野外練習に出会う。そしてちょっと風変わりの19世紀に建てられた母の塔 Mutterturmに行き着く。フーベルト・フォン・ヘルコーマー画伯のアトリエ兼居館だったという。

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塔の先の橋は通行禁止だったのでザンダウアー橋 Sandauer Brückeを渡り,ふたたびザンダウアー門をくぐって中央広場に戻ってきた。19時になっていたので夕食をとることにした。教区教会の近くのイタリアレストランでビール,カルボナーラ,マルゲリータ,サラダを注文した。デュンケルビールは相変わらず旨い。すっかり虜になってしまったようだ。カルボナーラのベーコンはちょっと塩っぱく,そしてマルゲリータには今回もバジルは載っていない。

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広場に戻りバイクを取って宿に向かうが,このAlte Burgstraßeの坂のキツいことったらありゃしない。自分は面白がって漕いで登ったがカミさんは押し歩きだ。個人宿Zwete Heimartはおしゃれなつくりの部屋だ。なんとお姫様ベッドだよ。ベッドの下のガラス張りの床の下を覗くと,何やらの遺跡のようだ。ローマ時代の遺跡かと思ったが,ランツベルクが歴史に登場するのは12世紀前半のようだから,違うかな。今日のシャワーは共同なので洗濯はしなかった。

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12日目(通算25日目 2013年7月5日):ランツベルク アム レヒ Landsberg am Lech 〜 ショーンガウ Schongau(40.74km)

7時に起きて市街中心部 Stadtmitteに降りていってパン屋でサンドイッチとコーヒーの朝食をとる。ドイツのパンの種類は多くて毎朝の食事が楽しい。そしてコーヒーも旨い。食事が終わり件の激坂を上り返して宿に戻る。玄関にパン,ティーパック,湯沸かしが置いてあった。これで簡単な朝食にしても良かったようだ。でもカミさんは,朝一番のコーヒーがないと目覚めなくて一日が始まらない,という。

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身支度を整えて9時にZweite Heimatを出て目の前の街のシンボルのバイエル門 Bayertorを見る。その足で聖十字教会 Heilich Kreuz Kircheに立ち寄るがまだオープンしていなかった。

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ロマンチック街道自転車道はランツベルクからショーンガウまで東と西のコースに分かれている。レヒ川の近くを走る東コースをとることにする。川沿いは砂利道だが固く締まっていて走りにくくはない。畑に入るとアスファルトの道となって楽に走れる。小一時間でGrüß Gott(こんにちは)の看板に迎えられてシュタツゥル Stadlに入る。北ドイツではGuten Morgen !とかGuten Tag!とサイクリストや街の人々と挨拶をしていたのだが,南ドイツではGrüß Gott !と挨拶するのだ。だが,圧倒的にGuten Morgen (あるいは単にMorgen) やGuten Tagの挨拶だ。通り過ぎる教会はこのような小さな村でも立派だ。

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隣村のヴィルガーツホーフェン Vilgertshofenの教会はもっと大きい。空模様が少し怪しくなってくるころヴォルフベルク Wolfberg村の教会を通り過ぎる。小さな村では人々にも出会う機会は少なく,写真を撮るのは教会ばかりだ。11時半になって,とうとう雨が降ってきたので雨支度をする。

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12時過ぎに着いた街は,看板によると,ホーエンフルヒ Hohenfurchらしい。教会はホーエンフルヒ教会(マリア被昇天教区教会 Katholische Pfarrkirche St. Mariä Himmelfahrt) だ。中を拝観してみると,天井のフレスコ画も立派なたいそうな教会だった。

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教会からロマンチック街道自転車道を先に進むと国道B17のそばに市庁舎があった。観光ガイドブックにもホーヘンフルヒの記述は少ないが,市庁舎のインフォメーションにあったパンフレットはなかなか力が入っている。

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今日はランチの準備はしてないのでそろそろお腹が空いてきた。この頃には雨も上がっていた。13時にもなったのでショーンガウの郊外にマクドナルドを見つけて立ち寄った。隣の席では小父さんがマットを床に敷いてイヌに餌をやっている。日本じゃカフェドッグなんておしゃれの店があるが,ここドイツではカフェでもレストランでも鉄道でもイヌの立ち入りに制限はない。だって,家族だから当然じゃん。

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ショーンガウへの道を歩道を走って行くと工事中の側道のために通行禁止になった。反対車線に渡る横断歩道はかなり戻らなくてはならない。戻ろうかと思っていたらカミさんが「行っちゃえ」とアスファルト舗装をしたばかりの側道を渡ってしまった。と,向こうで工事中の親父さんがなにやら怒鳴っている。慌てて渡り終えて一目散に走った。アスファルト舗装に轍を残してきちゃったかもしれない。ゴメンナサイ。

またまた急な坂をのぼって城壁の門をくぐってショーンガウ Schongauのマリエン広場 Marienplatzに入った。市庁舎は目抜き通りにあった。インフォメーションで宿探し作戦会議を開いて検討する。疲れて頭も回らないので係の女性に個人宿を紹介してくれないか依頼する。何度か電話で問い合わせてくれて郊外の個人宿を紹介してくれた。この親切さはとてもありがたい。インフォメーションでもらった英語のバンプレットで目に付いたのは,1589-92年にここで63人の女性が魔女の烙印を押されて処刑された,ということだ。

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目抜き通りのMünzstraßeから城門をぬけて旧市街の外に出て紹介された個人宿 Schwartzを見つけた。部屋の外は家人の工房になっているようだ。その向こうは庭があって子どもたちがブランコで遊んでいた。昨日は洗濯ができなかったので今日は多めの量だ。終わってから街の散歩に出かけた。

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ミュンツ通りは路駐のクルマが多い。マリエン広場には聖母マリア像が立っていて,その向こうにはかつては市庁舎や倉庫だったバレンハウス Ballenhausだ。階段状になった切り妻屋根と壁面の黄色い窓枠が眼を引く。マリエン広場には屋台やテントが設えてある。どうやら今日はお祭りのようだ。まだ14時なのでもうちょっと街を散歩して時間を潰せばお祭りに参加できるだろう。

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マリア被昇天教区教会 Stadtpfarrkirche St. Mariä Himmelfahrt に入ってみる。旅もこの頃になると,申し訳ないが,どの教会も同じに見えてくる。恐らく後になって写真を見たらどこかも分からないだろう。信仰心がないとこんなもんだろうか。

