福島県泉崎村での自転車トラック記録会を中退して山形県の置賜(おきたま)さくら回廊に回った。泉崎村はポカポカ陽気で,桜の開花状態は昼頃には7,8分咲きの様相だった。数日前の置賜さくら回廊の開花状況をインターネット上で見ると「つぼみ」だったから,この分では今日あたりは咲いている頃だろうと予想して出かけた。
東北道を福島で降りて米沢を目指した。トンネルを抜けるて米沢に入ると周りはまだまだ雪が残っている。カミさんと「この雪で桜は咲いているかねぇ」と不安を覗かせ合う。米沢から南陽市に入った。ここの赤湯温泉の烏帽子山公園を起点にして長井市,白鷹町の桜を巡ることになっている。当初の予定では自転車を持参して置賜さくら回廊をツーリングする予定であったが,天気予報では雨模様ということなのでクルマで回ることにしていた。
投宿する前に烏帽子山公園千本桜を見てみようと駐車場に回った。が,あたりには桜花は全く見当たらないではないか。枝は蕾,蕾,蕾である。
駐車場の整理をするオバさんの話では「山形の桜は20日過ぎじゃないとダメ」とのことであった。昨日,今日のポカポカ陽気をもってしても,さらに,樹上の花咲か爺さんの灰をもってしてもダメなようだ。
仕方ないので辺りを歩いてみた。園内には八幡神社があった。その鳥居は継ぎ目なしの石造りでは日本最大とのことだ。鳥居の彼方に霞む山々は朝日連峰だろうか。やはり,この雪の状態では桜はまだまだだった。途中での不安が的中してしまった。
時間つぶしに,少し戻って,隣町にある高畠ワイナリーを見学することにした。何種類かのワインの試飲コーナーがあったが,運転手の自分はパスしてカミさんにお土産のワインの選定を任せた。自分はさくらんぼジェラートで我慢することにした。
宿は大正時代を思わせるレトロ基調の丹波館だ。なんと烏帽子山公園の大鳥居の直下にある。まずは,自転車トラックレースで疲れたからだを温泉で癒した。
今朝は4時起きで家を出て,その上に自転車レースと車の運転という重労働だ。そして夏日にもならんとする気温と窓を開けて走れないくらいの強風ゆえに,やむなく車のエアコンを入れて走るはめになった。疲れに輪をかけて肩凝り,鼻水症状の自律神経失調症が加わり,クタクタの体調になっていた。で,夕食の乾杯は生ビール一杯で止めておいた。しかし,これでもかというほどの料理を完食して動けぬほどの満腹状態になってしまった。強肴のカサゴ(九州ではアラカブと言っていた)の唐揚げは絶品だった。
翌朝,再び烏帽子山公園を散策する。大鳥居の下にようやくのことに一輪の桜花を見つけることができた。
朝食のご飯は,流石の米どころ,実にうまかった。思わずお代わりをいただいた。
置賜さくら回廊のこの先では桜は望めないと判断して,福島に戻り,会津若松の鶴ヶ城の桜を見ることに決めた。
快適極まりないR121ひた走り,途中の道の駅に立ち寄った。ここもあたりも雪だらけだ。またも不安が頭をかすめるが,昨日の泉崎の開花状態だからいけるだろうと希望的観測を抱いて喜多方市に向かった。
道の駅で情報を得て見ると,喜多方市の枝垂れ桜並木も全くの蕾状態とのことだ。ウ〜〜ムムム,ここも通過せざるを得ない。この道の駅の脇には磐梯熱海・会津若松を結ぶ自転車道が設けられていた。だが,まだ完成してはいないようだ。いつかは置賜さくら回廊とともに喜多方市の枝垂れ桜並木を自転車で回ろうとカミさんと話す。
会津若松の鶴ヶ城の桜は,咲いてはいたものの3分咲きと言ったところか。もはや天守に登る元気も失せてしまった。しかし,気を取り直した二人は,泉崎のレースで友人に勧められたトレンディーな,七日町通りを散策することにした。城からは25分のところというので歩きで往復することにした。
途中には野口英世青春通りというレンガ通りがあった。きっと彼はここで散財して遊び惚けたに違いない。
途中で地元のおばさんに七日町通りへの道を尋ねると「この通りがそうだ。なぁ〜んにもないよ」とのことだった。地元の人にはそうかもしれないが,地図を片手に歩く観光客もちらほら見えた。確かに昭和の面影を残す佇まいの通りだ。絵ろうそくの店もあるがカミさんはそれほどの興味もないという。しかし,ガイドさんが手渡してくれた地図を見ると「この店に行ってみたい」と言う。桐屋紙器という店だ。
この店は会津木綿を使った網代編みのバッグで有名な店という。昨年の暮れにNHK BSのイッピンという番組でここが紹介された。カミさんはここ数週間,そのVTRを見ながら網代編みバッグの制作に熱中している。しかし,最後のまとめが,何度もVTRを見てもわからなくて未だ完成に至ってない。
店内に入ると件の製作者が作業中だった。カミさんがBS放送のこと,自分が製作中のバッグの後始末のことなどを話すと,親切丁寧にノウハウを教えてくれた。さらに,喪服をほどいて作るフォーマルな紋付のバックのヒントまで教えてくれた。大喜びのカミさんであった。自分もカミさんと何度がVTRを見ていたが,その当人と出会って話ができたとは驚きであった。
桜は叶わなかったが,カミさんの念願のバッグの後始末の方法が叶えられた。
お城に戻って家路につくことにした。お堀の桜が心残りだ。
帰りのナビはR118を行って白河ICから東北道には入れと言う。じゃぁ,そうして見るかと走って見るとこれも実に快適な下道であった。東北道に入ると,今度は矢板ICで降りろと言う。その通りにして,十数年前までは良く利用した抜け道を帰った。途中の真岡ではR408のバイパスができていて高速走行が体験できた。暗くなってから,果たして雨となった。この雨で山形の桜はまた開花が遅れるのだろうか。
お楽しみは来年かな?