ヴェーザー川(メルヘン街道)自転車道の旅(2013ドイツ自転車旅行−1)

 

はじめに

昨年(2012年)の夏を前にしてカミさんが「私の還暦記念にドイツを自転車旅行してみたい」と言いだした。数ヶ月かけてWebをサーフィンして情報を集めていたらしい。確かに,かなりの人がドナウ川やらロマンチック街道やらを走っているようだ。自転車はどうするか,宿はどうするのかなどなど口に出したいことは多々あったが,とにかく1年以上先のことなのでオーケーすることにした。自分だったらとうていこのような海外でのサイクルツーリングなど考えもしなかっただろう。

今年(2013年)に入ってから具体的に計画を立て始めた。どうせなら1ヶ月は滞在したいというので,あれこれとWebや本を漁って,まずはヴェーザー川自転車道を候補に挙げた。これに2週間をかけて残りの2週間を別のコースに充てようと古城街道自転車道とロマンチック街道自転車道を候補に挙げた。地図を取り寄せてみると古城街道自転車道の方は大きな街を通過するので自動車との混走が予想されたので却下して,有名どころのロマンチック街道自転車道を選んだ。この2つのルートを鉄道で結んでドイツを縦断するという計画を立てることにした。 ブログへの記録はヴェーザー川自転車道の旅とロマンチック街道自転車道の旅とを分けて残すことにした。まずはヴェーザー川自転車道の旅である。

ヴェーザー川自転車道はドイツ・メルヘン街道 Deutche Märchenstraßeの街を含んでいる。メルヘン街道はハーナウ Hanauからブレーマーハーフェン Bremerhavenまでのグリム兄弟とグリム童話や伝説にゆかりのある地を結ぶ観光道路で1975年に組織されている。

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資料など

ヴェーザー川自転車道の資料として小柳津さんの書いた「ドイツ自転車旅行を楽しむ」を熟読した。この本では準備の部分が大いに役立ったが,実際の日程を計画する段にはにはあまり重要視しなかった。章のタイトル(旅程)と実際に泊まった場所が違っていたり,旅行には直接関係しないグリム童話やドイツ民謡の部分が余計に感じた。それにツーリングはブレーメンまでで,そこからの帰路については殆ど書いていない。前半の詳しい準備編に比べて呆気なさすぎる。

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Webで参考になったのはAnPonman氏の「ドイツメルヘン街道ちゃりんこ旅22日間」とtimさんの「Bicycle Germany」(英語のWebページ)だった。両者ともカッセル Kasselからブレーマーハーフェン Bremerhavenまでを走っているので,このコースで行くことにした。timさんのホームページのルート案内は詳細で,AnPonman氏の失敗談には勇気づけられた。小柳津氏の本を読んで,まず地図を準備した。Esterbauer VerlagのBikelineシリーズの「Weser-Radweg」を日本のAmazonから注文して購入した。1/50,000の縮尺の詳細な地図で巻末には各地の宿泊施設が掲載されている。我々の自転車旅は宿泊は予約せずに現地で見つけることにしたので,実際にこの地図は大いに役に立った。ただ,残念なことにはドイツ語(大学の第2外国語にドイツ語をとったにもかかわらず)で書かれているので,文章を理解するにはほど遠かった。にもかかわらず,この手の地図は必携であることを体感した。この地図によればハン・ミュンデンからクックスハーフェン(ブレーマーハーフェンの北)までのヴェーザー川自転車道は510kmということだ。

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ヴェーザー川自転車道としての記載はないが「メルヘン街道/北ドイツ」として主要都市が記載されている「地球の歩き方 A14 ドイツ」も,ちょっと重たいのが玉に瑕だが,大いに役立った。巻末の「ドイツを旅する準備と技術」章の「ドイツの宿泊施設」はとても詳しい。我々の旅のスタイルは現地で宿泊施設を探すというものだったので,Esterbauer社の地図の巻末の宿泊施設リストのカテゴリー(H: Hotel, Hg: Hotel Garni, Gh: Gasthof/Gasthaus, P: Pension, Pz: Privatzimmer, Fw: Frienwohnungなど)やEsterbauer社の地図のリストにないプライベート・ホステル Hostelの意味が理解できた。

Arukikata

ヴェーザー川自転車道もロマンチック街道自転車道も片道を走る計画なので,帰りは鉄道を利用することにした。これにはドイツ鉄道(DB)のホームページを見ていたお陰で自販機で切符を買うときにおおいに助かった。英語でのWebページを開いて出発駅,到着駅,乗車日時を指定し,更に詳細ページを表示させて(特急のICEは利用しない)ローカル線だけの接続などを指定して検索すると料金の他に乗り継ぎの時刻,ホームなどを詳しく調べる事が出来る。こうした予行演習のお陰で現地での自販機(英語ページがある)を前にして迷うことがなかった。しかし,後述するように自転車利用切符は自販機では別の手続きが必要だった。

持ち物

自転車関連:GIANT Great Journey 1 & 2(カミさんのGreat Journey 2はドロップハンドル・165mmクランクに交換した。小柳津氏はロードレーサーでもオーケーと書いているが,荷物を運べない,コースはアスファルト舗装路だけではないという理由からロードレーサーは適当ではない。),パニアーバッグ(Great Journey付属,後ろの2個),パニアーレインカバー(30〜40リットルのパックカバー,2),ボトル,バイクツール,予備チューブ,パンク修理具,潤滑油,雑巾,軍手,携帯ポンプ,自転車用錠(Kryptonite Evolution MINI-7),バンジーコード(鉄道での自転車固定用),ライト

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日用品:救急用品(持って行かなかったが,虫刺されのかゆみ止め薬品は必携),洗面具,日焼け止め,ひげ剃り(乾電池式),洗濯ロープ,タオル,折りたたみ傘,買い物袋,圧縮ポリ袋(着替え入れ),ジップロック(食品用,小物用),十徳ナイフ(持って行かなかったが必携:特にビールの栓抜き!),箸類(機内食のプラスチック製のナイフ・フォーク,割り箸を再利用した)

衣類:レーサーパンツ(2),半袖ジャージー(2),アームウォーマー,レッグウォーマー,アンダーウェアー(2),ウィンドブレーカー,雨具(登山用上下),グローブ(2),靴下(3),裾バンド(ズボン用),ヘルメット,半袖Tシャツ(2),長袖Tシャツ,ハーフパンツ(Tシャツと共に寝間着),スリッパ,帽子,ハイキングパンツ・シャツ(移動時,観光時着用)

ガイドブック:自転車道地図,地図ホルダー(Esterbauer社の地図用のリクセン・カウルのフリーライナーAM835),地球の歩き方・ドイツ,GPS(GARMIN GPSmap60CSx:GPSにはGarmin GPS用の無料マップとEsterbauer社の地図購入者用ダウンロードマップを入れた。しかし,当機は画面が小さく老眼では見にくく,現地では役に立たなかった。)

小物類:カメラ(Canon G12),予備電池(カメラ用,単三充電池:単三充電池は現地のスーパーで単三電池が買えるので実際には不要),充電器・変換プラグ(カメラ電池用),モバイルバッテリー(実際にはiPhoneは殆ど使用しなかったので不要だった),iPhone5

所持品:現金(二人で1ヶ月の生活費として€4,500(ユーロ)を€100以下の少額紙幣で持って行った。FXの口座を開設して両替手数料を抑えようとしたが,成田空港での引き出しが時間的に間に合わないので利用できなかった。この時のレートは€1=133円だった),パスポート,クレジットカード(JCB, VISA, Master),ユースホステル会員証,海外保険証(損保ジャパンで海外旅行保険を14,420円で契約した),メモ帳,筆記具,時計

1日目(2013年6月11日):成田〜フランクフルト Frankfurt am Main 〜カッセル Kassel(1.7km)

前日までにバイクを輪行袋に梱包してクルマに積んでおいた。自宅から成田空港までは自家用車で行くことにした。自家用車は駐車場に7,875円で1ヶ月間預けておくことにした。自宅から空港までの往復の自転車の運送料,交通費を考えると1ヶ月駐車するほうが安いし便利だと考えたからだ。7時15分には予約したルフトハンザのカウンターでチェックインをすることができた。問題のバイクの輸送は,予めルフトハンザに予約を入れておいた。当日のカウンターでバイク1台に付き150ドルを支払うように言われていたので,クレジットカードで決済することにした。が,コンピュータの不調で搭乗口で伝票にサインしてくれと言われた。パニアーバックは一個は手荷物で預け,もう一個は機内持ち込みにした。手荷物検査,出国手続きを済ませて搭乗口で待っていると呼び出された。係員の説明ではバイクの運送料は無料になったとのことで,クレジット決済も破棄したという。なんでこうなったかは不明だがとにかく300ドルを払わなくてもすむのはありがたいことだ。3月早々に予約したルフトハンザの成田〜フランクフルト往復運賃は二人で318,400円だった。現地で,帰りの便はミュンヘン〜成田にすればロマンチック街道の終点のフュッセンから近くて良かった,と思ったが,予約時にはそこまで気が回らなかった。

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飛行機は定刻通り9時45分に成田を飛び立った。いよいよ大冒険の始まりだ。とにかくケンカをしないようにしようと胸のうちで誓いを立てた。まずはビールでドイツ自転車旅行の前途を祝おう。

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日本映画を見たり音楽を聴いたり,昼食を食べて機内での時間を過ごした。文庫本はもうすぐ読み終えてしまいそうだ。日本時間での昼食のメニューは和洋混交で主菜は焼き豚の柚子餡かけ丼だ。

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現地時間での夕食はカミさんは牛肉のすき煮を自分はペンネパスタを選んだ。機内で自由に動けないので腹は減らないが,現地時間に慣れるためには食べなければならない。

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なんとか11時間あまりを過ごして定刻の14時30分にフランクフルトに到着した。予めWebで読んでいたように,バイクは荷物のターンテーブルではなく別のところから出てきた。入国手続きを済ませて空港内で自転車を組み立てた。ホィールを回したり,ブレーキ,シフトの調子をみた限りではバイクに異常は無いようだった。さぁ,問題はこのバイクをどうやって切符を買ってカッセルまで運ぶかだ。

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ドイツ鉄道(DB)の案内所を探して空港駅からカッセルまでの切符を買おうとしたら,親切なおじさんが自販機に案内してくれた。英語でカッセルまで行くのだ,と話して自販機を操作してくれたのだがこの自販機ではカッセルまでの切符は買えないようだ。隣の自販機でも外国人が苦労しているのを見て,買い方を指導してくれるがそちらも遠方の切符が目的らしく,やはりそこの自販機では買えないようだ。そうこうしているうちにそのおじさんは「私は時間がないのでこの自販機でフランクフルト中央駅(Frankfurt Hbf)まで切符を買ってそこでカッセルまでを買いなさい」と去ってしまった。結局,DBの案内所に行ってカッセルまでの切符を発行してもらった。切符にはフランクフルト中央駅での乗り換えホーム,出発・到着時刻,列車番号そして乗り換え時間までが印刷されていた。この時刻表は大変重宝した。時刻通りに列車が運行されるならば鉄道地図がなくても乗り換えが出来るのだから。大人二人で€52だった。(のちにフュッセンからフランクフルト中央駅までの切符を買うときに気付いたのだが,切符には乗車区間が印刷されてなく,QUER-DURCHS-LAND-TICKETとあった。どうやらこれはICE, ICなどの特急をのぞく列車でのある地域の一日乗車券のようだ。自販機で求めたクークスファーフェンからカッセルまでの列車の切符はそのような割引乗車券ではなかったので,通用地域の違いか窓口購入の切符との違いかは分からない。)そのとき自転車を持っている,と言ったのだが発行された切符には自転車の分まで入っていないようだ。とにかくも,重い自転車を苦労して地下ホームまで下ろしてSバーン(近郊電車)で行くことにした。当たり前のように列車内にバイクを持ち込んだ。

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フランクフルト中央駅ではカッセルまでの列車に十分な時間があったので,構内の立ち食い店でソーセージを挟んだパンとコーヒーの夕食をとった。その後,構内をぶらついて案内書で切符を見せて「これで自転車をカッセルまで運べるか」聞いてみた。すると係の女性は自販機を操作してくれて自転車の切符を発行してくれた。自転車2台で€10であった。

