東京都で一番高い山である雲取山に,雲取山荘に一泊する行程で,カミさんと登った。。昨年の立山の雷鳥荘はホテルといっても良いくらいだったが,今回の雲取山荘は山小屋といった風情のようだ。山小屋に泊まっての山行は自分は初体験だ。常磐線の5時34分の一番電車に乗り,西武秩父駅からバスに乗り継いで三峰神社の駐車場に降り立ったのは10時半をまわっていた。予想どおりに雨が降ってきたので,雨着とスパッツを着けて6時間の山行にいざ出発だ。三峰神社に参拝していると1時間は余計にかかりそうなので,目的は雲取登山で神社参拝ではないと言い訳を考えながら,奥の院ともども省略した。
登山道は良く整備されていて,予想よりは楽である。雨の中を歩を稼いでいくが,カミさんはちょっと辛そうだ。自分は,雨のためにか,気分が集中できて無心に歩くことができた。やがて,昭和8年に秩父宮が訪れたという記念碑の前に出た。宮はここを霧藻ガ峰と呼ぶようにさせたそうだ。碑の脇の避難小屋でお昼を取ることにした。簀の子状の床の上に座ってザックを開けたら,ポロッとスティックのゴムキャップが転げ出て下に落ちてしまい,取ることができない。まあ,と諦めて持参したおにぎりを食べた。ところが,そのときにカミさんが片方の箸を落としてしまった。やれやれ夫婦揃って…。エネルギー補給を済ませて歩き始めたら,白岩避難小屋辺りで雨が上がってきた。彼方には雲海に漂う小島のように山並みが見えてきた。このまま天候が回復してくれれば良いが。
雲取山荘への最後の登りになる大ダワにとりつき,女坂を登りつめたところに今晩の宿になる雲取山荘が見えてきた。ここまでの11.5kmに5時間50分ほどかかった。まあ予定通りだろう。
雨の日曜日と言うこともあって,他のパーティーはキャンセルしたということで山荘は我々の貸し切りとなった。畳の部屋には豆炭の炬燵が用意されていた。まずはカミさんと健闘を讃えてビールで乾杯した。雨の山行であったが,けっこう汗をかいたとみえて何とも美味なビールが飲めた。屋外に出てみるとトイレと水場があった。トイレは,一昔前の列車のようにステンレス製の和式便器であった。山荘の人が言うことには,この山荘は埼玉県であるがトイレの管轄は東京都だということだ。山荘の夕食は5時半に出してくれた。ハンバーグとサラダのメニューであった。新鮮な野菜が出てきたことにちょっと驚いた。ヘリでの補給の他に,山荘へ勤める従業員(?)が担いでもくるそうだ。珍しくカミさんがきれいに平らげた。くちくになったお腹を抱えて外に出れば,明日の好天を思わせるような夕日だ。
よほど疲れたのだろう,カミさんは食後すぐに7時前には寝入ってしまった。自分はヘッドランプを点けてすこし文庫本を読んだが,やがて8時には眠ってしまった。翌朝は,カミさんに言わせれば,見事なご来光が拝めたそうだ。雲海の所々に奥多摩山塊の頂が見える。確かに,ここ雲取山は東京一の山であることが分かる。鮭,生卵,納豆などの旅館並みの朝飯を平らげて雲取山に向けて出発したのは6時を少し回った早朝であった。
山荘のすぐ上から,楽をしようと,巻き道のコースを選んだ。が,進めば進むほどに下っていく。GPSも山陰に入ってしまったのか衛星をロストしてしまう。回復したGPSの地図を見ても山頂への道はさらに先に進まないとなさそうだ。ようやく,三条の湯からの道に出くわした。ぐるっと迂回して雲取山頂を向かうことで時間もエネルギーも余計に使ってしまった。出がけにもっと良くガイドブックを読むべきであったと後悔しても始まらない。くたばり気味のカミさんに先行して山頂下の避難小屋まで登ると,早朝の好天は次第に曇りになってきていて,霧の切れ目に富士山が見え隠れしていた。荷物を置いてカミさんのところに戻り,ようやく二人して2017メートルの山頂に立つことが出来た。のんびりとコーヒーを淹れて,東京一の雲取山から日本一の富士山を眺めた。こんな時のコーヒーは本当に何物にも代え難い。お陰でカミさんの昨日の疲れも飛んでいったようだ。