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旧市街を取り囲む城壁に上がってみる。突き当たって降りた庭がハイリッヒ・ガイスト教会 Heilig-Geist-Kircheの修道院の庭だった。

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カッセル塔 Kasselturmと市壁をみて警察官吏の塔 Polizeidienerturmからマリエン広場に戻った。

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17時過ぎに広場に戻ると,そろそろお祭り気分が高まってきている。舞台のバンドはまだチューニングの最中だ。日本の縁日と同じような出店もある。ヴァイツェンビールに小エビの天ぷらと肉をナンで挟んだようなものを食べる。ビールジョッキや料理皿はブラスチックや紙製品ではなく,本物のガラス製品,磁器を使っている。で,それぞれ€2づつ上乗せして,そのしるしにプラスチックコインを発行するシステムだ。飲食し終わってグラスや食器とプラスチックのチップを持って行くと保証金を返却してくれた。さすがにドイツはエコが徹底しています。

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2時間ほど遊んで宿に帰る途中の薬局に寄ってカミさんがインターネットの記事で見たフランスのシミ取り美白化粧品があるか聞いてみた。iPhoneの画面を見せながら店主に聞くと,パソコンで調べてくれたが,入荷は明日になるとのことだった。残念ながらそれはかなわないので,この旅の先のより大きな薬局で探すことにした。

宿に帰って明日からの予定を練り直した。この先の日程で一日スペアーを設けたのでそれをどう使おうかという話しだ。フュッセンに連泊してフォルゲン湖を周遊するのも良いが,すべては宿が取れたらの話だ。

この夜,またしても内ももの筋肉が痙攣して脂汗を流す羽目になった。そろそろ疲れも溜まってきたので,登りではローギアに切り替えて走らなきゃだめだ。途中の雨も長く続かなくて幸いだった。雨のアップダウンは嫌なものだからね。

13日目(通算26日目 2013年7月6日):ショーンガウ Schongau 〜 ブヒンク Buching(59.66km)

8時20分に朝食をとる。今朝のカミさんは何かノリノリだ。ランチ用のサンドイッチをゲットするがコーヒーは量が多くなくてその場で飲んでしまった。食後の荷物作りはカミさんの指示で衣類圧縮袋に着替えたものを詰める。これがなかなかの優れもので,雨にも大丈夫でパニアーがすっきりと整理される。9時40分に個人宿Schwartzをスタートする。

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鉄道に沿ってレヒ川を渡って工場に迷い込んでしまう。どうやらロマンチック街道ハイキングコースの標識と間違ってしまったようだ。ハイキングコースの標識はブルーで小さめだが,自転車道路の方はグリーンで大きい。bikelineの地図のイントロ部にはグリーンの標識の説明が書いてあるようだが読み飛ばしていた。グリーンの自転車道の標識を見つけてアップダウンのコースを進む。苦労して登った坂の見返りは快適なダウンヒルだ。

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途中で分かれ道を直進してしまいパイティンクへの道をロストして戻る羽目に。分かれ道まで戻ると道路の反対側に標識があった。カミさんと分かれ道は要注意の認識を新たに確認し合ってパイティンクへむかう。パイティンク Peitingの街に入ったのは10時40分だが,この時間に街は人々で賑わっている。マイバウム(メイポール)の下にはクラッシックカーが並べられている。レースでもあるのかそれともデモンストレーションか。

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教会に人々が入っていき何やら騒々しいので覗いてみた。お祭りの開会式か出陣式といったムードに溢れている。

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民族衣装をまとった子どもたちだ。クラッシックカーの眺めていたら「何か聞きたいか」と言われ「これどれくらいの歳なの」と聞いてみる。「俺より二歳年上」だって。家屋の作りもスイスで見たようなもので,ベランダは花で飾られている。アルプスが近くなったような感じだ。

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パイティンクからロマンチック街道自転車道はふたたび東西のコースに分かれる。予定では西コースを行くつもりだったが,東コースに代える。東コースでロッテンブーフとヴィルトシュタイクを通過して,ヴィルトシュタイクから自動車道で西コースのシュタインガーデンに回ってヴィース教会にいくことにした。観光ガイドブックの全都市を制覇するにはこう走ると行けそうだよ,とカミさんに説明して出発した。

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パイティンクをからしばらくはロマンチック街道の自動車道に並行して走った。が,アウトバーンを越えてしばらく行くと激坂が待っていた。カミさんは押し歩きだ。フォクルヘルト Voglherdに入るとロッテンブーフの標識が見えてきた。そして畑の向こうに教会の尖塔が見えてきた。

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教会がはっきり見えるようになり,自動車道の脇の修道院をとおり門をくぐるとロッテンブーフ Rottenbuchの街中だ。突き当たりの市庁舎に行くが土曜日と言うことなのか,お昼時と言うことなのか締まっている。

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街の入り口にレストランがあったのでランチを食べる。小さいビールを注文し,ウィンナソーセージとラザニア風の皿を注文する。爽やかな空気の中での飲食はとても気持ちが良い。気分的にとても豊かな食事だ。

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満腹になったところで僧院付属のマリア生誕教会 Kirche Mariä Geburtを見学する。ロココ様式というのだそうがピンクがかった天井のフレスコ画は素晴らしい。

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教会から出てくると何台ものクルマがやって来て着飾った老若男女が降りてきた。どうやら13時から結婚式があるらしい。待つこと暫し,ようやく花婿のところに花嫁がやって来た。神父さんの音頭で式が始まった。我々はそっと覗いて,お幸せにと呟きながらロッテンブーフを後にした。

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市庁舎の後ろへと標識が案内するが,どうもMTBでないと走れないようなコースだ。そうだった,青い小さな標識はハイキングコースだった。入ってきたところに戻るとちゃんとグリーンの標識があった。地図を見るとここから先はアップダウンの連続だ。カミさんにそのことを告げて覚悟を促す。前方には前アルプスの山並みが見えてきて,カミさんも自分も「何だ坂,こんな坂」と元気を注入して畑の登りコースを進んでいった。田園の向こうの村のそのまた向こうにあった山並みが次第に近づいてくる。登りの苦しさを忘れさせてくれる光景だ。