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やがて17時20分発のカッセル中央駅 Kassel Hbfの地域快速列車(Regional Express, RE)が15番ホームに入ってきた。バイクのロゴのある車両に乗り込みバイクをバンジーコードで固定した。隣のドイツ人のバイクがロックをしてあるのを見て我々もロックをかけて,パニアーを外して2階に持ち込んだ。列車は定刻通りに,なんのアナウンスもなく,滑るように静かに発車した。普通快速列車ではあるがとても快適な車両で,移りゆくフランクフルトの街を眺めながら安堵の溜息をついた。

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列車はマールブルグを通り(時間的余裕があれば訪ねてみたいメルヘン街道の街だった)カッセルヴィルヘルムスヘーヘ Kassel Wilhelmshöheを通過したところで降車の準備をした。ヴィルヘルムスヘーヘ駅は特急列車(ICE)が泊まる駅だがICEはカッセル中央駅には向かわない。中央駅に着いて地図を取り出して予約しておいたユースホステル Jugendherbergeに向かって漕ぎ出した。

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ユースホステルにはまだ明るい(?!)20時に到着したのだが,ツインの部屋の予約オーケーの返事をもらっているにも関わらず記録に載ってないという。すったもんだしてシャワー・トイレ共同の4人部屋を都合してもらった。朝食付きで二人で€46だったので,割引してくれたのだろうか。バイクは離れの遊戯室に保管してもらえた。自分たちでベッドの準備をしてシャワーを使い,時差ぼけではあるがとにかく眠りについた。やれやれ,ちょっとした波乱はあったが,ドイツ自転車旅行の第1日は無事に終わった。

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2日目(2013年6月12日):カッセル Kassel 〜ハン・ミュンデン Hann. Münden(49.0km)

5時に目が覚めてしまった。昨晩は団体客が騒がしく帰ってきたり,ガヤガヤとシャワーを使ったり,表通りの交通が騒がしかったりして睡眠を妨げられたのだ。これがユースホステルの欠点だ。団体客が来ないうちに朝食を済ませた。カフェテリヤ形式の朝食だったので,昼食用にと別のパンにハム・チーズを挟んだサンドイッチを作り,持参したジップロックにこっそりと入れさせてもらった。

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8時20分にユースホステルを出発して街の外れのヴィルヘルムスヘーヘ丘公園 Bergpark Wilhelmshöheに向けてカッセル市内を走った。公園に向かうコースはダラダラと登っているしクルマの交通量も多いので歩道の自転車レーンを走った。日本と違ってここはクルマやバイクは右側通行であることを意識しなければならない。行く手にヴィルヘルムスヘーヘ城 Schloss Wilhelmshöheが見えてきた頃にはゼイゼイハアハアのヒルクライムコースとなっていた。

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バイクを押し上げてヴィルヘルムスヘーヘ城に到着した。内部の見学はパスして,彼方に見えるカスカーデン Kaskadenとレーヴェンブルク城 Loewenburgを訪ねるためにさらに登った。この丘は丘と言うよりも山(Berg)で,路線バスも走っている。歩いて回るにはあまりにも広大だがバイクではそれほどでもない。

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カスカーデン(滝の階段,カスケード)は5/1〜10/3の水,日曜日,祝日の14:30〜15:30しか見られないようで,水も噴水もない空っぽの階段だけであった。ついでレーヴェンブルク城に回ってみると,こちらは一時間毎の案内付きの団体見学のみが可能で個人見学は出来ないと言われた。ちょうど小さな(幼稚園児以下か)子どもを連れた団体が見学するようなので,混ぜてもらうことにした。案内はドイツ語だったので殆ど理解できなかったが,城が脆い砂岩で出来ていることなどは子どもたちに説明するジェスチャーで分かった。内部は撮影禁止だったので写真は撮れなかったが,16〜18世紀の甲冑などの武具,武器の展示は見所十分だった。笑っちゃいそうになったのは,兵としてなのか,伴侶としてなのか,イヌの甲冑もあったことだ。ちいさな城だが見所一杯であった。城からカッセルの街並みが望めたが,この街並みは第2次世界大戦で破壊されて戦後に再興された街並みだ。あの街の彼方にこれから走るフルダ川自転車道 Fulda-Radwegがハン・ミュンデンまで続いているはずだ。(2013年6月23日の第37回世界遺産委員会でここヴィルヘルムスヘーヘ丘公園は世界遺産に登録された。ここを訪れたときはその承認の審議の最中だったろうが,そんなことは感じさせない静かな公園だった。)

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ヴィルヘルムスヘーヘからカッセルの街をルンルン気分で下り,timさんのホームページの記述にしたがって地下道を抜けるとグリム兄弟博物館の脇に出た。ここも時間の都合で見学はしなかった。フルダ川沿いのカールスアウエ Karlsaue公園内のオランジェリー Orangerie城の脇を抜けたらR1ルートとあるフルダ川自転車道が見つかった。

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このR1が見つかるどうか不安だったがまずは一安心して河畔の草の上でユースホステルからの昼食を食べることにした。時刻はちょうど12時だ。川岸には,timさんのホームページに載っていた,ツルハシのモニュメントが建っている。川の流れは速く,水は茶色に濁っている。川と自転道の間には草地があるだけで野暮な(?)堤防など設えてない。ここまでは思ったよりも順調だ。

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お昼を済ませて早速にフルダ川自転車道に乗り入れた。まずはフルダ川沿いの舗装道路を走る。やがて非舗装路を走ることになったが1.75インチのタイヤと固くしまった路面のお陰で走りにくいことはない。フルダ川が手の届きそうなところを流れている雑木林を抜けていく。何組ものライダー(ドイツ語ではFahrer)が「グーテン・モルゲン」,「モルゲン」,「ハロー」と挨拶を交わしながら追い抜いていったり,すれ違っていく。この時間帯はまだモルゲン(朝,午前中)なのだ。timさんのホームページに記載されていた屋根付きの小さな橋も出てきた。カミさんも私もとても良い気分でペダルを回していった。しかし,スピードは20㎞を越えないのんびり,のんびりのペースだ。まさに自転車の旅である。カミさんと「やっぱり,思い切ってきて良かったねぇ」と会話を交わしながら本格的なドイツ自転車旅行が始まった。

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2時間も走らぬうちに,やがてクライン・ガルテン(klein Garten 小さな別荘付きの家庭菜園)がひしめき合う中を縫うように走り大きな橋(ピオニール橋 Pionierbrücke)の下をくぐった。ここをUターンするように登るとピオニール橋の上に出た(ここを見落とすとハン・ミュンデンを通り過ぎてしまうので要注意だ)。時計をみると14時だ。橋の向こうがハン・ミュンデンの旧市街のようだ。橋を渡っていったん旧市街に入るが,まずは今日の宿探しをしなくてはならない。なにせこの自転車旅は一日の走行距離を50〜60kmに設定して街(村)に着いてから泊まるところを探すという,やや危ない旅のスタイルをとることにしたのだ。こうすると旅の自由度が増えるが毎日宿探しという面倒くささは否めない。ドイツ自転車旅行の第1日目の宿は「地球の歩き方」に出ていたSchmucker Jägerと決めて交渉することにした。電話で交渉すればと思うが,何せドイツ語が分からないので直接アタックするしかないのだ。面談すれば値段などは紙に書いてもらえるので何とかなるという方策だ。ホテルは橋を戻ってフルダ川をちょっと遡った辺りにあるはずだ。14時半にホテルと今日の宿の交渉が成立した。朝食付きのダブルルーム(Doppel Zimmer,DZ)で€76という。ちょっと高いが,それでも中級ホテルクラスだが,他を探すのも億劫なのでここに決めることした。バイクは納屋に入れて,玄関と部屋の鍵を2つ受けとった。

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シャワーを浴びて,さっそく洗濯をした。このクラスのホテルでは殆どがシャワーでバスタブはお目にかかれない。1時間半ほどで作業を済ませて,徒歩で旧市街の観光に出かけた。ハン・ミュンデンは第2次世界大戦の被害を受けずに済んでいて500戸以上の4,5階建の木組みの家が建ち並ぶ美しい街だった。街は教会 Kircheと市庁舎 Rathausが市場広場 Marktplatzに建ち並びその回りに家々があるというつくりだ。広場のカフェでビールを飲むことにした。カミさんはピルスを自分はドゥンケルを注文した。乾いた爽やかな空気の中でのビールはすんなりと喉を通っていった。

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市庁舎の内部を見学して表に出たら,ちょうど17時の仕掛け時計が時を告げる光景を見ることが出来た。

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その後でフルダ Fulda川とヴェラWerra川が合流してヴェーザーWeser川になるところを見に行った。ミュンデンとはドイツ語で合流という意味だ。ハンはハノファーHannover候領ということだ。三角州の先端の樹の下には両川が出会ってヴェーザー川となることを謳った詩が書かれた石碑 Wesersteinがある。韻(küssen–müssen, Kuss–Fluss)を踏んで面白い。明日はこのヴェーザー川に沿って下っていくのだ。

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19時だというのにまだ陽は高いので旧市街の鉄ひげ博士Dr. Eisenbartが住んだという家を探しに旧市街に戻った。現在は薬局Apothekeになっていて2階に鉄ひげ博士の人形があった。鉄ひげ博士は1663〜1727年の実在の医者でどういうわけかドイツではヤブ医者の代名詞になっているそうだ。これらの木組みの家はベース階(ドイツなどのヨーロッパでの1階は日本では2階に相当し,ベースメント階が日本の1階になる)は現代の喫茶店,レストラン,ブティック,スーパー,お土産屋などなどとして使われているが,その上の階は中世の姿そのままだ。木組みの家の中には明らかに傾いてしまっている棟もそこかしこに見られた。歴史の古さを目の当たりにすることが出来る。

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ホテルに戻る途中のスーパーマーケットで夕食の食材を買った。サラダとサンドイッチとビールとラートラーRadlerという飲み物を買い,ホテルの部屋で食べた。この旅の間,昼をたっぷりと食べたときや,あまり食欲がない日はしばしばスーパーで食材を買ってホテルや個人宿の部屋で夕食をとることが多かった。スーパーで買うビールは迷ってしまうほどに種類が多く,それも日々,銘柄が代わっていった。値段は500mlで€1以下と安く,コーラと同じくらいだった。ラートラーはビールにレモネードを混ぜたものだが,本(後述するロマンチック街道自転車道を書いた「自転車ふたり旅」)にあるほど旨いものではなかった。 寝る前に日本の友人たちに絵はがきを書いた。自転車仲間にも友人にも内緒で出てきたので,夏の挨拶が出来ない理由と元気にケンカもせずに旅しているという事をカミさんと自分の友人に知らせた。そして,明日からのヴェーザー川自転車道の旅を夢見ながらベッドに入った。

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3日目(2013年6月13日):ハン・ミュンデン Hann. Münden〜バート・カールスハーフェン Bad Kahlshafen(56.53km)

5時に目覚めてしまった。7時半に朝食をとり,9時にホテルをスタートした。まずは昨晩の絵はがきを郵便局で切手を買って投函する仕事だ。街の地図をみるとハン・ミュンデン駅の近くに郵便局があるようだ。閑散とした駅前を下って黄色の建物の郵便局で葉書一枚あたり75セント(€0.75)の切手を貼って投函した。そういえばスイスでみた郵便局,郵便車も黄色だった。

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郵便局からピオニール橋を渡り昨日走ってきたフルダ川自転車道(R1)に入り,街の郊外でウェーザー橋を渡りヴェーザー川の右岸の自転車道を走る。この橋の下を流れる川はヴェーザー川で,走っている自転車道はヴェーザー川自転車道(R99)だが,フルダ川自転車道(R1)の終点のバート・カールスハーフェン Bad Karlshafenまでは共通のルートとなっている。幹線道路に沿うコースは専用の自転車道があるので安全,快適に走ることが出来る。

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40分走ったところのヘーメルン Hemelnでヴェーザー川自転車道のメインコースから離れるために渡し船に乗り左岸に渡った。ケーブルで引っ張るスタイルの渡し船だ。ハン・ミュンデンからの幹線道路(左岸)を走ってくれば同じところに着くのだがこの自転車旅ではショートカットはせずに忠実に地図のコースを辿ることに決めているのだ。

