12月 152009
 

新聞の経済欄でPHVという文字に出会った。記事を読んでみれば,Plug-in Hybrid Vehicle プラグインハイブリッド車の事らしい。Wikipediaで調べても,直接充電できるハイブリッドカー,と出る。因みに外国語の辞書を引いてみると,pro hac vice,と出てきた。ラテン語で「今回限り」という意味とのこと。化石燃料を使わない電気自動車の一歩手前のプラグインハイブリッド車と同じ略称としては言い得て妙である。

ところが,自分が関係する自然人類学,人間生物学の成長(発育)の領域では,Peak Height Velocity 最大身長成長速度を表す。どこかのエラ〜イ,成長の研究者は「体重のPHV」なんてタイトルの論文を発表していたゾ(笑)。

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上の図は個人ごとの身長を一年ごとに連続して2年記録した数値を引き算して年間増加量(つまり身長成長速度)を求め,さらに各年齢で数百人の年間増加量の平均的な値を求めて,なめらかな曲線をあてはめものだ。これで見ると,女子は11歳のときに7cm/年,男子は12.7歳のときに8cm/年の成長速度であることがわかる。この成長速度をPHVと言い,そのタイミングをPHV年齢と呼んでいる。

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上の図は,ある個人の小学校入学から高校卒業までの身長の成長をBTT成長曲線(三連ロジスティック曲線)という身長成長関数をあてはめて見たものだ。下方の曲線が成長速度曲線を表している。この男児の13.9歳で9.2cm/年のPHVを示した。男女それぞれ200人ほどのBTT成長曲線を解析してみたら,女子の平均PHVは10.0cm/年,男子の平均PHVは11.0cm/年で,そのタイミングはそれぞれ11.0歳,12.7歳であった。成長資料の集め方,分析の仕方が違うと数字も違ってきてしまう。もちろん,個人の全成長期(2年間ではなくて,12年間のデータ)を解析した方がより真の成長を表していることになるのだが。

このPHVの大きさ,タイミングと成人身長の間には関係がないことも分かっている。つまり,早くに(若い年齢で,つまり早熟)身長成長のスパートを迎えても,そのときの一年間にどれほど大きく伸びたとしても,最終的には大きな背丈の大人にはならないということだ。では,大きな背丈になる子どもはというと,スパートが始まる頃(女子で平均8.5歳,男子で平均10.0歳)や,スパートの真っ最中(PHV年齢の時)に大きな背丈だった子どもが大きな大人になっていることが分かっている。

大きな子どもはどうしたらつくれるのか(?)というと,バスケットボールをやっても効果はなさそうだし,牛乳をガブ飲みしても効果のほどはクエスチョンだし…。はっきり言えるのは,両親が大きな背丈ならば子どもの背丈も大きくなる,ということだ。ただし,これまでの話は集団での話(つまり平均的な子どもの話)だから,当てはまらない個人も当然でてくる。

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