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気持ちよいダウンヒルを楽しんでいるとヴィルトシュタイク Wildsteigの看板が出てきた。しかし街は小さく,ヤコブ教会の下をスルーしてそのまま進む。道は下り基調でルンルン気分でくだり,当初予定した自動車道をシュタインガーデンに向かうコースを変更してそのままヴィースへ向かう。

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みたび砂利道の激坂を攻略していくと眼下に教会が見えてきて,辺りには大型バスが何台も止まっている。世界遺産のヴィース教会に着いたようだ。時刻は15時だった。まずは小銭を用意してトイレに突入する。ステンレス製のトイレは日本の駅のトイレのように仕切りがないスタイルだ。今回の旅で初めてお目に掛かるトイレだ。珍しくて一枚パチリ。

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中国語や日本語が飛び交う東洋人に混じりヴィース教会 Wieskircheに入っていく。ついさっき見てきたロッテンブーフの教会とそれほど違いを感じないのはこの喧噪のせいだろうか。とにかく世界遺産と言うことでありがたく(?!)見学する。ここでも何人かの日本人と言葉を交わす。自転車持参の一ヶ月の旅行と話すと一様に驚きの声が上がる。去年の我々のベネルクス三国・ドイツのツァーではオランダのホテルで出発していく日本人二人組を見送った。そのときは国内の自転車ツーリングを何度か体験しているのでそれほど驚きはしなかったが…。やはり,外国を自転車で個人旅行するというのは,自転車=ママチャリと見ている人には驚きなんだろうなぁ。

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バス停わきのカフェで一服して宿から持ってきたサンドイッチを食べる。

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予定ではパイティンクから西コースを走ってシュタインガーデンで泊まるつもりだったが,ヴィース教会からシュタインガーデンへは西コースを戻らなければならない。ヴィース教会で東と西のコースが合流したのでシュタインガーデンはパスして南下し,ハルプレヒ辺りで宿を探すことにした。道端のお姉さんに道を聞くと,この先の交差点に標識がある,と言ったと理解して進む。果たして交差点にはハルプレヒとシュタインガーデンの道しるべがあり,シュタインガーデンは直ぐ近くの距離を示している。順序が違ったがシュタインガーデンに言ってみることに,またもや予定を変更だ。

今日,何度目かのヒルクライムを制してシュタインガーデン Steigardenに着いたのは16時15分だった。ヴェルフェンミュンスター Welfenmünsterの中を見学する。ヴィース教会をみた後だがこちらの教会も遜色はない。

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時間的には余裕があるのでシュタインガーデンでは泊まらずにハルプレヒを目指した。ロマンチック街道自転車道を示す標識に従って出発した。カミさんに「またヴィース教会に戻るようになるよ。ヒルクライムしなくちゃならないけど。」と話すが「大丈夫」と返ってきた。まぁ,「もうダメ」って言わなかったので,行ってみるか。

しかし,途中でヴィース教会とハルプレヒの分岐を示した標識に出会った。迷わずハルプレヒへのコースを選んだ。ロードレーサーに乗った男女に追い抜かれるが,登りになると女性は遅れ男性はさっさと行ってしまう。こちらはカミさんのスローペースに合わせてなるべく離れないように走る。

やがてハルプレヒ Halblechの街に入り個人宿を二軒当たってみたが満室と断られる。「ここら辺りにはもう個人宿はないので自動車道路を走ってブーヒンクに行ってみたらどうか」と女将さんに勧められた,と理解してそっちに向かう。道路標識はハルプレヒが終わりこの先13㎞でフュッセンにに入ると示している。ちょっと戻ったところにあったホテルは満室の看板を出している。時刻は18時だ。再び先に進んで,交差点に掲げられているペンション,貸し別荘の案内を頼りに数件に当たってみたがいずれも満室だった。そうだ,今日は土曜日だよ。

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カミさんと手分けして近所の宿を探していたら,カミさんが「Zimmerって書いてある看板があるよ」って呼んでる。近くを探してみると個人宿 Haus Singerが見つかった。ベルを押してみるとご主人が出てきて「妻に聞いてみる」という。夫人が出てきて€60と言うので一も二もなくオーケーした。ご夫妻ともドイツ語しか話せないが何とかレストランの場所,玄関の鍵,朝食の時間などを知ることが出来た。部屋は新しく,ベランダに出ると庭があり小川が流れていた。カミさんのお手柄で今宵の宿も確保できた。シャワーを浴びて洗濯を済ませて,さっき満室の看板の出ていたホテルで夕食をとるため出かけた。

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腕組みしながら,宿の取れた喜びを分かち合いながら,黄金色に輝く山に架かった雲を愛でながら降りて行く。宿探しを始める時に見た道路標識にフュッセンまで13kmとあったことで旅の終点が近いことを知ってちょっと興奮しているのかも知れない。

先ほどの道路の交差点にあった大きな家は宿泊客のインフォメーションだったことにこの時に気付いた。GästinformationをGastertinfomationと読み間違えて,gasterがラテン語の胃であることから,食事処案内とを勘違いしていたのだ。時刻が遅くなってちょっと焦っていて,その上になぜか昔のラテン語が突如として脳裏に蘇った故の間違いだ。

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アーベントロート Abendrot(夕焼け)に映えるホテルの庭で,まずデュンケルビールで乾杯だ。今日のデュンケルはコーラ味がしたような。カミさんは海老のサラダを自分はターキーのサラダを注文した。ターキーのサラダはFitness Salatとメニューにあった。これらのメイン料理には大満足した。沈みゆく夕陽を見ながら飲むコーヒーは何とも言えない贅沢な味だった。

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カミさんは今日は何度もヒルクライムを繰り返して,本当に疲れただろう。しかし弱音を全く吐かないところを見るとこの自転車旅に全く満足していることが分かる。地図によるとロマンチック街道では今日のコースが一番の難所だったようだ。自分がトレーニングコースにしている筑波山系の不動峠(距離4km, 平均勾配6.3%)を今日は3,4本やったのと同じくらいだ。

遠くの教会の尖塔に突き刺さるように落ちる夕陽を見ながら宿に戻った。と,宿の前の通りで二匹のウサギがじゃれ合っている。白いウサギだから近所で飼っているウサギだろうな。灰茶色のウサギは野生のウサギだろうか。穏やかな夕暮れだ。

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14日目(通算27日目 2013年7月7日):ブヒンク Buching 〜 シュヴァンガウ Schwangau(15.14km)