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ヘーメルンで本コースを外れたのは,ザバブルク Sababurgの古城を巡るヴァリエーションルートが地図にあり,さらに小柳津氏が訪ねたトレンデルブルク城を回ってみる計画を立てたからだ。地図にザバブルク城へのルートはあるがトレンデルブルク城へのルートは載ってないがなんとかなるだろう。帰路は小柳津氏が書いているR8ルートを辿ればバート・カールスハーフェンに行けるようだ。グリム童話ではザバブルク城はいばら姫(フランスでは眠れる森の美女)の,トレンデルブルク城はラプンツェルの童話の舞台となっているお城だ。

たまにしかクルマに出合わない道にはDeutche Märchenstraßeの標識があった。道はダラダラと登り,やがて勾配はきつくなり,とうとうカミさんは押し歩きとなってしまった。昨日のカッセルのヒルクライムよりももっと長く,急勾配のコースだった。ようやくのことに自然動物園への案内に出くわし,ここからは森を抜ける下りと平坦な道が始まった。緑の中を,風を切ってグングンと下っていくのはとても気分が良い。まさにドイツの田舎,森の風景だ。やがて小高い岡のうえに古城が見えてきた。ザバブルク城にたどり着いたのだ。ヘーメルンで川を渡ってから1時間ちょっとの登りだったが,まだ時差ぼけが解消してない体にはこたえた。カミさんもよくぞ頑張りました。

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城門をはいると左手に受付があるが閉まっていて内部見学はできそうもない。自転車をロックしていたら外国人の見学者が係の人に案内されて入場するところにタイミング良く出くわした。で,我々も係の人に一人€2の入場料を払ってゲートを入った。見学した部分は廃墟のようであるが城の他の部分は現在ではホテルになっていた。

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見学を終えたところで城門脇の芝生で朝のホテルで用意したサンドイッチでランチをとった。涎を垂らした太り気味のワンちゃんが寄ってきたのでお裾分けしてあげた。

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ザバブルクからトレンデルブルクまでは,始めの4㎞ほどは快調な下りだったがゴッツビューレン Gottsbürenからはアップダウンの連続でこれまたひどく疲れた。トレンデルブルク Trendelburg城へはこれまた押し歩きを余儀なくさせられた急坂を登ってようやくのことに到着した。トレンデルブルク城はグリム童話のラプンツェルの舞台になった城だ。ラプンツェルの塔の脇にある小さな入り口から場内に入った。「塔の見学は毎正時だ」とおかしな日本語で書いてあったが,もはや歩いて登る元気はない。狭い城内をぐるっと歩きまわった。

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現在の城はホテルとなっていた。そこのカフェーでコーヒーを飲んだ。小柳津氏が見たような緑に囲まれたトレンデルブルクの街並みを眼下に望むコーヒータイムは,文字通り至福の時間だった。

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城を出てツーリストインフォメーションでバート・カールスハーフェンまでの自転車道を訪ねてみた。係の人はどこぞの大学の先生が訪ねてきて日本語のパンフレットを作ったといってトレンデルブルクの案内を差してディーメル Diemel川沿いのDiemel Radwegを教えてくれた。こちらは今日辿ってきたコースとは打って変わって平坦なコースだという。城から降りてディーメル川に降りる自転車道を探し当てた。小柳津氏はこのルートをR8と書いているが,R4の方がメインのようでR8は小さくしか表示されてなかった。1時間走ったところでバート・カールスハーフェンの街に到着した。このルートも快適だった。サバブルク,トレンデルブルクを訪ねるには我々が辿ったルート(Esterbauer社の地図)よりもバート・カールスハーフェンからこのR4を往復した方が,坂バカのライダーでない限り,はるかに楽である。

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バート・カールスハーフェンのラートハウス内のインフォメーションですぐ近くのホテルHessischer Hofを紹介してもらった。ツインで€40という値段に小躍りした。ヒルクライムでたっぷり汗をかいた体をシャワーで洗い流し,サイクルウェアーを洗濯して街の見学に出かけた。

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ウェーザー川岸には遊覧船の船着き場があり,その脇の塔には過去にウェーザー川が氾濫したときの水位が目盛られていた。

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ホテルに戻ってきてレストランで夕食をとった。レストランは庭園の望める温室のような場所だ。ビールで乾杯してメイン料理はカミさんはこの季節の名物のシュパーゲル(アスパラ)とシュニッツェル(カツレツ)を自分は地球の歩き方に出ていた定食(Tagesmenu)を聞いてみた。アスパラは長く,太く柔らかい。定食にはスープが付いていて目玉焼きは2つも付いていてたっぷりのジャガイモが添えられていた。すっかり良い気分になりビールのお代わりを頼んだ。食事をしている間にガラス張りの天井に雨粒が落ちてきた。明日は晴れて欲しいものだ。

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4日目(2013年6月14日):バート・カールスハーフェン Bad Kahlshafen〜ポレ Polle(57.33km)

朝食をたっぷりととってお昼も確保した。ところがチェックアウトする段になって請求書を見たら€84ではないか。インフォメーションの係の話では40€と理解したが,ダブルルームを一人40€という事だったことが分かった。昨晩は安さに小躍りしてビールを2杯も飲んだのに… 考えてみればホテルに泊まって二人で€40なんて安すぎだよね。個人宿ならば€40はあるかも知れないけどね。因みに€4は朝食代であった。気を取り直して,身支度をして9時にホテルを出発した。昨晩の雨も上がってカラッとした空気のなかへ乗り出した。

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街中のキオスクで炭酸ガス無しのミネラルウォーターを買って川沿いの一般道の歩道を5kmほど走ったところで自転車道に入った。地図をよく見ると自動車道の脇の歩道が切れて反対側になっている事まで細かく表示されている。1時間15分走ったヴェールデンWehrdenという村の川岸でトイレタイムをとった。自転車道にもけっこうトイレがあるものだ。ここは無料トイレだった。とうとうと流れるヴェーザー川や川岸の牧場の羊たちを眺めながら走ると,川の流れのように気分までもゆったりとしたものになっている。

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11時にヘクスター Höxterに着いた。田舎道を走ってきた身にとってはとても近代的な街並みだ。

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だが,16〜17世紀初頭のヴェーザールネッサンス様式とよばれる芸術は民家の彩りにも現れている。自分には街を彩る木組みの家のカラーはおどろおどろしいように感じた。

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市庁舎も木組みの家として残っていてツーリストインフォメーションが入っていた。その脇では団体の観光客を引率する中世時代風の衣装のおじさんがなにやら説明をしていた。街中を散策し終わってバイクを停めたキリアン教会 Kilianikircheに戻って内部を見学した。

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自転車道に戻って川岸で朝の戦利品でつくったランチをとった。

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Höxterから30分も走ったところで左手に立派な館が見えてきた。「あれがAnPonmanさんのホームページにあったコルヴァイ城じゃない」というので地図を見てみるとそのようだ。AnPonmanさんは「Höxterのシンボルの二つのとんがり屋根のコルヴァイ城」と書いているが,二つのとんがり屋根はHöxterのキリアン教会の間違いでしょうね。ともあれ,コルヴァイ城壁を回り込んでコルヴァイ城 Schloss Corveyに立ち寄ってみよう。

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コルヴァイ城はコルヴァイ修道院Kloster Corveyのことで822年にまで遡れる歴史を持つ。現在では内部の建物は博物館・図書館になっていた。時間と文化・ドイツ語の理解度との関係で観覧はパスした。内部には広々とした庭があり二つの尖塔をもつ教会がある(Höxterの45mと48mのキリアン教会と比べると規模はかなり小さい)。今でもワインを醸造している工場があった。世界遺産に申請中だそうで2014の認定を目指しているそうだ。(2014年6月25日の第38回世界遺産委員会でコルヴァイ修道院は世界遺産に登録された。)

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コルヴァイ修道院から10kmほど走り,橋を渡るとヴェーザー川の右岸にホルツミンデン Holzmindenが見えてきた。16世紀半ばの30年戦争で破壊された後に再建され,18世紀には鉄工業で栄えたそうだ。ハン・ミュンデンもそうであったように橋を渡ると街(村)に入るというシチュエーションは趣があって良いものだ。さっそくツーリストインフォメーションに行って街の地図をもらう。街をぶらぶら散歩していたらおじさんが寄ってきて「どこから来たんだ? イギリス人か? そうか,日本人か, 近くに家があるのでコーヒーを飲んでいけ」と英語で話しかけてくる。リタイヤして暇をもてあましているようだが,こちらはこの先に進んで明るいうちに次の街で宿探しをしなくてはならない。残念ながらお断りせざるを得なかった。なんでイギリス人に間違えられたんだろう。

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ホルツミンデンから4.5kmのところで自転車道は工事中となり,迂回をしなければならなくなった。それまでの快適な舗装道路から砂埃だらけの道を苦労して走った。1.75インチのタイヤが功を奏した。ようやく舗装路の自転車道に戻ったところで「Zimmer frei」(空き室あり)の看板を掲げたレストランがあったが,予定したポレまでは5kmなので通り過ぎた。渡し船乗り場に着いて,ケーブルで引っ張る小さなフェリーで再び左岸に渡りポレPolleの村(街)に着いたのは15時半をまわっていた。小さな村なのでインフォメーションは掲示板にしかなかった。そこで個人宿 Privatzimmerの集まっているところを知り,更にクルマの運転をしているおじさんから声をかけられてその場所を教えたもらえた。小さな親切が見知らぬ土地ではとてもありがたい。地図のリストにあった最初に訪ねた個人宿は満杯だったが,向かいのHesse個人宿を教えてもらえた。ドアベルを押して出てきたのは厳ついおじさんだった。片言のドイツ語を駆使して,「ハーベン ジー チンマー フライ Haben Sie Zimmer frei ?」と尋ねると,ダブルルーム・朝食付きで€50というのでオーケーした。広い庭に面した部屋で庭の納屋に自転車を入れさせてもらった。シャワーを浴びて洗濯をして村の中心の城跡の見学と夕食に出かけた。

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渡船場の上に建つ城跡 Burgruinの入場料は€1だった。こちらも30年戦争での強者どもの夢の跡だ。塔に登ってしたを見るとレストランがある。では,そこに行ってみようかというわけで降りて行った。川岸のレストラン Weser Terrasseでお薦めを聞いてみると魚では鱒の燻製,肉ではステーキということだった。カミさんは肉を自分は魚を注文した。かつてはこのヴェーザー川でも鱒が捕れたのだろうか,レストランの看板に投網漁の絵が描いてある。ビールと共に€34.8とはちょっと高いかな。今日は初めての個人宿 Privatzimmerだが,なかなか快適だ。他に何組かの客が泊まっているようだが,あのおっかないおじさんが一人で切り盛りしているのだろうか。

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5日目(2013年6月15日):ポレ Polle〜フィッシュベック Fischbeck(58.60km)

やかましいほどの鳥のさえずりで目が覚めた。8時に庭の納屋で朝食をとる。飾ってある写真をみるとおじさんはかつては鉄道員だったようだ。パン,チーズ,ハム,ソーセージも沢山用意してくれていた。おまけに,お持ち帰り用にジップロックまで用意してくれてあった。感謝,感謝でサンドイッチを2つづつ作った。初めてのPrivatzimmerの快適さ,素晴らしさに堪能した。おじさんは厳つかったがもてなしはこの上なく上質であった。そんなHesse宿を9時に出発して,渡し船で右岸に戻り自転車旅を続けた。

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1時間半ほど麦畑と川の流れを見ながら走っていくと橋の向こうにボーデンヴェルダー Bodenwerderの街並みが見えてきた。

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歴史的旧市街 Altstadtに入ってみると子どものころ絵本で見たような像にであった。ほら吹き男爵 Hieronymus von Münchhausenが前半分の馬にに乗っている像だ。その脇の大きな家が彼の住んだ家で現在はミュンヒハウゼン博物館になっている。隣の木組みの家は市庁舎でインフォメーションセンターが入っている。ここにバイクを駐輪して旧市街の見学に出かけた。

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午前中の早い時間なのでマルクト広場 Marktplatzも閑散としていた。広場の端にはほら吹き男爵のほら話にまつわる像がある。鴨に引かれての空中散歩や大砲の砲弾に乗っての月旅行だ。

