三連休の天気予報と紅葉情報を睨み合わせて,日光の男体山へのハイキングを実行した。1200年前に勝道上人が開山した山岳信仰の山だから,ハイキングではなく登拝と言わなければならないか。5時前に自宅を出ていろは坂をスイスイと走り,中禅寺湖畔の日光二荒山神社中宮祠に到着したのは7時半だった。
唐門から見上げれば,ご神体の男体山が青空にくっきりとそびえている。社務所で登拝の受付をして500円の入山料を払ってお守りを頂いた。登拝門をくぐり,ここからおよそ3時間の直登をしなければならない。これはまさに修行となりそうだ。
石段を登っていくと一合目の遙拝所に着いた。ここからは樹林の中の登山道を進む。
三合目からは迂回する工事車両用の舗装路に入る。ほぼ平坦な道となり,ホッとしながら進む。
やがて舗装路は四合目の登山道に出会う。眼下には中禅寺湖が青々とした水をたたえている。鳥居をくぐり再び直登が始まった。
ここら辺りは紅葉が始まっている。しかしこの夏の猛暑が影響してか,紅葉の盛りは例年よりも一週間から十日は遅いかもしれない。
五合目から紅葉を透かして見る眺めも素晴らしい。眼を凝らせば,遙か彼方には富士山が浮かんでいる。
六合目あたりから岩のゴロゴロした歩きにくい登山道になった。カミさんがシャリバテ気味になったので,一服してお握りをほおばる。立ち上がってみる中禅寺湖はキラキラと輝いている。登るにつれてダイナミックに変わる景色に疲れも少しは癒される。
いよいよ険しくなる七合目をクリヤーして八合目の社殿についた。このように目標があると辛い直登ではあるが,頑張ろうという気になる。
八合目からは岩が無くなり土の登山道となった。ここら辺りは流水で土が流されて荒れている。せっかく積んだ土嚢も破れてしまっている。
九合目を過ぎると辺りは明るく開けてきた。しかし,登山道はザレ場で滑りやすくなってきた。
下界の景色は戦場ヶ原とその向こうに日光白根山や金精峠に変わった。と,みるみる雲がわき上がってきて湯ノ湖が見えなくなっていく。中禅寺湖はもう雲にすっかり隠れて見えなくなっている。
ようやく頂上が見えてきた。登り始めて3時間15分で到達した頂上は久しぶりに見る大賑わいであった。山親父,山姥ばかりでなくスカートにスポーツタイツの山ガールも目立つ。まずは奥宮で無事に登山できたことにお礼をする。南の中禅寺湖方面は厚い雲に覆われているので,晴れている北の山々を方角石碑で調べてみる。
女峰山は雲に隠れて見えないが,大真名子山から太郎山そして奥日光の山々がくっきりと見える。太郎山の下の方は紅葉が始まっているようだ。
山々の同定はそこまでにして昼食を取ることにした。今日のメニューは混ぜご飯のお握りにマルタイ棒ラーメンである。疲れたからだに辣油の効いたつゆのラーメンは旨い。
食後に爽やかに晴れわたった頂上を散歩(?)した。後ろの太郎山をご神体にした太郎山神社をみて,二荒山神社奥宮の後ろの一等三角点をタッチしに行った。
山頂で一時間あまりのんびりした後は登山路とおなじコースを下山した。ガイドブックは志津乗越から裏男体を下るコースを紹介している。三本松に降りるこのコースのために三本松バス停に自転車をデポすることも考えた。しかし,クルマの走る林道を長く歩くことになるこのコースは面白くなさそうなので止めにしたのだ。
ザレ場,岩場をおっかなびっくりで下っていきながら,テレビで紹介されていたヒカリゴケを探そうと岩陰を覗いていく。と,八合目を過ぎてすぐの岩陰でヒカリゴケにお目にかかれた。苗場山ではカミさんが見つけたが,男体山では自分が見つけた。いずれもテレビでの紹介でこれを知らなければ通り過ぎてしまうところだ。
四合目あたりで,登りでは気がつかなかった,真っ赤に紅葉した木々に出会えた。この頃,膝はガクガクするのを通り越して痛み始めていた。
二荒山神社中宮祠に降り立ったのは3時を回った時刻だった。出発時に望めた頂上は,降りてきた頃には見えなくなっていた。
帰りのいろは坂はちょっと混んでいた。これが来週にはどうなることやら。お約束の温泉は清滝のやしおの湯だ。さっぱりと汗を流して,大腿四頭筋と腓腹筋をセルフマッサージした。東北道,常磐道では事故渋滞に遭遇したが,途中で下道を走って家路に着いた。
GPSのログを見ると,まさに直登,直降のコースであることが分かる。カミさんは「二度と来たくない山」と言う。登ってみて面白くない百名山の一つかもしれないが,頂上からの眺めと下からの眺めは絶景である百名山かもしれない。歩いた距離は10.4km,掛かった時間は7時間27分であった。