7時に起きた。夕べのコーヒーが効いてらしく睡眠不足で頭はボーっとしている。カミさんも同じだという。目を覚ますために散歩にでかける。辺りは霧に包まれている。道路脇に何やらオブジェが展示されている。そのオブジェの工房の前を歩く。農家の軒下には乱杭の飾りのようなものがあったり,立派な鹿の頭骨が飾ってある。

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45分の散歩を終えて朝食だ。ダイニングルームも木をふんだんに使っている。リタイヤして夫妻で個人宿を新築したんじゃない,とカミさんの評価が入る。今日はランチを準備するほど大量の朝食ではなかった。9時に宿をスタートした。庭には日本の灯籠が置かれているではないか。カミさんを交えて写真を撮り,帰国したら送ることを約束する。

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自動車道を横断しロマンチック街道自転車道を走る。まだ霧は晴れていない。再び自動車道を渡り返すと畑の中にポツンと建つ教会がうっすらと見えてきた。コロマン教会 St.Coloman Kircheだ。中を見られる時間帯は14:30〜16:30と書いてある。窓から中を覗いただけでホーエンシュヴァンガウに向かった。霧のなかにうっすらとノイシュバンシュタイン城とホーエンシュヴァンガウ城が見える。とうとうロマンチック街道自転車道の終点が見えてきた。

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10時にホーエンシュヴァンガウ Hohenschwangauに着いた。お城を見学するにはチケットセンターで予約しなければならない。今日はノイシュバンシュタイン城とホーエンシュヴァンガウ城を一緒に見学するには無理そうなのでとにかくノイシュバンシュタイン城を先に見ることにして行列に並んだ。買えたノイシュバンシュタイン城のチケットの入場時間は13時40分で日本語のオーディオガイド付きだ。オーディオガイドをチケットセンターで貸し出しするのかと思ったら,何も渡してくれない。回りを見渡してもチケットだけを受けとっている。まぁ,入場すれば分かるだろう。入場までの時間はたっぷりあるのでまずランチだ。 小さなピルスビールを頼み,カミさんはサラダ,自分はソーセージのステーキのような皿を注文した。

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地球の歩き方・南ドイツや観光ガイドブックにはノイシュバンシュタイン城の全景を見るにはマリエン橋が良い,とある。城へはバスや馬車の手段があるが我々には自転車という手(足?)がある。しかし,登りで押し歩く醜態は観光客に見られたくないので,徒歩で行くことにした。あちこちでニコンやキャノンの一眼レフでパチパチやっている観光客は,言葉を聞けば,中国人だ。自分もつられてお城が見えたところでパチリ。下界をみればフォルッゲン湖が畑の向こうに横たわっている。

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お城の下まで来て,まずはトイレタイムだ。下からのお城の姿をまたまたパチリ。お城の下をぐるっと回ってマリエン橋に行ってみる。ここまでも結構な登りだ。

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マリエン橋 Marienbrückeは大混雑だ。峡谷の向こうにお城がそびえ立つ。もみくちゃになりながらお約束の,ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったという,ノイシュバンシュタイン城 Schloss Neuschwansteinの全景をカメラに収める。橋の下も絶景だ。

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入場の時間が近づいてきたのでお城の中庭に入る。13時40分になって入場する。中でチケットを見せると日本語にセットしたオーディオガイドが貸し与えられた。例によって城の内部は撮影禁止となっている。このホームページで内部が見られる。玉座の広間,歌人の広間など豪華絢爛としか形容するほかない内部のつくりだ。それにしてもルートヴィッヒ二世ってお城の中に,ワグナーに傾倒するあまり,洞窟をつくっちゃったりしてどうかしているヨ,危ないネェ,ってのが感想だ。

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さて今宵の宿はどうしようか。予定したホテルガルニ Schlossblickには満員と断られた。他のホテルは高いのでシュヴァンガウに行ってみる。途中のペンションを訪ねたが不在で断念。街の市庁舎の前の通りにガストホフ Zur Postを見つける。交渉してみると€80だというので,ここで二泊することにした。チェックイン時に街の施設の割引券をくれた。ノイシュバンシュタイン城の入場券も割引されると言うがすでに見終わっている。陽はまだ高く,時刻は14時だ。シャワーを浴びて洗濯を済ませる。

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日課の洗濯を終えて街を散歩しながらスーパーマーケットに行った。裏通りを牛が行列をつくって家路につく。頭上をみると,ヴェーザー川自転車道の旅で悩まされた綿毛の元凶の樹だ。この綿毛が雪のように降ってきて眼に入って痒くて堪らない。

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ざらご寺さんのホームページにあったスーパーマーケットはSPARからREWEに代わっていた。日曜日なのにスーパーマーケットが開いているとは珍しい。やはり,ここが大きな観光地と保養地になっているからだろう。それともREWEの商売上の作戦か。ここで水,ビール,サラダ,炒め肉じゃが,サンドイッチを買ってホテルの部屋で夕餉とした。寝不足でまだ頭がすっきりしないので早々に寝入った。

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15日目(通算28日目 2013年7月8日):フォルゲン湖周回 Forrggenseerunde(47.13km)

月曜日はこのホテルはお休みだということで8時半という遅い時間の朝食だ。頭もすっきりしたので食事も旨い。〆にはフルーツポンチにイチゴヨーグルトを載せて食べた。

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ロマンチック街道自転車道のゴールのフュッセンは目と鼻の先だが,今日は一日この辺りで遊ぶことにした。フォルッゲン湖,ホーエンシュヴァンガウ城を回ってみよう。10時過ぎに,パニアーを置いて身軽になってホテルをスタートした。フォルッゲン湖の途中には温泉施設のクリスタルテルメ Königliche Kristalltherme Schwangauがある。水着を持っていればのんびりと旅の疲れを癒やせたんだが。まず目指すはフォルッゲン湖一周Foruggenseerunde 32kmのサイクリングだ。自転車道のほかにロマンチック街道のハイキングコースにもなっている。

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ヴァルテンホーフェン Waltenhofenの教会でフォルッゲン湖が見える。そこから小さなアップダウンを繰り返して牧草地の中や湖畔のコースを走る。牧草地にあっ牧草を丸める装置の格好が面白い。