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1時間ほどの見学を終えてボーデンヴェルダーを出発した。グローンデ Grohndeを通りかかるとモクモクと水蒸気を吹き出す原子力発電所があった。こんな近くをヴェーザー川自転車道が走っている。ハーゲノーゼン Hagenohsen村の川岸でランチとした。あの厳ついHesseおじさんに感謝しながらのランチだ。

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自転車道の路面はアスファルトや砂利道ばかりではなく,ここTüundern村辺りではブロックをぎっしりと敷き詰めた部分もあった。太いタイヤではスムースだがロードレーサーの細いタイヤでは抵抗があるだろうなと考えながら脇の風車を眺めていたらカミさんが「見て,見て」と言う。慌てて反対側をみたらファニーバイクに数人が乗ってペダルを漕ぎながらビールを飲んだりランチを食べたりしている。ライダーが配ったパンフを見るとツーリズムのプログラムの一環でこのような観光イベントがあるようだ。実に愉快な自転車だった。

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ファニーバイクを見送ってハーメルン Hamelnに到着したのは13時35分になっていた。オスター通り Osterstraßeの東端にあった近代的なインフォメーションセンターで日本語の資料をもらって旧市街の散策に出かけた。中心はマルクト教会 Marktkircheと結婚式の家 Hochzeitshausがある。賑やかな通りはオスター通り Osterstr.だ。さすがにハーメルンの街はグリム童話で有名観光地だけあって賑わっている。石畳の路面にはネズミのマークが埋められていて,これを辿ると見所の観光が出来るというわけだ。ハーメルンの笛吹きの像などにも行き着く。オスター通りのカフェーでカミさんはスプライトを自分はカプチーノを飲んで喉を湿らせた。

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ハーメルン駅からヴェーザー川に向かって,オスター通り東端にねずみ捕り男の家 Rattenfängerhausがある。現在はレストランになっている。その脇には舞楽禁制通り Bungelosenstraßeがある。ここからネズミ捕り男は子どもたちを連れ出したとか。通りの右側にはハーメルン博物館 Museum Hameln,シュティフツヘーレンハウス Stiftsherrehausがある。この木組みの家のファサードをキリスト教関係の人物,神々の彫刻が飾っている。

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マルクト教会と並び建つ結婚式の家 Hochzeitshausの仕掛け時計は時間が合わなかったので見られなかった。明後日の日曜日にはここでハーメルンのネズミ捕り男の野外劇が催されるようで,このための会場が準備されていた。

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街角ではバイクをかたどったユニークなバイクラックを見かけた。久しぶりのデパート(スーパーマーケット?)ではエスカレーターが動いている。雑貨屋で携帯用のポットを買った。これに朝食のコーヒーを入れるという寸法だ。15時10分に賑やかなハーメルンの街を去って宿泊予定地のフィシュベックに向かった。

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ハーメルンから7㎞ちょっとのフィシュベック Fischbeckはフィシュベック修道院教会で有名な村だ。修道院にあったインフォメーションで個人宿を聞いてみたが,係の人は分からないというので地図を頼りに探すことにした。探し始めるとすぐに雨が降ってきた。雨宿りをしようとしたところはSchaumburger Hofというガストホフだった。ちょうど出てきたお兄さんに聞いてみたら朝食付きで€60という。英語が堪能なお兄さんだし,雨で個人宿を探す気も失せたので宿泊することにした。バイクは厨房の裏庭に置けと言われたが,雨が降ると困ると注文を出して宴会場の玄関に置かせてもらった。自転車に対する理解はこのようにどこでも深い。日課となったシャワー&洗濯のあと,雨も止んだので,修道院教会の見学に出かけた。

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教会は16時で閉まっていたので修道院の回りをぶらついた。地球の歩き方ではハーメルン近郊の見所として紹介されていたが,残念だった。でも,正直言って,そろそろ教会には飽きが来ている。

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夕食はホテルの食堂でとった。我々の他に家族連れが食事をしていた。ビールのほかに頼んだメインは肉料理だが,ご多分に漏れず味は塩っぱい。ビール無しでは…

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6日目(2013年6月16日):フィッシュベック Fischbeck〜ハウスベルゲ Hausberge(57.58km)

7時半に朝食をとった。ちょっと質素なのでパンとコーヒーを足してもらった。8時40分に身支度をしてフィシュベックを出発した。9時20分にグローセンヴィーダー Großenwiederを通過した。

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まず目指すのはリンテルン Rintelnだ。べーザー川にはあちこちに溜め池が出来ている。その岸辺の麦畑にはポピーが混じって咲いている。ヴェーザー川自転車道の旅はそこかしこにある赤いバイクと矢印の標識を辿っていくことになる。見落としさえしなければ迷子にはならないはずだ。(後で分かったのだが,この赤い指標はヴェーザー川自転車道のものではなかったようだ。ヴェーザー川自転車道を共用している他の自転車道のものだったようだ。)

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2時間も走らないうちにリンテルンの街が見えてきた。川ではカヤック教室が開催されているようだ。

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13世紀からの旧市街に入りBürgerhaus(市民の家)のインフォメーションで街の地図をもらう。Bürgerhausの前には夜警の像が立っている。ドイツで最初の夜警像だそうだ。Ratskeller(市参事宴会場)も立派だ。

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地図を見ながら聖ニコライ教会,ちょっと離れたヤコブ教会辺りをぶらつく。ヤコブ教会では外で日曜の礼拝が行われていた。市場広場 Marktplatzからちょっとと離れたこんなところに市庁舎 Rathausが残っている。小一時間ほど散策したところでリンテルンの街を離れた。

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リンテルンから9㎞ほど行くと麦畑の向こうに風車が見えてきた。麦畑には赤いポピーと青い矢車草が混じって咲いている。何とも言えない風情だ。小柳津さんもこの場所を記録しているが写真がなかったのでこんな風情は想像できなかった。辺りの標識を見るとこの辺りの43個の風車を巡る300kmに及ぶ風車ルート Mühlenrouteがあるようだ。ヴェーザー川自転車道もこの風車ルートと一部がオーバーラップしている。風車を過ぎたところの小さな公園のベンチでランチをとった。今日のランチはちょっと物足りないがそれは夕食でおぎなうことにしよう。今日のこれまでのコースは向かい風で疲れが昨日よりも早く出ている。

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フロト Vlothoの三叉路にあったアイスカフェ Eiskaffeでアイスクリームを食べながら休息した。ここを北上したところにバート・エィンハウゼン Bad Oeynhausenという大きな街がある。当初はここで宿泊する予定であったが地図の宿泊リストをみるといずれも高そうなホテルばかりだ。それで,時刻はまだ14時なのでさらに先のポルタ・ヴェストファリカ Porta Westfalicaを目指した。そこも大きな街だが中心街を離れたハウスベルゲ Hausberge地区に適当な宿がありそうだ。で,バート・エィンハウゼンには立ち寄らずにアウトバーンをくぐりそのまま直進して右岸のルートを走った。コステット Costedtの溜め池群の脇にある軽飛行場の脇を走る。ヴェーザー川の岸を走りポルタ・ヴェストファリカに架かるヴェーザー橋の小高いところにあるハウスベルゲ地区の庁舎に行った。ここに来るまでのコースの標識を見失って庁舎を通り過ぎてしまったが道を尋ねて庁舎にたどり着くことができた。

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しかし,今日は日曜日なので庁舎は開いていない。入り口のインフォメーション掲示板で地図の宿泊リストの場所を照らし合わせて宿探しに庁舎の丘を降りた。まずは歴史的なガストハウスのAlt Hausbergeを探し当てた。ここはハウプト通り Hauptstraßeにあるのだが,通りの入り口付近が工事中で通り名の標識が無い。ふたたび通行人にHauptstraßeを訪ねてようやくのことにたどり着いた。Alt Hausbergeの隣にはBett & Bikeの看板を掲げたペンションがあったが,ここはベルを鳴らしても誰も出てこなかった。日曜日なので休みにしたのだろうか。で,Alt Hausbergeを訪ねて空き部屋を尋ねると,€60だという言うのでオーケーした。部屋は確かに歴史的で外の木組みが内部にまで及んでいた。とても広い部屋だったので,溜まっていた洗濯物を部屋一杯に干すことができた。

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洗濯が一段落したのでポルタ・ヴェストファリカの街並みを散策しに出かけた。パンフレットによるとここは山の上にある近代的なテレビ塔と川の反対側の山の上にあるカイザー・ヴィルヘルム記念碑が売り物らしい。ヴェーザー橋を渡って記念碑に登る入り口まで行ったが,尋ねるのはパスした。もう歩きもバイクでもヒルクライムは御免だ。橋の下にはドイツ鉄道が走っていて駅が見える。通りかかった列車を見てカミさんと「帰りにはあれに乗って再びここを通るのかなぁ」と不安を交えて話した。なにせブレーマーハフェンからどうやって帰るのか分からないのだ。まぁ,何とかなるだろう事を期待して,近くの教会の鐘の音を聞きながら,宿に戻った。

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Alt Hausbergeのレストランで夕食をとった。メイン料理は豚肉にサラダと焼きポテトだが,量が多くて食べきれないほどだ。宿探しで疲れたからだろうか? レストランも歴史的雰囲気で壁には昔のポルタ・ヴェストファリカの街並みの絵が飾ってあった。

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7日目(2013年6月17日):ハウスベルゲ Hausberge〜レーゼリンゲン Leeseringen(75.30km)

朝食に出たパンは小ぶりのものが4個だ。コーヒーの残りをポットに入れた。レーサーパンツとジャージーに着替えて納屋に仕舞ってもらったバイクを取り出して8時40分にスタートした。今日は70㎞もの長丁場の道のりになる予定だ。ヴェーザー橋を渡り左岸の自転車道を走ると青空にくっきりとカイザー・ヴィルヘルム記念碑 Kaiser-Wilhelm-Denkmalが見えた。

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いくつもの輪を持つ水車の脇のコースをのんびりと走り,小一時間でミンデン Mindenに着いた。

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カミさんに「またぁ〜」と言われようがなんだろうが,まずはトイレ,トイレ。ミンデンは第二次世界大戦の爆撃で甚大な被害を受けた。街のシンボルの11〜13世紀の聖堂 Domも1957年に再建された。

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聖マリエン教会 St. Marienkircheを訪ねてたり旧市街を散策した。旧市街といっても戦後の再建だから新しいのだが。今日も街中の道路を掘り返す工事で喧しい。カミさんはスケッチブックでスケッチしようにもこんな情景ではその気にならないらしい。こちらはとにかく写真をパチパチ撮っておこう。

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マルクト広場もそれなりに賑わっている。

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広場の一角に市庁舎が建っている。バイクを停めた聖堂の近くのパン屋でサンドイッチとサラダをテイクアウト(現地ではGo outと言っていた)する。 1時間半ほどののんびりした旧市街散策を終えてミンデンを後にした。

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地図によるとミンデン郊外の右岸の自転車道は今年末まで工事中と書いてある。で,左岸に回ってみると標識がわからず道に迷い途方に暮れていたら,ドイツ人のライダーが数人やってきて彼らもここで道に迷ってしまった。彼らが地元の人に道を聞いて出発したのでその後に付いていくことにした。1時間ちょっと彼らの後について走り,ペテルスハーゲン Petershagenの手前の原発が見えてきたところで,直進する彼らと別れて,我々は本来の自転車道へと左折した。

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お昼時となっていたので自転車道脇のベンチを見つけてミンデンで買ってきたサンドイッチとサラダとホテルで入れてきたコーヒーでランチとした。ランチの量は少ないかと思ったが,食べてみると十分だった。そろそろ胃腸も疲れてきたのだろうか。

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自転車道はヴェーザー川を離れて田園風景の中を走るようになった。先ほどの原発と麦畑の中の風車が妙にリアルな対比をなす光景だ。