予定では七ツ石山を経て鴨沢に降りるつもりだったが,10時半のバスに乗るにはちょっとせわしない。かといって次のバスまでには3時間以上もある。それで,山荘の人の意見で8時間の行程の石尾根縦走で直接に奥多摩駅に向かうことにした。山荘で昼食を用意してもらってあるので,エネルギー補給は大丈夫だ。小雲取山までの石尾根は,晴れていれば明るく開けた眺めの良い快適な尾根歩きだろうが,今日の下界はほとんど視界ゼロである。もちろんのこと七ツ石山もであった。しかし,そこからの尾根道には蕗やゼンマイが盛りを迎えていた。カミさんは今晩のおかず位にはと,あちこち歩き回りゼンマイを摘み始めた。自分も手伝って,今晩のおかずではないほどに採れた。
尾根道を歩いてもどうせ視界がないので,このあたりから巻き道に入った。が,狭い道には花を着けたササがしなだれかかり邪魔でしようがない。鷹ノ巣山にとりつく辺りで尾根道に出会った。山荘の人の話では鷹ノ巣山は巻き道が無いとのことであったので,エネルギー補給が先決とカミさんがここでお昼にしようという。木陰で雨をやり過ごしながら,持参したスープ,焼き鳥,煮豆をくわえて山荘の弁当を食べた。エネルギー補充も済ませてからだも暖まって,さてと立ち上がりすこしばかり進んだら,なんと,りっぱな鷹ノ巣避難小屋に出くわした。ここでお昼を食べればよかったのにね〜,とカミさんが言うが…。しかし,小屋の脇には六ツ石山への巻き道の案内板があるではないか。躊躇無く巻き道を進むことにした。普段でも陽が少ない巻き道にはギンリョソウが見つかった。雨の巻き道の暗い単調さに飽きて尾根道に出れば,馬酔木の花が盛りを迎えていた。ひたすらに奥多摩駅を目指して下っていくと,六ツ石山の麓からは急下降の岩だらけの道が始まった。カミさんも自分も膝や腰が疲れてきてこの下りは辛い。とは言え,膝がガクガクになりながらも歩を進めて行くしかない。すると林道をへて奥多摩駅への案内板があったので,コースを変更してそちらに進むことにした。ところが,歩けど歩けども林道には出会わない。ようやくコンクリートの林道にでてホッとしたのも束の間,ふたたび山の中へと指す案内板が出てきた。おそらく,林道のショートカットだろうと信じて進む。左足の親指にマメができたらしく痛み始めた頃に,待ちに待った家並みに出会った。ほうほうの体で奥多摩駅に着いたのは15時半をまわっていた。雲取山荘を出てから23.6㎞を9時間20分かけて歩き通したことになった。これまでのハイキングの最長不倒距離を記録した。一電車遅らせて,雨具をたたみ顔を洗って,お約束のビールだ。自分は青梅までの間にすっかり出来上がってしまった。
1日目の雲取山荘までは比較的快適なコースだったが,2日目の石尾根縦走は難儀した。雲取山から三条の湯にまわり,温泉で汗を流したほうが良かったかも知れない。ともあれ,中年夫婦としては良くも歩いたと自画自賛したい気分だ。
森を歩こうさん,いつもながらコメントありがとうございます。なにが駆り立てるんでしょうね〜。いったん登りはじめればクライマーズハイになります。自転車だとサイクリングハイでしょうか?
横浜からだと,三浦富士や鎌倉アルプスあたりが手頃(足頃か)だと思います。のんびり,のんびり奥様といかがですか? この歳で別の世界を覗くのもいいと思いますよ。
オーオー、またやってますね。うーん、今度は夫婦善哉ですね。奥様とのツーショット決まってますね。うらやましい限りです。
それにしても、なになに、23.6㎞を9時間20分・・・。高低差800メートル?。いやはや、ご夫婦そろってものすごい体力ですね。ウチなんか10分歩かせたら離婚ですから。
お二人の健脚に脱帽 m(_ _)m