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湖を半周もしたところで出会ったKioskがオープンするのを待ってトイレタイムだ。どこの宿の朝食だろうか分からないが,持ってきたリンゴを囓って一休み。もう夏休みに入ったのか子どもたちのサイクリストも爺さん・婆さんのサイクリストたちに混じって見かける。爺さん・婆さんたちは電動アシストの自転車だ。これを使えばアップダウンのあるロマンチック街道自転車道も楽々だ。歳をとってもこんなスタイルでサイクリングをしているドイツ人をいずれは見習おうか。

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湖を見ながら気持ちの良い陽気の中を走って行く。

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フュッセンの街に近くなってきて湖畔のレストランがあったのでランチを取ることにした。ビールを注文すると,お隣の女性グループのサイクリストもビールで乾杯している。湖の写真を撮っていると,ツーショットを撮ってくれるという。注文した料理はイェーガー風シュニツェルと茹でブタ肉のソース掛けだ。

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フォルッゲン湖の南端はフュッセンの街に突き刺さっている。その辺りを走るとフュッセンのホーエス城が見えてくる。でもまだフュッセンのゴールじゃないヨ,とカミさんに話す。

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フォルッゲン湖一周サイクリングを終えてシュヴァンガウに戻ってきた。カミさんは地図を覗き込んで,ロープウェイでテーゲルベルク山に登って見たいという。この時間ならコロマン教会が開いていて中を見られるのだが,そこは口に出さず我慢する。昨日の割引券を読むと,市庁舎のインフォメーションでロープウェイの割引券が買えるとある。さっそく割引券を買って山の麓にバイクを走らせる。

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ロープウェイに乗るときもツーショットを撮ってもらった。観光地にくるとみんな親切にしてくれるね。眼下のノイシュバンシュタイン城や今しがた走ってきたフォルッゲン湖やフュッセンの街が箱庭のようだ。やがて1720mの山頂駅 Tegelberg Bergstationに到着した。

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ハングライダーの発進台があったが誰も飛び立つ様子もないようだ。ちょっと歩くと辺りは高山植物が一杯のお花畑だ。スイスを思い出す。花の名前は思い出せないが,分かるのは袋のような花のシラタマソウくらいかな。

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図鑑を調べるのもしんどいが,カミさんと自分が分かったのはコバイケイソウかな。

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ロープウェイのレストランでお茶する。下界にはいくつものハイキングコースがある。しっかりした足拵えをしないと無理なコースとあるのでハイキングはしなかった。

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820mの麓駅 Tegelberg Talstationに戻り,バイクで再びホーエンシュヴァンガウに向かう。目指すはホーエンシュヴァンガウ城の見学だ。チケットセンターで並んでいると日本人の婦人に話しかけれらた。すでに25日もドイツ国内を旅行しているという。持っている地球の歩き方には沢山の付箋がつけられている。ご主人の方は委細はこの婦人にお任せして荷物番をしているという。今日はこの時間だから明日のチケットを予約すれば並ばずに済むことなどをアドヴァイスする。iPad片手に翌日のホテルを検索して予約しながらの鉄道旅行という。ここには2泊してお城を見てツークシュピッツェまで行くそうだ。そう言えば,ドイツの最高峰のツークシュピッツェはここからほど遠くないはずだ。そんなことをあれこれ話して我々は17時40分の入場チケットを買った。ここでもホテルの宿泊者割引が使えた。

ホーエンシュヴァンガウ城 Schloss Hohenschwangauの見学者は我々の他には2,3人だけだった。ここでも日本語のオーディオガイドが貸し出されての城内の見学だった。ホーエンシュヴァンガウ城はルートヴィッヒ2世が幼年時代を過ごした城で,父マクシミリアン2世が再建したのでノイシュバンシュタイン城のようにルートヴィッヒ2世のカラーは無い。ノイシュバンシュタイン城よりも家具・調度品が素晴らしかったがここも例によって城内は撮影禁止だった。城内の各部屋の様子はこのホームページで垣間見ることが出来る。

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ホーエンシュヴァンガウから昨日のスーパーマーケットに行くときに見逃したコロマン教会のショットを撮ろうと走り回った。と,コロマン教会を挟んで左にノイシュバンシュタイン城,右にホーエンシュヴァンガウ城が画面に入るショットを撮ることができた。戻ってくるのがあまり遅いのでカミさんは心配したと言うけど,そんなに遠くまで行ってないと思うが。

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スーパーマーケットREWEで夕食の買い物をした。,サンドイッチ売り場のお姉さんは我々を覚えていてくれてニッコリして「Guten Abent !」と挨拶し合った。こちらのスーパーマーケットはベルトコンベアに買ったものを載せるのだが,そのときに自分の品物を明確にするために区切り棒を置く。日本のように買ったものはバスケットに入れてくれないので,品物はベルトコンベアから直ぐに袋に入れなきゃならないのだ。ホテルに戻り,ビール,サラダ,サンドイッチの夕食を食べたのは20時とのんびりした時刻だった。ビールは昨日とは違うものを飲んだが,種類が多すぎて困ってしまうくらいだ。

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21時半に夕焼けに染まるシュバンガウの散歩に出かけた。ノイシュバンシュタイン城のライトアップを見るためだ。しかし陽が落ちてもノイシュバンシュタイン城はライトアップされなかった。一方のホーエンシュヴァンガウ城はライトアップされて夜に浮かび上がった。

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16日目(通算29日目 2013年7月9日):シュヴァンガウ Schwangau 〜 フュッセン Füssen(14.93km)

今朝はホテルの通常営業日なので朝食は7時半からだ。しっかりと食べてサンドイッチもゲットした。隣のテーブルで自前のポットにコーヒーを頼んでいる客を見習ってこちらもお願いしてみたら,あっさりとオーケーしてもらえた。これまでも,もうちょっと積極的に自己主張すれば良かったのかなと悔やまれる。

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9時15分にホテルを出発した。bikelineの地図をめくり返すと最後のページだ。目指すはロマンチック街道自転車道のゴールのフュッセンだ。

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30分であっという間にフュッセン駅 Füssen Bahnhofに到着した。駅舎の前にはロマンチック街道自転車道の終点の標識があった。ヴュルツブルクの駅前をスタートして15日間かけてロマンチック街道自転車道を走ったことになる。しかし,昨日すでにフュッセンの街に入っているので,大きな感激もない。旅のフィナーレを飾るにふさわしい場所には後で行ってみよう。