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ヴェーザー川自転車道を示す標識はどうやら赤ではなく緑のものだということに気が付き走って行くと,ミュスレリンゲン Müsleringerで複雑怪奇な標識に出くわした。ここで良く地図と標識の行く先の地名を照会すれば良かったのだが,左折した道をすすむと幹線道路に出てしまった。ガソリンスタンド兼クルマの販売店で現在地を聞いてみるとネンドルフ Nendorfだと言う。まったく反対方向に進んでしまったのだ。幸いにも3kmほどしか来ていないので,気を落ち着かせてスタンドのアイスとコーラを飲食した後に元の道を戻ることにした。ミュスレリンゲンの標識をよく見ると目標としたシュリュッセルベルク Schlüsselberg へのヴェーザー川自転車道は直進だとあった。時刻はまだ15時だからまだまだ余裕だ。

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当初はシュリュッセルベルクに宿を取ってそこからシュタインフーダー湖 Steinhuder Meerを一日かけてまわる別ルートを計画した。しかしカミさんは湖畔での休養の予定はお気に召さないようだ。旅の始めのザバブルク城,トレンデルブルク城への別ルートに懲りたのかも知れない。と言うわけでシュリュッセルベルクは通り過ぎて,川岸の鴨が驚いて飛び立つのを横目に,次のシュトルツェナウ Stolzenauも通過して北上した。16時半にエストルフの手前の運河で大きな船がパナマ式運河を渡るのを眺めた。

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エストルフ Estorfという小さな村の個人宿を2軒当たってみたが営業してないという。今日だけなのかそれとも廃業してしまったのだろうか。親切にも2軒目の個人宿の主人が近くのスポーツ施設にある自転車旅行者の宿泊施設に連れて行ってくれた。ユースホステルのような大部屋に我々だけが泊まれると言うことであったが,肝心の管理人に連絡がつかない。そのうちに雨がポツポツと落ちてきてちょっと凹んだが,案内してくれたおじさんに丁重にお礼を述べて,意を決して次の村に向かうことにした。

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2.5km先のレーゼリンゲン Leeseringenのガストホフに行ってみたがドアは閉まっていて,月曜日はお休みとある。地図の宿泊リストと道路脇の市街図を頼りに個人宿を当たってみることにした。個人宿Menzeの呼び鈴を押したら老婦人が出てきて€50だと言う。2階の部屋を見ろ,言うのでカミさんと上がってみるとこれが可愛い屋根裏部屋だ。カミさんも大いに気に入りさっそくオーケーした。子どもたちが使っていた部屋の面影が残っている。時刻は17時40分になっていた。エストルフを出たときの雨もすぐに止んで助かった。今日は向かい風の中を75㎞も走ってお腹も空いていたので,荷物を部屋に上げて先ほどのガストホフ近くに見つけておいたピッツァハウスに自転車で出かけた。Menzeおばさんは「ここレーゼリンゲンにはレストランはないので,さっき通ってきたEstorfまで行かないとダメ」だと言うが,もはやその元気は残っていない。

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アラブ系の店主,店員のピザ屋でマルゲリータとカレーソーセージをビールと取った。マルゲリータにはバジルの片鱗も見られないゾ。

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宿に戻り自転車を納屋に入れようと裏庭に回ると宿の夫妻が庭でお茶していた。招かれたので一緒に紅茶をいただき,怪しげなドイツ語と辞書と筆談でお互いの子どもや孫の事などを談笑した。なんと,夫妻の孫は4つ子で生まれたそうである。ここに来て,学生時代に習ったドイツ語の固い発音(デル,デス,デム,デン他)は使われていないことに気付いた。むしろ英語風の軟らかな発音である。ともあれこの旅ではじめて触れ合ったドイツ人との会話であった。時刻は20時を回っているが明かりが要らないほどの明るさだ。

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8日目(2013年6月18日):レーゼリンゲン Leeseringen〜ビュッケン Bücken(42.89km)

7時半の朝食はデーブルに溢れんばかり。ゆで卵の堅さはどうするかとおばさんが体を硬くしたり,軟らかくしたりのジェスチャーで聞いてくる。こちらもからだを縮込ませて固い卵を注文する。隣で食べていた夫妻も一緒のテーブルにやってきて,ビニール袋にランチを作って持って行け,と言ってくれる。

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食後にカミさんがスケッチブックのページで折り鶴をつくり「Danke schön,ありがとう」と書いて渡すと喜んでくれた。昨晩のお茶の時にもらった名刺を示して,日本に帰ったら写真を送ると約束して,再びツーショットを撮る。ご主人は脚が悪いそうで,今日はクルマで病院に行くそうだ。

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出発の準備が出来てMenze個人宿を9時半に出た。B215という幹線道路沿いの小さな村であるレーゼリンゲンを,素敵な思い出をもらっての,ルンルン気分でスタートした。コース脇には沢山のソーラーパネルが並んでいる。日本ではしまなみ海道ツーリングでお目に掛かったくらいだが,ここドイツでは風力発電のプロペラと共にあちこちで見かける光景だ。これらを広めて,いずれは原発を廃止するのだろう。

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一時間も走らないうちにニーンブルク Nienburgに到着した。この街は第2次大戦の空襲には合ってないので中世の旧市街がよく残っているという。マルクト広場のインフォメーションを探して街の地図 Stadtplanをもらう。ちょっと大きな街だと英語の案内がもらえ,更に大きな観光地だと日本語の案内が用意されていることもある。ここでは英語の案内パンフを手に散策に出かけた。まずはインフォメーションの前の自転車屋だ。中を見ると殆どのバイクは実用車(フェンダー,荷台つきのフラットハンドル)や電動自転車でロードバイクは置いてない。ここでバックミラーを€14.9で買った。

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マルクト広場の聖マルチン教会 Pfarrkirche St. Martinを見学した。中ではパイプオルガンの演奏があった。どうやら練習をしているようだ。しばし,聞き惚れてしまう。

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14世紀の歴史を持つ市庁舎にはレストラン(Ratskeller)が営業中だ。「ニーンブルクのガラス工」の銅像はこの地でガラス工芸が盛んであったことを現している。街中の道路面には,ハーメルンで見たような,熊の足跡のペイントがあり,これを辿って観光するように配慮されている。

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旧市街の外れには涼しげな公園があり,かつては貴族の館であった建物は現在の郵便局だ。ヴェーザールネサンス様式の木組みの家も残っている。現在の市庁舎には時報の鐘をコントロールする仕掛けがあった。街の市庁舎には,だいたい,インフォメーションがあってそのうえ無料でトイレが利用できる。マルクト広場と教会とラートハウスは旧市街に入ったらまず訪ねる場所だ。

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バイクを停めたインフォメーションに戻ると,隣の建物が警察博物館 Polizeimuseum Niedersachsenだという事に気がついた。無料なので見学した。殺人事件(?)の捜査現場,パトカーや制服の歴史などが展示されていてなかなか興味深かった。2階はさらに中世からの警察,裁判組織の歴史が展示されていた。

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のんびりと観光したのでここでランチタイムとした。ランチのあとで自転車屋で買ったバックミラーを取り付けた。右側通行なのでハンドルの左側に取り付けた。これでカミさんがついてきているかどうかを,後ろを振り返らずに,知ることが出来る。たっぷり3時間遊んだニーンブルクを後にして橋を左岸に渡った。左折して進むがどうもヴェーザー川が左手にあるようだ。自転車に乗った人々とはすれ違うのだが,どうも反対方向のようだ。ここでGPSを取り出してみるが,古い機種のため衛星の補足にえらく時間が掛かる。方位磁石に切り替えてみたが,較正をやってないので北の方角と太陽の位置がどうも合わない。スントの時計で北を探すも,これまた較正してなくて北は分からない。行きつ戻りつした結果カミさんの意見に従って元に戻ることにした。戻ってみると,ニーンブルクからはマルクローエ Markloheに向かうのだが標識は2方向を指している。どうやら早とちりで反対側に進んだようだ。ここは注意して,ヴェーザー川自転車道のマークがある右方向にハンドルを切った。

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アウトバーンをくぐってこれに沿って走る標識にしたがって右折するとすぐの三叉路に左折の標識があった。その先でふたたびアウトバーンをくぐると道は無くなってアウトバーンに出てしまう。2度もアウトバーンをくぐるなんておかしいなぁと思いながら,ここは先ほどの轍を踏まないように元に戻ることにした。先ほどの左折の標識をよく見ると矢印標識がとりつけてあるポールがねじれていることがわかった。そこを通りかかった自転車のおじさんが,ヴェーザー川自転車道は直進だと教えてくれた。このポールがねじれていなければそのまま直進すれば良かったのだ。危ない処だった。

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地図に従って鉄道を2回くぐってマルクローヘ Markloheを通過して進む。ゼッベンハウゼン Sebbenhausenで運河を渡り,シュヴェリンゲン Schweringenの村の教会で一休みした。時刻は15時15分だった。どんな小さな村にも教会がある。教会に入ってみると封を切ってないペットボトルがあり,ご自由にどうぞとかいてある。コップに一杯いただいた。本当はここでいくらか寄付していくのだろうが…。庭ではカミさんがスケッチを始めている。どうやら対象と自分の気持ちが一致したようだ。とにかく写真に収めておくという自分のやり方とカミさんのスケッチのやり方は違うようだ。ここを尊重しなくて「せっかくかさばる道具をもって来たんだから,どんどん描いたら」なんて不用意に口走って危うくケンカになりそうになったことを思い出して,スケッチが終わるまで待つことにした。すると散歩をしていたおじさんが英語で「この町のことを書いた本があるので帰りに寄ってくれ」と話しかけ,住所を教えてくれた。郷土史の研究者か作家だろうか。カミさんのスケッチが終わって出発したら,後ろから件のおじさんがオーイと呼んでくれた。が,この先で宿を探さなくてはならないし,そのような本にもあまり興味は湧かないので,挨拶をして先を急いだ。教会をスケッチしてのを見ていたので,教会やキリスト教に興味があると見られたのだろうか。

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17時にビュケン Bückenについた。立派な司教座教会はあるがインフォメーションは無いので,地図の宿泊リストと町の案内掲示板を照合しながら4軒回った。1軒は営業しておらず2軒は不在だが営業停止の様子。交渉できた1軒ではダブルルームは無いと断られた。ホテルに当たってみたら€69と高い。次のホーヤ Hoyaの町まで走らなくてはならないかと覚悟してリストの最後の個人宿を当たってみた。

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これが大正解だった。個人宿 Rosengartenは家の前にある看板が示すようにヴェーザー川自転車道を走るライダーに優しいバラが咲く庭が素敵な個人宿だった。英語を話す女主人は部屋を見せてくれて,朝食付きで€50だという。カミさんも自分もすっかり気に入ってオーケーした。この旅の前に読んだ本やホームページでは,宿代をまけてくれなんて交渉をしているが,我々は言い値で即オーケーしている。カミさんも「まけてもらう交渉なんてしなくていいよ」とこれまでの宿の提供を受け入れてきたのだ。今後もこの調子でいこう。屋根裏の部屋は広く,きれいでおまけに窓からみる階下の庭はまさにヴンダーバー wunderbar(素晴らしい)だ。

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荷物を部屋に置いてバイクを納屋に格納し,近くのスーパーマーケットに買い出しに出かけた。スーパーでは今宵の夕食のビール,サラダ,ハム,ヨーグルトの他に明日の水を買った。今日の宿も無事に見つかってホットして。スーパー内のパン屋でケーキとコーヒーを飲食した。

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宿に戻って,ご自慢の庭を散策した。バラだけでなくいろいろな花が咲いていた。宿の玄関を入ると4匹のワンちゃんの熱烈な歓迎を受けた。そのうちの大きな一匹はとてもフレンドリーで立ち上がって顔を舐め,股に顔を突っ込んで親愛の(?)情をを示してくれた。

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今日は日本晴れ(ドイツ晴れ?)の天気で暑いというほど気温が高かった。しかし空気は爽やかで顔に汗をかくと言うことはなかった。さっぱりとシャワーを浴びて,恒例のジャージーの洗濯をした。部屋が広いので干し場も広くとれる。一息ついたところで夕食だ。スーパーで買う夕食はビール,サラダ,サンドイッチが定番となった。

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9日目(2013年6月19日):ビュッケン Bücken〜アヒム Achim(55.50km)

