角館と弘前の桜を見に行こうと4月29日〜5月1日を予定していた。が,この春の異常気象でどうもこの時期には北東北の桜は咲きそうもない。毎日,インターネットでチェックしてみても「つぼみ」情報ばかりである。それで,予定をキャンセルして5月5日〜7日の宿を当たってみたら予約が取れた。しかし,5月3日の夏日を記録するほどの暑さで,今度は満開を過ぎて散り始めになりそうな気配となった。つぼみよりは桜吹雪の方がなんぼかまし,と5日の早朝5時に車を出発させた。出発してすぐに道路情報が,磐越道では郡山の手前で車両火災があり下りは通行止めになっている,というので北関東道に入った。東北道から秋田道を走り昼前に大曲ICに降り立った。
角館に向かう途中の仙北市中仙の道の駅に立ち寄って昼食をとることにした。ドンパン節の発祥の地ということで館内のスピーカーが賑やかだ。名物いぶりがっこを摘んだら旨かったので買った。聞けば,まず大根を燻製してから糠に漬け込んで作るそうだ。自分たちはたくあん漬けを後から燻製にするとばかり思っていた。
外の川辺では,中仙桜祭りが開かれていた。ここはすでに満開の様子。角館に急がなくっちゃ。
角館の駅前の駐車場に車を置いた。1000円はちと高いぞ(後から分かったが,武家屋敷の近くでは500円だった)。秋田内陸線の駅舎は風情があるが,JRのほうはどうと言うことはない。駅前広場では角館高校の生徒有志が地元の踊りとお囃子で出迎えてくれて気分はぐ〜んと高まっていく。
武家屋敷への道の途中の山菜屋を覗いたり,名物のなると餅を買い食いしながら歩く。なると餅は四国の阿波の鳴門を意味し,もとは粟で作った餅だったものが,今では餅米でおはぎのようにしたものだ。粟と阿波を懸けてなると餅というそうな。
郵便局の角を曲がると早くも茶店の枝垂れ桜にであう。庭園に入り,屋内の資料蔵を抜けるとお土産物屋になっていた。
その先の武家屋敷の枝垂れ桜はまさに散り始めている。記念撮影用の昔の衣装をまとった稚児らも周りに溶け込んでいる。 小学校跡地のソメイヨシノも満開だ。
伝承工芸館の辺りの枝垂れ桜はひときわ綺麗に咲き誇っている。人力車もこの武家屋敷通りには違和感がない。青柳家の枝垂れ桜はちょっと寂しいね。
武家屋敷通りから桧木内川に出ると,こちらはソメイヨシのトンネルが2キロに渡って続いていた。なんとも見事な眺めだ。
駅の駐車場に戻る途中で田町武家屋敷通りに入り込むと,解体新書の碑に出会った。杉田玄白らによる解剖学テキストの挿絵を描いたのがここ角館出身の小田野直武だ。彼の墓は松庵寺にあるというので立ち寄ってみたら石碑が建っていた。その前に立ってみて,定年退職してアカデミックライフとはまったく縁を絶ったこともあり,もはや解体新書の挿絵画家の彼にも興味は薄れている自分を見いだした。
宿の到着予定時間が迫ってきたのでクルマに戻り,20分ほど走らせて角館温泉の花葉館に行った。チェックインする時にフロントにあった夜桜見物バスの案内に目が行った。渡りに船とばかりに予約して,急いで風呂と夕食を済ませた。夕食はきりたんぽ鍋をメインとするけっこう立派な物であった。のんびりする暇もなくちょっとほろ酔い気分で夜桜見物バスで再び武家屋敷と桧木内川を訪れた。
昼間の喧噪は静まって,光量を落としたバックライトに浮き上がる桜はしっとりと落ち着いて幻想的ですらあった。600キロ余りを走ってきた甲斐があったね,とカミさんと語り合った。