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とにかく宿を確保しようと,いくつもの噴水が館前にあるインフォメーションに行ってみた。ロマンチック街道最大の観光地ともあってホテルは星印の付いた高級ホテルばっかりだ。ペンションなどはすでに通り越してきた郊外に僅かしか無い。落ち着いて,以前にインフォメーションでもらった宿のリストを見るとプライベートなホステルがでていた。

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そのホステルは街中にあって魅力的だがWCとシャワーが共通だという。郊外にも系列のホステルがあるのでそこに電話で連絡してもらったら個室があるという。そこを訪ねる途中で地図を見ていたら,またまた「どうしたのか」と聞かれる。「von Frezbergstraßeにいきたいのだが」と答えると「ここは詳しくないから」といって通りかかった人に聞いてくれた。どうやら旅行者のようだ。とにかく困っていそうな我々のような旅行者をみかけたら声を掛ける,というのがドイツ人にとっては当然のことらしい。

件のホステル House L.A-Hostelを見つけて,まだ朝の始末で忙しく働いている清楚なお姉さんに交渉してみた。すると€59というのでオーケーした。別の部屋には中国人の子ども連れの一家が泊まるようだ。バイクは後で納屋に入れてくれとのことで,フュッセンの市街図を示してあれこれと観光スポットを親切丁寧に紹介してくれた。バイクでも容易に行けるところにオーストリアの国境があるという。これは行ってみなくっちゃ。

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パニアーを部屋に置いて出かけようとしたときにカミさんのパニアーが壊れていることに気が付いた。30回もキャリヤーから取り外しを繰り返しただけなのにフックが取れてしまったのだ。よく見るとフックは小さなロッドボタンでパニアーに取り付けられている。こんなヤワな細工では壊れるのも当然だ。まぁバイクの付属品として付いてきた安物だから仕方ないといえばそれまでだ。しかし,帰国までの数日まだこれを使わなければならないのでフックの代わりに紐でパニアーをキャリヤーに縛り付けるという応急処置をすることにした。

とにかくパニアーの問題が片付いたので身軽になってバイクで街中に戻る。目抜き通りのライヒェン通り Reicehnstraßeを抜けてレヒ川に向かう。川沿いに建つ,鮮やかなロココ式ファサードの聖霊シュピタール教会 Heilig-Geist-Spitalkircheの裏道を進むと見慣れたロマンチック街道自転車道の標識が出てきた。あと200mだ。

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教会が見えてきた。フランツィカーナ修道院 Franziskanerklosterに沿ってフランツィカーナ教会(聖シュテファン教会) Franyiskanerkircheに回ると扉を閉ざした門があった。その門の上には「Ende der romantischen Straße」の文字があった。ここがロマンチック街道の終点だ。ハグしたいとこだったがカミさんが嫌がったのでハイタッチに留めた。とうとうロマンチック街道自転車道を走破したのだ。これでカミさんの望みを実現することが出来たのだ。

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ライヒェン通りに戻ってイタリアンレストランで昼食を取った。まずはビールでロマンチック街道自転車道の完走を祝って乾杯だ。そしてメインはパスタとピッツァをとった。

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食後はレヒ川を渡りチロル通り Tiroler Straßeを走ってレヒ段丘 Lechfallを見に行く。レヒ川の水は翡翠色をしていて段丘の下流は峡谷になっている。

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チロル通りをさらに上ると何やらの建物があった。ここがオーストリアとドイツとの国境線らしい。道路を横切るバーもないし,道路に白線が引いてあるわけでもない国境だ。ちょっとオーストリアに入って進むと右にクルマが入っていくところに駐輪場がある。丸太に溝を切ったナチュラルな駐輪具だ。バイクを置いて小屋に行ってみると宙吊りの木道 Baumkronenwegの入り口だった。大人一人€4を払うと手の甲にスタンプを押してくれた。

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宙吊りの木道は回りの木々の梢の高さだ。で, Baumkronenweg(梢の道)というわけだ。長さも高さもけっこうあるので歩くとユラユラ揺れる。途中にはいくつか中継塔がある。下には林間の散歩道やレヒ川沿いの散歩道がみえる。ツリー・アドヴェンチャーコースもあるそうだがこちらはパスだ。終点のレストハウスまでいって戻るときに手の甲のスタンプを見せて再入場する。

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梢の道で十分に森林浴をしてふたたびフュッセンの街に戻る。カミさんも聖マンク教区教会 Stadtpharrkirche St. Mangとフュッセン市博物館 Museum der Stadt Füsseの見学はパスしようと言うのでホーエス城に向かう。

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ちょっと迷子になりながら遠回りをしてホーエス城 Hohes Schlossに入る。庭に入って城壁に描かれただまし絵を楽しむ。創建当時(14〜15世紀)から描かれているのだろうか。

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城内は州立美術館 Staatsgaerieとなっていたが,展示されている絵画はちょっと寂しく,自分にはどうもよく分からない。

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城内からいくつかの塔に登れるので,自分だけ見に行く。カミさんはもう塔に登るのは御免らしい。フュッセンの街並みの向こうにフォルッゲン湖が見える。

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ライヒェン通りに戻り,薬局で孫たちへのお土産とグミとキャンデーを買う。食料品店で夕食の買い物をした。

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フュッセン駅に戻って明日の列車の切符を買った。L.A-HostelでWi-Fiが繋がったので予め調べておいた列車を窓口で示す。11時05分にフュッセン駅を出発してアウクスブル中央駅,トロイヒトリンゲン,ヴュルツブルク中央駅と3駅で乗り換えてフランクフルト中央駅にむかう列車だ。二人で€52の乗車券と€10の自転車券を受け取った。乗車券には自分のサインをしておけ,と言われた。ネットで調べておいた運賃よりもずいぶん安く買えたところを見ると,この切符もヴェーザー川自転車道の旅の始めに利用したフランクフルト中央駅からカッセルまでの切符と同様に州内の割引乗車券のようだ。

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宿に戻って,この旅の最後の洗濯をした。その後は買ってきた食材で夕食をとる。中国人の家族が調理室に出入りして騒がしく夕食をつくっている。そのうちに静かになるだろう。

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17日目(通算30日目 2013年7月10日):フュッセン Füssen Frankfurt am Main(2.26km)