今日の朝食も2人分きっかりの量だ。パンを1個とコーヒーをランチ用に取り分けた。8時20分にワンちゃんたちに見送られてRosengarten宿を出発した。

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25分でホーヤ Hoya市街を抜ける。その昔の学生時代に東京都下の保谷(ほうや)に住んでいたことを思い出す。街中の教会もなかなか立派だ。しかし,路面はゴツゴツの石畳だ。脇を抜けるクルマを避けようとハンドルを切ると石畳の割れ目にハンドルを取られて怖い。でも,ドイツでのクルマの自転車に対する態度は優しい。追い抜くときは大きく迂回してくれるし,対向車があると自転車の後ろで抜かずに待ってくれる。日本のように「邪魔だ,退け退け」と煽られたことはこれまでにはない。

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ホーヤを抜けるとヴェーザー川に堤防が出現して,川面は見えなくなる。宿を出て1時間ほどのこの辺りは風力発電の風車群だ。

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オイステ Oisteを過ぎて一般道脇のコースにあったインフォメーションの掲示板で,昨日のビュケンで出会った自転車の夫婦に出会った。彼らは犬2匹を連れて自転車旅を続けている。イヌが疲れるとリヤカーに乗せて,一緒に旅しているという。なんとも羨ましい光景だ。イヌはペットではなくて家族なのだ。この先で雨がポツポツと落ちてきたがフェルデンまではあと3㎞ほどなのでそのまま進んだ。

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アラー川に架かる橋を渡って11時25分にフェルデン Verdenに到着したときには雨は本降りになっていた。聖ヨハニス教会 St.Johanniskirche脇の駐輪場でパニアーにカバーを掛け,隣の市庁舎のインフォメーションで市街図とトイレ案内図をもらい,傘をさして市街見物に出かけた。

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フェルデンは第二次大戦の影響は大きくは受けなかったので中世の旧市街がよく保存されている。この町は馬の生産と馬術競技の中心地となっている事を街中の馬のモニュメントが現している。旧市街の外にはドイツで唯一のドイツ馬博物館 Deutches Pherdemuseumがあると地図が示しているが立ち寄らなかった。そういえば,旧市街を出て工場群を抜けた辺りで馬を運んでくる何台ものクルマ,乗馬服に身を固めた男女,馬術の練習をしているいくつもの馬場の脇を自転車道は走っていたっけ。

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大聖堂 Domは1290年から200年もかけてつくられた。回廊を歩いて堂内に入っていく。祭壇の反対側には立派なパイプオルガンがある。

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Domを出ると,隣に聖アンドレアス教会 St. Andreas Kircheがこじんまりと建っている。内部に入ってみるとこちらには誰も居ない。と思ったら案内人らしき老人がいた。「どこから来た? 日本か,ドイツ語はわからないか? 奥さんはドイツ語がわかるか?」などなど聞かれた。それで終わりかと思ったら,ドイツ語が分からないと分かりながら,えんえんとこの教会の事を説明しだした。司教イゾ Bischofts Ysoがどうたらこうたら,隣のドムはカトリックだが,ここはプロテスタントだとか。一区切りついたところで丁重にお礼をのべて退散した。案内人ではなくて普通の街のお年寄りだったのかも知れない。われわれ日本人だったら日本語の分からない外国人に神社・仏閣のことを日本語で延々と説明するだろうか?

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トイレタイムのために市庁舎に戻り,その後で小さなファーストフード店でランチをとった。こういう店なら料理の写真があって,現物を指させば望みのものが食べられだろうと踏んだからだ。しかしメニューは多くなく,結局はシュニツェル,トルコ風ソーセージ,フライドポテトにビールというランチになった。

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のんびりと観光したフェルデンを出たときは13時だった。コース沿いの民家の庭にはコウノトリの巣が見られる。コースはそれほど疎らではない石畳だが,ゴツゴツと走りにくいので脇の小道を走る。1時間少し走ったところの橋の下で小休止とする。ポットに入れたコーヒーを飲んだ。小柳津さんやAnPonmanさんによると,ツーリング途中の水分補給の苦労話が出てくるが,我々は2人で1日2リットルの水で十分足りた。自転車に走り慣れている身体だからだろうか。この自転車道はもちろんのこと街中にもコンビニなどはない。たまにキオスクがある事もあるが,水の補給はスーパーマーケットで買い置きしてボトルに小分けして飲んでいる。一番はカフェーを見つけたらのんびりと座ってコーヒーやミネラルウォーターを飲むスタイルだと思う。これまでののんびり旅ではそんなに喉が渇くという体験は殆どなかった。

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15時半にアヒム Achimに入った。さっそくインフォメーションを訪ねて,親切な係の人が電話をしてくれた個人宿 Aukamp-Danckerを紹介してもらった。宿の準備が出来るまでの間に街をぶらつき,ショッピングセンターでお茶した。今日も暑いくらいだったので冷たいドリンクは美味しい。ショッピングセンターではホンダのフィットを展示販売していた。こちらではJAZZという名だった。帰ったら息子に話してやろう。カミさんはこの暑さで寝間着の長ズボンでは寝苦しいと言うので,スポーツ店でショートパンツを買った。

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のんびりと時間を潰して宿に行ってみると,どうやらご主人がインフォメーションまで迎えに来てくれたらしい。夫人は英語で話してくれたがご主人はドイツ語だけだ。ご主人は会えなかったのでちょっと不機嫌な様子だ。しかし,ドイツの亭主は概してぶっきらぼうで愛想はお世辞にも良いとは言えないので,これが普通だろうと無視することにした。個人宿はFerienwohnungとPrivatzimmerを兼ねていて,我々は一晩の厄介なので朝食はあるが自分たちでやってくれと言うことだった。Ferienwohnungとは長期滞在者が食事を作れるようなキッチン,調理用具が揃っている貸し部屋ようなものらしい。Privatzimmerは短期滞在者のための貸し部屋で朝食は準備してくれるスタイルだ。BBQ道具が用意された庭を自由に使ってくれと言われた。うれしかったことには,ここはシャワーではなくバスタブがあったということだ。水栓をひねったがお湯が出てこないので,隣の家屋にご主人を訪ねた。例によって不機嫌そうな調子であれこれと見てくれたがどこも異常がないという。しばらく待てといわれてそうしていたら,やがてお湯が出てきてヤレヤレ。

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この旅で初めてのバスタブにゆっくりと浸かり,その後で足で踏んで洗濯をした。さっぱりして再び街に出てショッピングセンターで夕食の買い出しに出かけたが街の観光はパスした。宿の冷蔵庫には朝食用のハム,チースがあったのでパンとサラダを買ってきてキッチンで食べた。ところが用意されていたポーチに入ったチーズは,腐っているんじゃないかと思ったほどの独特の臭いがするものだった。キッチン中に臭いが充満してちょっと辟易した。

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10日目(2013年6月20日):アヒム Achim〜ブレーメン Bremen(30.44km)

例の臭いチーズを我慢しながら朝食をセルフサービスで食べる。8時半にAukamp-Dancker宿をスタートする。パニアーを荷台に取り付けようと家の壁にバイクを注意深く立てかけたにもかかわらず,おじさんに叱られた。どうも最初から最後までおじさんとはウマが合わなかったようだ。

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自転車道の正規ルートはアヒムを南下してテディンクハウゼン Thedinghausenを回るコースだが,我々は別ルートのヴェーザー川右岸を走るコースを取った。アヒムから7kmのボレンBollen辺りでは川の堤防を走ることになった。利根川サイクリングロードってところかな。堤防の下にはルピナスが咲いている。

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アウトバーン沿いのヘメリンゲン Hemelingenの港湾工場地帯を延々といやになるほど走る。さらに一般道B75に沿ってハステット Hastedt辺りもまだまだ工場地帯が続いていた。ついさっきまでは緑の田園地帯を気持ちよく走ってきたのに… この辺りで左のペダルから異音が聞こえてくるようになった。どうやらペダルのベアリングのグリスが切れたのか。

ブレーメンの中心部に近くなると自転車道は住宅地の川沿いを走るようになった。河川敷は市民の散歩する姿があちこちにある。ここまでの川沿いのコースで困ったことがある。何の樹の花かは分からないが,タンポポの綿毛よりも大きい街路樹の綿毛が雪のように降ってきて,それが眼に入ると眼が痒くて堪らないのだ。

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教会の尖塔が見えてきてブレーメン中心部が間近になってきた。ヴィルヘルム・カイザー橋 Wilhelm-Wilhelm-Brückeの袂からから大聖堂の塔を目指してマルクト広場,市庁舎,教会(聖ペトリ大聖堂)の三点セットのあるブレーメン Bremenの旧市街に到着したのは10時半前だった。第二次世界大戦中のブレーメンはフォッケウルフ飛行機製造工場を持ち173回の戦略爆撃で深刻な被害を受け,市内の建物の58%が破壊され,3,562人が死亡(当時の人口は42万4千人)したという。

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まずはトイレ,トイレ。しかし,我慢も限界に近くなりマルクト広場の端のマクドナルドに飛び込んだ。ホッとしてコーラとアップルパイを食べていると日本人のグループが話しかけてきた。この旅で出会った初めての日本人,カミさん以外の日本語会話であった。日本から自転車を持ってきて1ヶ月の自転車旅をしている,費用は一日€100くらいでそのうちの宿代は€50くらい,後半はロマンチック街道を走る,などなど話すと驚いたようすだった。グループの年代はどう見ても我々と同じくらいだ。でも,昨年は我々もあなた方のようにツァー旅行でドイツのローテンブルクを回ったりしてたんですよ。

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一息ついたところでインフォメーションで地図をもらいユースホステルの場所を尋ねた。大都市という先入観のためかもらった地図と実際の街との距離感がちぐはぐで,ここでも行き過ぎたり戻ったりして2度ほどユースホステルの場所を街の人に尋ねる羽目になった。ようやく探し当てたユースホステルはヴェーザー川の岸辺に建っていた。これじゃ川岸をくれば良かったんだ。到着した時間が12時過ぎだったので,チェックインは2時まで待たねばならなかったが,シャワー・トイレ付きの個室(4人部屋を二人で使用)が確保できた。大都会のユースホステルとあってか朝食付きで€69.20であった。大都会ゆえに個人宿は少なくその上に安ホテルをさがすのも面倒だったのでこの宿代でオーケーとした。荷物と自転車を預かってもらってジャージー姿でランチと街の観光に再び出かけた。

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ヴェーザー川の岸辺のカフェレストランで本日のパスタ(二人で€16.40)をデュンケルビールと共に取った。パスタにはこれまではなかったパンが添えられている。今日のビールは旨いしパスタも上々だ。ここブレーメンでのビールメーカーはBecksだ。デュンケルはちょっと甘みがあってピルスよりもコクが深い。夜だったらさらにピルスを注文していただろう。

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ユネスコの世界遺産の市庁舎に行ってみる。1405〜1410年に建てられていて入り口の左に,例のグリム童話のブレーメンの音楽隊の像がある。ロバの脚はピカピカに光っている。どこにでもあるように,これを触るとハッピーになるというので寄ってたかって触るからだ。もちろん我々も試してみた。この旅行がここまで続けてこられたんだから,もうすでにハッピーなんだけどね。市庁舎の内部を見学するが,とくにこれと言ったものはなかった。ところでブレーメンの音楽隊は童話の中ではブレーメンには来ていないのだが,ここブレーメンに音楽隊のモニュメントがあるのは…?

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市電の線路を渡ってマルクト広場に建つローラント像 Roandを見に行く。これも1404年の建立で,市庁舎とともにユネスコの世界遺産になっている。ローラントは実在の人物でもあったそうだが,ローランの歌の騎士の物語によってあちこちで知られているようだ。ブレーメンではこのローラント像はハンザ同盟の自由都市のシンボルでもある。ところでブレーメンが港町だというイメージは,我々のようにヴェーザー川を旅してきたものには理解できるが,バスに乗せられてポンと連れて来られるツァーの観光客には理解できないかも知れない。北海からここまで大きな船が入ってくるのだ。マルクト広場をぐるっと見渡してみると中世の旧市街の中にガラス張りの近代的な議事堂 Haus der Bürgerschaftがある。その隣はまた中世の建物のブレーメン商工会議所 Schüttingだ。

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聖ペトリ大聖堂 St. Petri-Domに入ってみた。説教壇の回りや祭壇の前には沢山の椅子を設えている。創建当時の時計もある。第2次世界大戦で落ちたのだろうか。カミさんが世界の平和を願うろうそくを寄進した。世界平和よりもこの先の我々の平和を願ったのかも知れない。

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マルクト広場の外れに郵便局をみつけた。インフォメーションで買っておいた絵はがきを書いて,切手を自販機で買った。ハン・ミュンデンで葉書を出したときに€0.75であったのでボタンを操作して75セントの切手を買った。残りの金額をどうするか聞かれたので切手で受けとるボタンを選択したら,端数のお釣りがすべて切手で出てきた。この端数切手を貼ったら住所が見えなくなってしまう。仕方なく始めからやり直して75セント切手を買い直した。後から分かったが,75セントのボタンを必要枚数の回数だけ押せば良かったようだ。

郵便局を出ると目の前に面白そうな建物があった。階下はビアホールになっているのでビール工場かと思って入ってみた。どうも工場ではないようだ。地図を見て辞書をひいてみると裁判所ではないかと判断した。裁判所の階下にビアホールだって?!

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再びマルクト広場に戻り,目についた路地に入ってみた。キンキラキンの看板を「地球の歩き方」でみた覚えがあり,開いてみると果たして,一番人気のベトヒャー通り Böttcherstraßeであった。ブティックやアクセサリーに興味がない自分にとっては一番人気の意味が理解できないが,カミさんは小さな店が並んでいるここが面白かったようだ。通りの出口には日本語で歌舞伎とある寿司屋があった。まだ日本料理が恋しいという気分ではないのでパスした。

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Unser Liebfrauenkirche(我らが愛する夫人教会,聖マリヤ教会のことか?)に入ってみると交響楽団の練習にであった。

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デパートに行ってみたが,デパ地下も無いし食料品売り場も無い。トイレを50セント払って使っただけで早々に立ち去る。

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17時に市街散策を終えてユースホステルに戻ってきた。電子キーを受けとり部屋を開けようとしてもダメではないか。カードキーを当てて,青ランプでドアノブを回してもドアは開かない。フロントで開け方を聞いてみると,青ランプが点灯したら更にドアノブの下にある小さなノブを回さないとダメなことがわかった。これがドイツなんだ。シャワーを浴びて洗濯物を干しているとヴェーザー川が霞んできた。雨が降ってきた。とにかくさっぱりしたのでロビーに降りて2度目のデュンケルビールを飲んだ。ドイツのユースホステルではお酒が飲めるんです。部屋に戻り,手持ちのパン,リンゴ,おつまみなどで夕食を済ませた。

カミさんと相談して,予定ではブレーメンに連泊するつもりだったが市街の観光も十分だから連泊は止めて,その空き時間をヴェーザー川自転車道の最終地のクークスハーフェンまでの旅に充てることにした。日本でドイツ自転車旅を計画した時点でも,実際にヴェーザー川自転車道を旅している途中でもヴェーザー川自転車旅の終点はここブレーメンとしていた。しかし10日間のドイツ自転車旅を体験して,すっかり,その虜になったカミさんは「ここまで来たんだから地図の最終地の北海を見てみよう」と鼻息を荒くしている。こちらも反対する理由もなく,渡りに舟とばかりに,計画の変更に賛成した。これまでのペースならば,後半のロマンチック街道自転車旅の予定も十分にこなせるだろう。現地で計画を変更するという(我々にとって)大胆な決断がこうもあっさりと行くとは…。

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11日目(2013年6月21日):ブレーメン Bremen〜ローデンキルヒェン Rodenkirchen(74.49km)

7時15分に朝食をとった。昨晩は団体宿泊のガキどもの足音がうるさくてちょっと寝不足気味だ。正直なところもうユースホステルには個室でも泊まりたくはない。カフェテリア形式の朝食なのでちょっと多めにパン,ハム,チーズなどを取ってきてランチを確保した。昨晩の雨はそのまま降り続き,この時間も降っている。

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レインウェアーに身を包み,バイクの雨支度をしたりしたので9時25分という遅いスタートとなった。シュテファニー橋 Stephanibrückeを渡りヴォルトメルシュハウゼン Woltmershausenの住宅街を左折する標識を見落として直進してしまい航行灯台で行き止まりになってしまった。

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引き返して本コースに戻ることが出来て,線路が何本も走る橋を渡って更に進んだ。このコースミスで30分ほど雨の中を走り回った。ヴェーザー川には大型貨物船が行き来する光景が増えてきてここブレーメンが港湾都市であることを実感した。

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迷わずに来ればブレーメンから13㎞ほどの地点(地図ではポイント16)で,行き交う大型貨物船を眺めながら,ユースホステルでゲットしてきたランチをとった。この時点では雨はいったんは上がったが,雨中走行と迷い路で時刻は11時45分になっていた。

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この後の自転車道はヴェーザー川を離れて進む。ここで数件の茅葺き屋根の農家に出会った。赤い瓦の屋根ばかり見慣れていたので珍しい光景だった。13時05分に地図のポイント21の手前の無人ミルクスタンド Melkhusで,ふたたび降り始めた雨を避けて,小休止をとった。ここで反対方向からやって来て一緒になった夫妻が英語であれこれと説明してくれた。ミルクスタンドには裏の牧場で搾乳した牛乳からつくったアイスクリーム,牛乳の他に手製のケーキやコーヒーが置いてあった。我々はケーキ,アイスクリーム,ミルクでエネルギーを補給した。ミルクにはバター牛乳 Buttermilchと全乳 Vollmilchがあったので全乳を飲んでみた。これは普通の(濃い)牛乳だった。

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13時50分には跳ね橋が上がるのを待ってこれを渡った。14時10分に立派なモニュメントのある船着き場の脇の鉄道駅に到着した。駅名をみるとエルシュフレト Elsflethとある。そこにあった標識と地図を照らし合わせてみると,どうやら反対方向からこの駅に到着したらしいことがわかった。またまたどこかで標識を見落としてコースを間違ったらしい。標識にしたがって来た路を戻って北上した。

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一時間ほど走ると迂回路の標識が出てきた。その方向に進むと波止場に出た。どうやらブラーケ Brakeの街を迂回したらしい。さらにこの先で自転車道から一般道に入り込んでしまうがそのまま直進したら本コースに戻れた。あとに続くドイツ人の4人組も道に迷ったようで我々と同じコースに入ってきてしまったようだ。雨のために認知能力・注意力が低下したのだろうか,今日は何回もコースを見失った。

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ヴェーザー川の堤防の下道を水を跳ね上げながら走り,16時にローデンキルヒェン駅 Rodenkirchen Bahnhofに到着した。ヴェーザー川自転車道で鉄道駅に到着したのは,初めてのことかな。列車が入ってこなければ駅とは分からないほどの駅だった。駅前広場に市庁舎がありインフォメーションの看板があった。市庁舎はすでに閉まっていたので,掲示板の市街図と地図の宿泊リストを参照しながら今日の宿探しだ。

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駅のほど近くにホテルAlbrechtsがあったので交渉した。宿代は朝食付きのダブルルームで€69というのでオーケーとなった。バイクを納屋に入れてシャワーを浴びて洗濯というお定まりのコースだ。雨も上がったので近所のスーパーに水を買い出しにいったついでにこじんまりとした聖マットホイス教会 St. Matthäus-kircheを見学した。ホテルAlbrechtsでの食事は女主人に英語が通じず,隣のおじさんたちが食べていた魚料理と肉料理を指さして注文する。カミさんはシュニツェルと豆料理,自分はニシンのマリネとスクランブルエッグとジャガイモ料理だ。カミさんのシュニツェルには船に見立ててか帆のようなベーコンが添えられている。ところで,今日のビールは失敗だった。カミさんがデュンケルを注文しようとするが通じなくて,黒いビールと注文した。女主人は黒いビール瓶を持ってきて,これで良いか,と聞いてきたのでオーケーした。ところが,それはノンアルコールのデュンケルビールだった。妙に甘みが舌に絡みついて,食事には合わなかった。瓶のラベルを良くみればアルコールフリーとあった。今後は注意しよう。夕食はノンアルコールビールともに€29.30だった。

今日は雨にもかかわらず長い距離を走った。明日の朝は雨が上がって入ればバイクに注油しなければ。

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12日目(2013年6月22日):ローデンキルヒェン Rodenkirchen〜ドルマー・ノイフェルト Dorumer-Neufeld(54.16km)

7時10分にカフェテリア形式で朝食をとる。パンもチーズもハムもコーヒーもたっぷりとあるので,例によってランチ用に少しいただく。

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昨日の雨中の走行のままに納屋にしまったバイクはチェーンに少し錆が浮いている。注油と泥落としをしているとオランダ・ドイツ人のライダーがやってきて「そんなに毎朝,バイクを掃除するのか?」と聞くので「昨日の雨で泥だらけだからだ」と英語での会話をする。彼らはこのあと,オランダからスウェーデンにサイクリンだそうだ。「我々は北海に行ったらフランクフルトにもどり,ロマンチック街道を走るんだ」と話すと,ジェスチャーを交えて「ロマンチック街道はこことは違って,すごいアップダウンがあるぞ」と脅かす。9時20分にホテルAlbrechtsを出発する。今日は雨はどうだろうか?

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牛の散歩(?)に出会ったり,踏切での電車を見送ったりしてブレクセンのフェリー乗り場を目指す。

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10時15分にノルデンハム Nordenhamに入り,桟橋の標識にしたがってそこを見物。自転車道に戻りノルデンハムの街を通過する。

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ヴェーザー川自転車道はこの辺りでは歩道を走ることが出来る。ここではバイクは車道側を走ることになるが,なんと,モーターバイク(原付クラス)もここを走ることが出来る。しまなみ海道とおんなじだ。歩行者とバイクが上下に仕切られた標識は両者混在の走行となる。クルマの交通量が多く,それほど広くない歩道でよく見られた。さらに状況によってはこれにモーターバイクもオーケーという歩道もあった。しかし,そもそもモーターバイクなどほとんど見かけなくモーターバイクよりも自転車の方が断然に多いというお国だ。

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フリートリヒ・アウクスト・ヒュッテ Friedrich-August-Hütteに入ったところで標識を見失い,フェリー乗り場への路が分からなくなる。地図を見ているとおじさんが途中まで先導してくれるというので着いて行く。目立たないところに自転車道の標識があったのを発見。ブレクセン Blexenのフェリー乗り場に前後にパニアーをつけてキャリアーにテントを積んだ初老のご婦人が単独でやってきた。どこまで行くのだろうか? 押し歩きするのもさぞかし重いだろうなぁ。

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11時05分に到着したので次の便の11時40分までしばらく待っているとフェリーがやって来た。バイクを積んで渡船料の一人€3.70(バイクとも)を払う。心地よい川風に吹かれていると15分ほどでブレーマーハーフェン Bremerhavenに到着した。ブレーマーハーフェンはブレーメンとともにこの2都市だけでブレーメン州(正式名称は自由ハンザ都市ブレーメン Freie Hansestadt Bremen)をなしている。その名前が示すようにブレーメンの港という位置を占めるこの街は第2次世界大戦では徹底的に破壊された。それで,この自転車旅で経験する初めての近代的な街だ。

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船着き場から街中 Mitteに入り市立劇場のあるホイス広場 Th.-Heuss-Platzのベンチでランチをとった。海が近いのでカモメがやってくる。

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マクドナルドを見つけたのでシェイクをテイクアウトして食べながらアーケードを抜けて大教会 Große Kircheを見る。教会広場ではちょっとしたお祭りが催されているようだ。教会のバザーだろうか。野菜・果物店にはシュパーゲル(アスパラ)が並んでいる。シュパーゲルの季節はそろそろ終わりかな。

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遊覧船乗り場の近くのインフォメーションで市街図をもらってドイツ船舶博物館 Deutches Schiffahrtsmuseumの別館のUボート「ヴィルヘルム・バウアー」科学技術博物館 Technikmuseum U-Boot “Wilhelm Bauer”を€1.5払って見学する。カミさんはちょっぴりご機嫌斜め模様。クリマ・ハウスをパスしたからか?