6時45分にあり合わせのもので朝食をとる。その後で今日の鉄道切符を確かめるとちょっとマズイことに気が付いた。トロイヒトリンゲン駅での乗り換え時間が5分しかないのである。荷物を積んだバイクで隣のホームへの移動は5分では無理かも知れない。iPhoneをネットにつないでドイツ鉄道のホームページで別のダイヤを調べてみたら9時05分の列車が余裕を持って接続しているとわかった。手早く身支度を済ませフュッセン駅に行った。

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駅の窓口は閉まっていたのでホームの自販機で時刻表を打ち出す。もう慣れたものだ。定刻に入ってきた列車にバイクを積み込みフュッセンとロマンチック街道とお別れした。

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アウクスブルク中央駅での乗り換えは同じホーム番号だがSüd(実際にはSÖdと印字されていた)とNordと付いている。南と北ということだがホームはどうなっているのだろうかとちょっと心配した。到着してみると同じホームを南と北に分けて双方向から列車が発着するのだ。線路にもホームの中央辺りでストッパーが置いてある。乗ってきた列車は走ってきた方向に戻っていき,反対側からトロイヒトリンゲンへ向かう列車が入線してきた。こうなっていたのか。

トロイヒトリンゲン Treuchtlingenでは乗り換えにエレベーターが使えた。ホームに行くとすでに列車が待っていたので何の抵抗もなく乗り込んだ。シートに座ると直ぐに発車した。カミさんと「エェ〜」と驚いた。当初の予定ではここでは5分しか乗り換え時間がなかったので列車を変更したのだが,列車が待っていたのでそのことをコロッと忘れてしまったのだ。幸いにも行き先は同じだったから,一本前の列車に乗ったと言うことになる。ヴュルツブルク中央駅の手前の駅で日本人の新婚さん(らしい)カップルが降りようとして間違いに気づき取りやめる光景を見た。カミさんが「中央駅は次ですから慌てることないですヨ」と教えてあげる。ドイツ鉄道の旅もすっかり慣れて他人にアドヴァイスできるようになっていた。ついつい中央駅 Hauptbahnhofを省略しがちなので,似たような駅名には注意しなくてはならない。中央駅で降りるときにこのカップルのほかにもう一人の日本人と話した。半年前にヴュルツブルク大学にドイツ語を学びに留学してきたという。こちらに来てから自転車旅行の日本人には初めてお目に掛かったという。フランクフルト中央駅へは予定していた列車に乗ることになると分かって十分に時間があったのでマクドナルドで一休みした。外はカラッと晴れ渡り少し暑いくらいだ。乾いた喉にコーラが浸み渡る。こんな旨いコーラを飲んだのは初めてかも知れない。2週間ほど前に訪れたヴュルツブルク中央駅を後にして懐かしのフランクフルト中央駅に到着したのは定刻の17時24分だった。ドイツ鉄道(DB),なかなかいいぞ。

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さて,最後の宿探しだ。駅を降りてトラムを渡るとカイザー通り KaiserstraßeのビルにあるHostelの看板が目を引いた。さっそくフロントに行って聞いてみると朝食付きで€49だというので直ちにオーケーした。駅前で便利だが外の喧噪で眠れるかな,それよりも部屋はフロント・ロビーの真下だから足音がよく響くのが気になる。

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バイクをグランドフロアーの別室に保管し,シャワーを浴びて街の見学だ。レーマー広場 Römerbergの方角に向かってカイザー通り Kaiserstraßeを歩きながら近代と中世の混じった建物群を眺める。フランクフルト・アム・マインは第二次世界大戦で市の70%が破壊され,旧市街はほぼ壊滅した。戦後の復興により現在ではドイツの商業・金融の中心地として発展した。高層ビルの大半は銀行や保険会社ということだ。欧州中央銀行からシラー像の広場へと散歩した。

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レーマー広場に方向を変えて歩くと,昨年のツァーで訪れた,見覚えのあるパウルス教会 Paulskircheが見えてきた。広場の回りにはニコライ教会 Nikolaikircheや市庁舎 Römerが建ち並び,大聖堂や正義の女神像もある。しかしカミさんはここを全く思い出せないという。

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ニコライ教会を覗いてみた。ロマンチック街道自転車道の旅であれほど沢山の教会を見た後では大きな感動もない。

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アイゼナール橋 Eiserner Stegを渡ってマイン川を眺める。歴史博物館も堂々としたつくりだ。昨年のツァーではここまでは来なかった,ということはカミさんも覚えているらしい,

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歴史博物館の脇のレストランで夕食をとった。メインは,街に敬意を表してのフランクフルトソーセージだ。その後で大聖堂を回り,昨年のツァーで夕食をとった歴史的レストランの前を通った。が,カミさんはやはり思い出せないらしい。ツァー旅行は短時間であちこちと駆け回るので記憶をインプットする暇もなかったのだろうか?

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カイザー通りに建ち並ぶ高層ビルを眺めながらホステルに帰る途中に「無印良品」の店があった。世界的に有名なんだ。フランクフルト中央駅に立ち寄って,空港への電車 S-Bahn の乗車券の自販機,エレベーターの場所,乗車ホームなどを下見をした。

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今日のフュッセンのホステルからフュッセン駅までの自転車走行を含めて,ロマンチック街道自転車の旅では630.27kmを走った。前半のヴェーザー川自転車道の旅の方が15kmほど長かった。合計1,276.32km ,1ヶ月の旅も終わりだ。お疲れ〜〜。

18日目(通算31日目 2013年7月11日):Frankfurt am Main(0.0km)

階上が騒がしくてちょっと睡眠不足気味で7時に目が覚めた。カイザー通りで朝市が開いていたので冷やかしに降りて行った。ハム・ソーセージ屋,果物屋,花屋,魚屋などの出店を見て回る。カメラを向けると魚屋のオッサンが「写真代は€5だ」と冗談を言ってくる。ドイツ人は冗談は言わないと聞いていたが。

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ホステルの簡素な朝食はやめてカフェで朝食をとる。大きいカップを注文しミルクをたっぷりと入れる。どこで飲んでもドイツのコーヒーは旨い。

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予定している日本への帰国便は20時45分なので見逃したフランクフルトの街を散策する時間はたっぷりとある。ホステルのフロントで交渉してみたら,バイクも荷物もは夕方まで預かってもらえることになった。身軽になって早速に大聖堂 Domを見に行く。新しいパイプオルガンのデザインが新鮮だ。