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船内に入ると前部魚雷発射管が並ぶ。狭い船内を抜けて機関室,居室,司令室などを見て歩く。説明によると48人の乗員にたいしてトイレは前後部にたった2つとある。

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30分ほどUボートを見学してクリマ・ハウス Klimahausに戻って見学した。入館料€14.5はちょっと高くないかい。ブレーマーハーフェンは東経8度に位置しており,この経線上にある地域の気候(温度・湿度)をジオラマと共に体験する博物館だ。残念ながら,館内は撮影禁止だ。その館内の様子は公式Webページでのぞき見ることができる。冷たい氷やサハラ砂漠の熱帯やジャングルなどを体験した。その中で,自分の生活環境だとどれくらいの二酸化炭素を年間に排出するのかをシミュレートするコーナーがあった。やってみるとドイツの平均よりも多かった。原因はクルマでの移動と家屋の構造だ。まず出来ることは自動車の使用を減らすことかな。

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クリマハウスで1時間半ほど遊んでカミさんの機嫌もなおったようだ。バイクを停めた広場に戻り,ビスケットなどを小腹に入れた。時刻は16時20分だが予定していたここでの宿泊を止めてドルマー・ノイフェルトまで行くことに予定変更したので,ブレーマーハフェンの港風情を楽しみながら出発することにした。

ところで地図を見るとヴェーザー川はここブレーマーハーフェンで終わっているように見えるが,この先の北海の干潟に漏斗状に開いている。クークスハーフェンまで行けば北海に触れる訳だ。

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ホーフェ Hofe辺りで雨が降ってきた。雨支度をして,堤防に建つホテルを横目に宿泊地に向かった。18時半ころにドルマー・ノイフェルト Dorumer-Neufeltに着いても雨は降っていた。この辺りは保養地になっているようで個人宿は少ない。探し当てた1軒は不在で,もう1軒はどこにあるか探し当てられなかった。ちょっと戻ったところにホテルがあったことを思い出して行ってみて交渉開始だ。保養客を対象にしたこぎれいなホテルCuxlandの値段は€83という。雨の中の宿探しもいやなのでオーケーとなった。しかし,自転車の旅人を考えてないらしく,バイクの保管場所はないという。しかたなくホテル入り口の軒下のバイクラックに停めた。雨が降らなきゃいいが。もはや日課となったシャワーと洗濯の後に夕食に出かけた。幸いなことに雨は上がっていた。

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この辺りはFerienwohnung(貸し別荘)やキャンプ場が多く,その割にはスーパーマーケットが近くにはない。数件あったレストランは半分は閉まっている。ギリシャ料理を出すというレストランMykonosに入った。まずはデュンケルビールだ。雨の走行でカミさんはちょっと疲れ気味のようだ。だが焼き飯のような米が出てきて食欲は回復したようだ。で,もう一杯ビールだ。お勘定をお願いしたら,サービスにと,身体に良いと言うリキュールのようなものを持ってきてくれた。カミさんは一口啜ってパス。そうだこの味は去年のオランダ・ドイツ団体旅行でもらったグミのラクリッツ・シュネッケンの味だ。どうやら甘草のリキュールのようだ。

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酔い覚ましにと川沿いのキャンプ場まで散歩した。時刻は22時になるというのにきれいな夕焼けだ。この分では明日は快適なヴェーザー川自転車道の旅の最終日を迎えられそうだ。

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13日目(2013年6月23日):ドルマー・ノイフェルト Dorumer-Neufeld〜クークスハーフェン Cuxhaven(32.53km)

8時にカフェテリアスタイルの食堂で朝食をとる。

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あれやこれやの支度に手間取り,ホテルCuxlandを出発したのは10時になってしまった。ドルマー・ノイフェルトを過ぎるとカッペル・ノイフェルト Cappel-Neufeld,シュピーカ・ノイフェルト Spieka-Neufeldとノイフェルトが付く村を通過していく。ノイフェルトは新しい畑という意味なので,ここら辺りは干拓して畑を作った土地だろうか。道路脇の標識は,上下に市町村名を示して,ここが境界だと教えている。下側は黄色に赤の斜線で市町村の終わりを示し,上側は白で市町村の始まりを示している。シュピーカ・ノイフェルトの辺りは見渡す限りの草原で,そのはるか向こうに茶色に濁ったヴェーザー川の河口部が見えている。

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アレンシュ Arenschで雨がパラついてきたのでパニアーをレインカバーで被う。この先はこの先はダートコースなのでヴェーザー川沿いの別ルートを走ろうとして回ってみるとこちらもダートコースだ。どうしようかと行きつ戻りつしていたら,電動シニアカーのおじさんがこの先は荒れているが別ルートはアスファルト舗装だ,と教えてくれた(たぶんそのようにドイツ語で言ったと思う)。もう一度もどり,別ルートを進むと直ぐにダートコースになった。行けども行けどもダートコースだ。パラつく雨のお陰で埃が舞い上がらないのはありがたい。そうこうして走っていると雨は止んで,ザーレンブルク Sahlenburgの手前辺りでなにやら空がカラフルになった。近づいてみると干潟でウィンドサーフィンやカイトサーフィンをやっていた。近くで写真を撮ろうとしたら門番のおじさんに「ナイン」と停められた。カードを持っていないと入れないという。11時半になっていたのでランチにしようとベンチを探したが,良い場所がなくて,更に先に進むことにした。

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ザーレンブルク Sahlenburg,ドゥーネン Duhnen,デーゼDöseとクークスハーフェンに近づくにつれて別荘やホテルが建ち並び,日曜日と言うこともあってか散歩する人や土産物をあさる人たちで村(?)は溢れている。この辺りの干潟 Wattenmeerは世界遺産に登録されているそうでアザラシや海鳥が飛び交い,馬車でのツァーもあるそうだ。それでこんなに人出が多いのか。九州の佐賀に住んでいた頃は有明海の広大な干潟があったが,ムツゴロウじゃ世界遺産にならないよね。干潟を見下ろす高台には第二次世界大戦の砲台が残っている。

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街並みを抜けても散歩する人波は絶えない。デーゼ地区のクーゲルバーケ Kugelbakeに到着して,あとどれくらいでクークスハーフェンかと地図を見ていると。中年夫妻の夫人が英語で「どうしたのか? どこまで行くのか? ここはクーゲルバーケという名所でこの先の渚を走って行くとやはり名所のアルテリーベに行ける」などなど親切に教えてくれた。「カッセルからヴェーザー川自転車道を走って,ここクークスハーフェンの北海を見に来た。これからフランクフルトにもどりロマンチック街道自転車道の旅を続けるんだ」など話してお別れする。この頃になるとお別れの言「アウフ・ヴィーダーゼーン」の他に「チュース Tschüs」なんて言葉もスッと出るようになっている。12時半になっていたのでベンチでランチを食べながら,目の前にある北海 Nordseeを感慨深げに眺めた。

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北海の波打ち際にはフード付きのベンチがあちこちに見られる。今日に限らず風はいつも強く吹いているのだろうなぁ。で,バカンスに来てこのフード付きベンチを借りて北海を眺めながら休養するんだろう。波打ち際は満潮時間なのかヒタヒタと海水が押し寄せて,自転車道は所々で冠水している。

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アルテ・リーベ Alte Liebeに到着して,バイクを置いて辺りを散策する。古い灯台,第二次大戦の名残の機雷,灯台船のElbe 1が見所か。Elbe 1の館内見学(有料)はパスして,桟橋から見渡す限り続く茶色の北海を眺めた。とうとヴェーザー川が北海に注ぐ地点に来たのだとカミさんとじぃ〜っと佇んでいた。「しかし,茶色の北海よりも緑色の北海を見たいねぇ」とカミさんがポッツリと。でもこの茶色の北海だから世界遺産になった干潟があるんだねぇ。

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そして13時45分についにヴェーザー川自転車道の終着点のクックスハーフェン駅に到着した。今日の走行距離を入れてみるとカッセルをスタートしてから646.05kmを走っていた。やった〜,とカミさんと小躍りした。それもつかの間だった。

なんてことだ。構内の切符売り場の窓口は閉まっているではないか。そうか,今日は日曜日だったんだ。構内を見渡しても路線図なんてものは無い。どこで乗り換えてフランクフルトまで行けば良いのだ。心配そうな我々にお婆さんが声をかけてくれるが,彼女もフランクフルトまでの道程は知らないという。キオスクに入って鉄道地図を探すがそんな物は置いてない。地球の歩き方の路線図では簡単すぎて,これまた役に立たない。はてさてと思案しても仕方ないので,自販機の前に立った。おっ,英語のメニューがあるではないか。操作してみると,出発前に日本で操作したドイツ鉄道のホームページと同じページが表示された。そうか,そうか,これでまずは現在日時と出発駅と到着駅を入力して,詳細画面で大人2名,ローカル線のみ,自転車ありをチェックしてみたら時刻表が出てきた。それによるとクックスハーフェンからフランクフルトまで5回の乗り継ぎで行けることがわかった。しかし,フランクフルト到着は真夜中になってしまうので,手前の乗り換えのカッセルまでとすると10時過ぎに着けることが分かった。クックスハーフェンを15時39分発でブレーマーハーフェン,ブレーメン,ハノファー,ゲッティンゲンと4回乗り継げばカッセルには6時間34分かけて22時13分到着だ。料金は二人で€114だ。さて,次はバイク運送切符だ。これはフランクフルト中央駅でカッセルまでのバイク運送切符を駅員さんに出してもらった手順を覚えていたので,それらしきアイコンをタッチしてみたらビンゴ。見事に買うことが出来た。こちらは2台で€10だ。やれ,やれ,これでカッセルまで行けそうだが,今夜の宿はカッセルに着いたら考えよう。

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クックスハーフェンは終点駅だがホームは2本しかないこぢんまりとした駅だ。ホーム回りも工事中であった。定刻通りに到着した列車にバイクを乗せて一安心だ。あとは時刻表通りに運行してさえくれれば乗り換えも行けそうだ。

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定刻の16時23分発にブレーマーハーフェン・レーエ Bremerhaven-Lehe駅からの列車でブレーメン中央駅 Bremen Hbfに向かった。ここで気をつけたのはブレーマーハーフェン中央駅とブレーマーハーフェン・レーエ駅は違うと言うことだ。大きな都市には中央駅があるがその前後にちょっと別な名前(たとえば北とか南とか)を付けた似たような駅があるのだ。

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ブレーメン中央駅での乗り換えも上手く行き,ハノーファー中央駅 Hannover Hbfに定刻で到着した。ハノーファー中央駅では1時間ほど乗り継ぎ時間があったので,構内のカフェーで焼きソーセージを夕食代わりに食べた。ハノーファー中央駅からゲッティンゲンへの列車のバイク車両のラックはこれまでとは違ったものだった。ハノーファーからの列車で前に座った母と暇をもてあましていた2人の子どもにカミさんが折り紙で騙し船をつくって遊んであげた。自分は鶴を折ってあげた。上の女の子はお返しにノートのページでハートを折ってくれた。この旅で折り紙を持ってこなかったのが悔やまれる。

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ゲッティンゲン Göttingenからカッセルへの乗り換えもスムースに行った。このバイク車両ではバイクの固定方法はクルマのシートベルトと同じようなものだった。これで最後の列車となるのでカミさんも安心してメモを書く余裕がでてきた。あとはカッセルでの宿だ。

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カッセルにも時刻表通りに到着した。ドイツ鉄道の遅れは珍しくないと聞いていたので心配したが,良かった,良かった。12日前に降り立ったカッセルの街中に地球の歩き方に載っているHessenland Hotelを探しに出かけた。街はお祭りが終わろうとしている頃で,人通りが多かった。住所を頼りに通行人に尋ねるがHessenland Hotelは知らない人ばかり。市庁舎の近くにあるので市庁舎を聞いて行ってみた。が,その近くにホテルはない。ようやく住所を探し当てて尋ねたホテルはDays Inn Kasselだった。とにかく時間も遅いし,これで行こうと交渉してみると朝食無しで€75だというのでオーケーした。部屋に入ってテーブルのパンフレットを見ると,最近になってHessenland HotelはDays Inn ホテルチェーンの傘下に入って名前を変えたらしいことが分かった。備え付けられていたバスに湯を張って手足を伸ばしてヤレヤレひと安心した。今日も列車とホテルの手配で危ない橋を渡ったが,両方とも支障なく行けたのは天の采配か,これまでの教会巡りにお陰かと感謝した。もはや真夜中を迎える時刻になってベッドにはいった。明日からは旅の後半のロマンチック街道自転車道の旅が始まるのだ。

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