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引き気味のカミさんを鼓舞して高さ95mの塔 Domturmに上ろうと持ちかける。66mの展望所まで328段のステップを上った。マイン川に沿うフランクフルトの新旧の街並みが眼下に見える。見上げれば塔の先端がまだ30mも続いている。

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塔を降りて昨日のアイゼルナー橋まで足を伸ばしマイン川クルーズをやってみようと言うことに。上り,下りがそれぞれ50分のコースとその両方の100分コースがあった。次の船はグリースハイム水門 Schleuse Griesheimを折り返す便だ。オープンデッキでコーヒーを飲みながらクルーズする。が,両岸の建物の景色もあまり魅力のあるものではない。爽やかな風の中を船はマイン川を下りやがてグリースハイム水門の手間でグル〜〜っと旋回して桟橋に戻った。

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ドイツでの最後のお昼は,地球の歩き方お薦めの,カーリン Cafe Karinでとった。もちろんビールで乾杯した。メインディッシュを注文しようとするが,それでなくとも読めないドイツ語だがここのメニューはさらに手書だ。ウェイトレスさんに読んで説明してもらい,チキン焼きとパスタの昼定食を注文した。

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食後の散策は近くのゲーテハウスと博物館 Goethehaus und Goeth-Museumだ。ゲーテハウスは第2次世界大戦で全壊したが中の家具・調度品は疎開させてあったものだそうだ。グラウンドフロアの食堂やキッチンのクグロフ型の展示が面白い。1階はサロンで2階はゲーテの父の蔵書の部屋,そして3階がファウストを書いた部屋だ。

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歩行者天国で賑わうツァイル Zeilに回ってスーパーマーケットでお土産を探した。カミさんは友達用にとペットボトルから作った買い物袋を大量に買い込んだ。この買い物袋は2年前のスイスのスーパーマーケットで見つけたものと同じで,家では未だに健在で重宝しているものだ。

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預かってもらった荷物とバイクをとりにホステルにもどった。飛行機に載せるバイクの始末があるのでちょっと早めに空港に向かった。フランクフルト中央駅では昨日に下見をしておいたので迷わずスムースにSバーンに乗れた。帰りの便はLufthansaとANAの共同運航便で手続きはANAでしなければならない,とあらかじめ知らされていた。空港駅のホームからターミナル1までは,直通がなく,エレベーターに2回乗った。ターミナル1でANAのカウンターを探すがLufthansaばかりだ。ようやく隅の方にANAのカウンターを見つけた。ここでバイクを輪行袋に収納した。この時に自分のバイクの片方のペダルが固く締まっていて外れない。フォイヒトヴァンゲンでペダルを交換してもらったときにお願いしたにも拘わらず,ミニツールでは外せないほど固くネジを締めすぎたのだ。このペダルはエァーキャップで巻いて保護するしかないようだ。汗を掻きながら梱包を終えて自販機でコーラを飲んでいるうちにカウンターがオープンした。日本のツァー客がこの便を大勢利用するようだ。荷物を預けるときに成田でやられたようにバイクの寸法が測られた。が,今回のANAではサイズオーバーとなってバイク1台につき$150を支払う羽目になった。€に換算して2台で€234,片道運賃の5%ほどの超過料金だが仕方ない。チェックインも済んでホッとして待合ラウンジでコーヒーと軽食を飲食した。

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飛行機は定刻の20時45分にフランクフルト国際空港を飛びたった。空はようやく暮れようとしていた。つぎにこの陽をみるのはいつのことか。離陸して1時間後に機内食が出た。一月振りにに食べるご飯と味噌汁の味に舌鼓を打った。ANAのサービス,機内食,オーディオヴィジュアルのサービスはLufthansaよりも断然良かった。日本語の映画を2本も見られて退屈する暇もないほどだった。次回はANAかJALにしようかとカミさんと話す。えっ,次回って…

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機内で考えた。このドイツ自転車旅行は,そもそも,カミさんが言い出さなかったら実現しなかったことだ。鉄道の乗り方を始めとして,宿の飛び込み交渉,食事の注文,コースをロストして訪ねた道などなど多難な一ヶ月の旅だった。それを何とか乗り越えて走れたのはカミさんがそばに居たから出来たことだ。食事も宿も質素なものが大半だったが,不満はほとんど感じなかった。とても豊かな時間を過ごせた。眠りに落ちる前に「このカミさんなら運命を共にできるな」と今更ながらに思った。

19日目(通算32日目 2013年7月12日):成田(0.0km)

ヨーロッパ夏時間で6時半に朝食が出た。カミさん共に朝粥をいただいた。焼き鮭の塩味が懐かしい。1時間ほどで見慣れた利根川が窓から見えてきた。日本時間の15時05分に無事に成田空港に着陸した。バイクも無事に受けとることができた。帰国の数日前にメールをやりとりした友人から「今の日本はめちゃくちゃ暑い夏だ。最高気温も39℃になったところもある。覚悟して帰国せよ」と恐ろしいことを聞かされた。果たして,熱気むんむんの成田に降り立って,こりゃ堪らん,この夏の陽気に慣れるまでにどれほどかかるだろうか,と溜息をついた。

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おわりに

32日間,1276kmを走ったドイツ自転車旅行の諸費用を計算してみた。総額でおよそ87万円であった。ここにはバイクなどの装備の費用は含まれないし,現地でのチップなどの領収書のない出費も含まない。その内訳は,旅行前にかかった支出としては航空券が318,400円,海外旅行傷害保険が14,400円,成田での駐車料金が7,900円,ユースホステル入会費が4,000円,地図ほかが4,400円であった。現地での支出は522,700円でその内訳は,宿泊代が251,800円,食費が138,900円,交通費が76,100円,雑費が55,900円となっていた。

宿を出るときや街で挨拶を交わしたドイツの人たちは必ず「Gute Reise !」や「Gute Fahrt !」と言って送り出してくれた。現地で出会った日本人の旅行者は「お気をつけて」と送り出してくれた。文化の違いと言ってしまえばそれまでだが… これからは「楽しんで」と自転車ツーリングする人を送り出してあげよう。

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 Posted by at 10:47 AM

  One Response to “ロマンチック街道自転車の旅(2013ドイツ自転車旅行−2)”

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